映画「薄氷の殺人」  監督 :ディアオ・イーナン  2014年 中国映画

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  クリーニング店の女と、元刑事の男との、サスペンスをはらんだミステリアスなラブストーリー。

組1-0  店の女・ウー(グイ・ルンメイ)は、見るからに はかなげで孤独な印象の女。
  そして、謎の女。この女に近寄り過ぎた男が相次いで殺される事件が起きた。それも、猟奇じみたバラバラ殺人だ。

  この話を元刑事のジャン( リャオ・ファン)は、かつての同僚刑事から聞いた。そしてジャンは、自分が5年前に担当した、バラバラ殺人事件と類似点があまりに多いのに驚いた。興味を持った。そして、その女・ウーに近づく。
  客を装ってクリーニング店に出向いたジャンに、ウーは言う。私に近づかないで。さらには、女への興味を強めていくジャンに同僚刑事から、事件に深入りするなと言われる。

  ジャンは思い切ってウーをスケートに誘った。意外にも彼女は断らなかった。この女、どういう気なのか?ジャンは強引にキスをした。この夜から、ふたりの関係が始まる。深まって行く。そのうちウーは、ジャンが元刑事であることを知る。

  そんなふたりを遠くから見つめる男が2人いた。そのひとりは、ジャンの同僚刑事。だが、この刑事が惨殺された。刑事が残したメモを頼りに、ジャンは犯人を捜し始める。

組2-0  一方、もうひとりの男は依然としてジャンの前に姿を現さなかった。
  だが、ジャンは執拗な追跡を続け、この男を見つけ出し、5年前の猟奇殺人と同一犯だと特定した。同時に、ウーの隠された過去をも知るに至る。それをウーに話すジャン。凛として口を閉ざすウー。
  ついにその夜、犯人を追跡する警察捜査陣の前に、男はウーと並んで現れたのであった。そして・・・。

  サスペンスの仕掛けは複雑ではないが、語り口の展開が凝っているので、入り組んだ話にみえるかもしれない。
  また、「薄氷の殺人」を、例えば2013年のジャ・ジャンクーの「罪の手ざわり」と似た感触の映画と感じる向きもあるかと思う。拳銃の発射音など効果音の低域を誇張し、今風な音作りになっていたり。また、どちらの映画も、物語の背景が荒涼としている、登場人物が押し黙っているといったように共通点が多い。
  大きな違いは、ジャ・ジャンクーは現代中国が抱える矛盾をあぶり出していることだ。だからといって、「薄氷の殺人」が良くない作品と言うつもりはない。どっしりとした重量感を感じさせながらも、楽しめる、しっかりしたエンターテイメント作品になっている。ただし、中国映画のハリウッド風を期待する向きには、そぐわないだろう。

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オリジナル・タイトル:白日焰火|
英語タイトル:Black Coal, Thin Ice|
監督・脚本:ディアオ・イーナン|中国、香港|2014年|106分|
撮影:トン・ジンソン|
出演:元刑事のジャン( リャオ・ファン)|クリーニング店の店員で謎の女・ウー(グイ・ルンメイ)|ウーの元夫・リアン(ワン・シュエピン)|クリーニング店の店主・ロン・ロン(ワン・ジンチュン)|

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やまなか
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