コンサート 「モンセラートの朱い本 中世スペインの巡礼者たちの音楽」 指揮:濱田芳通、演奏:アントネッロ、合唱:ラ・ヴォーチェ・オルフィカ
2015年02月14日 公開

「モンセラートの朱い本」とは、スペイン、バルセロナ郊外にあるモンセラート修道院に伝わる14世紀の写本。
コンサートは、この本にある作者不詳の歌をもとに、濱田芳通が編曲、指揮し演奏された。
歌は、三人のソリストと、古楽を専門に歌う声楽アンサンブルの「ラ・ヴォーチェ・オルフィカ」。演奏は、古楽アンサンブル「アントネッロ」。
当時、モンセラート修道院には各地から多くの巡礼者が訪れていた。
長い旅を終えやっとたどり着いた巡礼者たちは、聖堂周辺にたむろし、その場にふさわしくない世俗的な歌を歌い踊って楽しんでいた。その歌は、各地のダンサブルな民謡だったろう。こんな世俗的な歌や踊りで聖地を汚されることを嫌った修道院は、聖地にふさわしい歌(聖歌)を作り巡礼者に与えた。これが「モンセラートの朱い本」にある歌だ。この歌で巡礼者は、聖堂周辺でも気兼ねなく歌を歌い踊ることができたということらしい。
とはいえ、修道院が作り与えた歌はエキゾチック。巡礼者たちの各地の民謡の要素が濃厚だ。一言で言えば、アラビック!!
これが抜群にいい。 一方、民族音楽に馴染みのない、いわゆるクラシックファンの耳には、例えばリコーダーの音色や旋律がアンデスのフォルクローレ風に聴こえたかもしれない。
特筆すべきは、濱元智行のパーカッション(タンバリン)。
タンバリンひとつで、複数の打楽器を演奏しているように聴こえるアラビックパーカッションだ。自然に身体が動きだす。
東京カテドラル聖マリア大聖堂で、グレゴリオ聖歌のような聖歌が聴けるとイメージして来た向きには、違和感が大きかったかもしれない。
続いて、音楽監督、指揮、編曲をした濱田芳通のリコーダーやコルネットは、このコンサートの主役。タンバリンがそそのかす躍動感に乗って、速いそのパッセージは、まるでジャズのアドリブのようにファンキー。
ソリストの中では、ソプラノの澤村翔子が端正で美しい。また、古楽アンサンブル「アントネッロ」では、 中世ハープ&オルガネット(西山まりえ )、ショーム&リコーダー(古橋潤一 )が印象に残る。
昨年、西山まりえのハープ独奏を東京オペラシティ・近江楽堂で聴いていた。掲載記事はこちらからどうぞ。
同じく、古橋潤一のリコーダー演奏は、渋谷区文化総合センター大和田 さくらホールで聴いていた。掲載記事はこちらからどうぞ。ともに、素晴らしかった。
「モンセラートの朱い本」のCD化を望む。
音楽監督、指揮、編曲:濱田芳通
ソプラノ:澤村翔子、アルト&リコーダー:細岡ゆき、テノール:中嶋克彦
合唱:ラ・ヴォーチェ・オルフィカ
古楽アンサンブル:アントネッロ
リコーダー&コルネット(濱田芳通)|中世フィーデル(石川かおり )|中世ハープ&オルガネット(西山まりえ )|パーカッション(濱元智行)|ショーム&リコーダー(古橋潤一 )|スライド・トランペット(宮下宣子)|プサルテリー(矢野 薫)|

モンセラートの朱い本 Llibre vermell de Montserrat
1. おお、輝かしい乙女よⅠ (アンティフォナ)
2. 輝く星 (カンティレーナ)
3. 称えましょう乙女を (カノン)
4. (器楽) ラ・マンフレディーナ (イスタンピッタ)
5. 7つの歓びを (バラーダ)
6. 天空の女王 (ヴィルレー)
7. 悦びの都の后よⅠ (モテット)
8. 声を合わせて歌おう (ヴィルレー)
9. おお、輝かしい乙女よⅡ (アンティフォナ カノン)
10. 王笏を持ち輝ける女王よ (カノン)
11. (器楽) 3つの泉 (イスタンピッタ)
12. 乙女にして母なるマリアさまを (ヴィルレー)
13. (器楽) ギョーム・ド・マショー:忠誠 (レー) ★
14. 悦びの都の后よⅡ (モテット)
15.死に近づく者たちは (ヴィルレー)
16. おお、輝かしい乙女よ (アンティフォナ)
演奏会場:東京カテドラル聖マリア大聖堂

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