映画「OPEN HOUSE (オープンハウス)」 監督:行定勲
2015年02月20日 公開


一人住まいの女がふたり。
夢に向かってここまで来たけれど未だ夢に届かない女と、
愛する夫を目の前にしながらも いつしかその愛を見失ってしまった女、この二つの話。
それぞれに、この先を逡巡している。諦めと、いささかの苛立ちが混じる。
ミツワ(椎名英姫)はモデルをしているが、一向に芽が出ない様子。
ユイコ(南果歩)は離婚して間もない女。

通りがかりの男・トモノリ(川岡大次郎)が、泥酔していたミツワを家まで送って、彼はそのまま一泊した。
何もなく朝になる。昨夜、男は泊まるところさえなかった。
トモノリは、現実を避ける存在感のない空気のような男。だからか、いつの間にか、なんとなく野良猫みたいに居つき始める。
関係は、今もって何もない。ミツワは、自身のいらだちを彼にぶつける時もある。
突然ユイコの前に、別れた夫の知り合いが現れる。
ミヤケ(村田雄浩)は、執拗に彼女に付きまとい始める。彼は以前からユイコが好きだったと言う。ストーカーだ。
そして、ミツワの前にもう一人の男が現れ、ユイコの前に女が現れる。
ミツワのそれは、かつて父親を裏切った部下であった。ある雑誌の専属モデルにしてくれると言う。 ユイコのそれは、元夫がいま付き合っている愛人であった。
抑制されたドラマ。ラストも控えめなハッピーエンドか。監督の若きころの感性が味わえる。
地味な話なので、受けは良くないだろう。出来はイマイチだが、こういう映画を大切にしておきたい。
収益第一に考える映画は、受け第一に作るから、誰でも分かる分かりやすさ、楽しさを第一に考える。そんな映画ばかりじゃ、売るも作るも観るもみんなして飛行高度を下げていく。下がった高度が普通と思うと、受け第一主義は安易に加速する。その渦中で観る者の観る力は育ちようもなく萎えていく。萎えていくと、売れやすい作りやすい。高度を下げゆくスパイラル。

原作:辻仁成|脚本:行定勲、白川多喜子、樽谷春緒|撮影:篠田昇|
出演:ミツワ(椎名英姫)|ユイコ(南果歩)|トモノリ(川岡大次郎)|ミヤケ(村田雄浩)|マキ(川越美和)|ユイコの母親トキコ(加藤登紀子)|ミツワの父親の元部下(小木茂光)|

行定勲 監督の映画
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