映画 「やわらかい生活」  監督:廣木隆一  主演:寺島しのぶ

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なんと言っても、寺島しのぶ がいい。
  
橘優子(寺島しのぶ)は、上京し大学を出て大手企業に勤めていたらしいが、実家の両親が火事で亡くなるという不幸に見舞われる。その結果、彼女は双極性障害(躁うつ病)になり会社を辞めた。父母の身元確認は辛かったろう。
そして、精神科への入退院を繰り返すこの6年間のうちに、それまで築き上げてきたはずの世間との絆が、すべて切れてしまった。

組1-029歳からの空白の6年。今も、精神科の薬を手離せない。
映画は35歳になった優子の、ここからを描いている。
それは、今までに経験したことのない、偶発的で刹那的、ゆるやかな人間関係であった。
人恋しさと、少しの冒険と懐かしさが、優子の背中を柔らかに押すからか・・・、彼女はそういう関係性に身を委ねた。そうすることで気持ちが安らいだ。自分の気持ちに正直でいられることが新鮮でもあった。

中4人の男たちとの出会いが、抜け殻の優子を少しずつ元の優子、否、本来の彼女に戻していく。
そのうちのひとり。優子は、出会い系サイトで知り合った痴漢が趣味の男(田口トモロヲ)と、場末の映画館の暗闇で触られることに安らぎを見出していた。

次の出会い。ある日、駅前で呼び止められた。その男は街頭演説していた。彼は優子と大学の同期で議員になった本間(松岡俊介)であった。飲み屋で過ぎ去りし学生時代を語り合ったのち、自分の部屋に誘った。
精神疾患系サイトを辿っていて優子のブログに行き着いた蒲田のヤクザ(妻夫木聡)は、ヤクザというには繊細で優しい男であった。とりとめもない彼の独り言のような話を聞いてやった。
実家のある福岡の田舎から来た、いとこの橘祥一(豊川悦司)。
愛人に逃げられ、その後を追って上京し、突然、優子の部屋に転がり込んできた。

昔、一度だけ関係を持ったことがある、いとこ同士の少し危ない関係が、始まるようで始まらない。居候となった祥一は、精神不安定な優子を甲斐甲斐しく世話した。女に対するマメさを、優子は垣間見る。
こうした4人との出会いはどれも、互いにこころの中にぽっかり空いた穴を埋め合う関係であった。そして、ゆるい関係は、時と共にほどけて行く。

そんな様子を映画はていねいに語って行くが、残念なことに、ラストで語り口が崩れてしまう。ラストだけが、まるで中学生に脚本を書かせたような。なんでだろう? 荒井晴彦の脚本とは、到底思えない。
脚本:荒井晴彦に監督:廣木隆一のペアでは、染谷将太が主演の 「さよなら歌舞伎町」 が良い。
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優子の住む部屋は、銭湯の2階。 屋上の空は広い。
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監督:廣木隆一|2005年|126分|
原作:絲山秋子|脚本:荒井晴彦|撮影:鈴木一博|
出演:橘優子(寺島しのぶ)|優子のいとこ・橘祥一(豊川悦司)|優子の大学同期で転職して議員になった本間(松岡俊介)|出会い系サイトで知り合った痴漢が趣味の男(田口トモロヲ)|精神疾患系サイトを辿っていて優子のブログに行き着いた街のヤクザ(妻夫木聡)|優子の大学同期・バッハ(大森南朋)|優子の叔父・橘昭夫(柄本明)|

こちらで廣木監督の作品をまとめています。
ぜひご覧ください。
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