映画「ヴィクとフロ、熊に会う」(カナダ2013)  監督:ドゥニ・コテ

上2         
組1-0

  カナダのフランス語圏にある森が、映画の舞台です。
  主人公のヴィクトリアは、終身刑の女61歳。 
  その彼女は仮釈放になったその日、森の外れの一軒家を訪れた。そこは父親がひとり住む家だった。
  カナダでは、終身刑の人が仮釈放可能になるまで最短で25年かかるのだそうだ。だからヴィクトリアは、36歳より以前に服役したんだろう。はるか遠い昔だ。
  父親は、意思疎通がまったくできない寝たきり状態になっていた。そして、この父親の介護に努めるというのが、仮釈放の条件でもあった。そんなことで、彼女は父親の介護を始めた。
  もちろん、ヴィクトリアの仮釈放は保護観察付である。保護司のギョームという若い男が定期的に家を訪れる。

組2-0  そこへまもなく、フロレンスという40歳過ぎの女がこの家に来た。
  ヴィクトリアとフロレンスは刑務所で知り合った仲。フロレンスは先に出所していたのだ。久しぶりに愛し合った一夜だった。そして実は、フロレンスがこの家に来たもうひとつのわけは、誰かに追われて身を隠すためであった。それはヴィクトリアの知らぬところだった。この日から、ふたりっきりの生活が始まる。

  というのは、服役中のヴィクトリアに代わって、これまで父親の介護をしてくれていた近隣の父子が、見るに見かねてヴィクトリアの父親を引き取ったのだ。この父子は、静かなこの地に現れた不埒な女たちに、冷たい視線を投げかける。
組3-0  そもそも、父親の介護が仮釈放の条件であったはず。また監察下の受刑者は犯罪者との接触は禁じられている。保護司のギョームはフロレンスの過去を知っていたにもかかわらず、この状態を黙認しヴィクトリアの仮釈放を取り下げず許した。

  ともあれ、人付き合いの嫌いなヴィクトリアは、愛しいフロレンスとふたりだけの日々を楽しんでいた。  
  そんなある日、見知らぬ女がヴィクトリアの前に現れた。実はそれは怨みを晴らすべくフロレンスを追いかけていた女であった。女は連れの男とフロレンスを森の中でリンチした。フロレンスとの愛のもつれなのか。
  そして、しばらく経ってさらに、その日が来た。
  森を散策していたフロレンスとヴィクトリアは、熊の罠に足をとられ倒れ込む。金属製のギザギザの歯型が付いた強力な罠だ。苦痛に耐えきれぬふたり。そこへ、例の女が現れる。ヴィクトリアに「あんたには怨みはないけどね」と言い、女はその場を立ち去った。

  森に大勢の警察が来ている。ふたりの遺体が運ばれていく。現場検証が始まった。
  村人が数人その様子をうかがっている。ヴィクトリアの父親の介護をしていた父子もその中にいる。
  そんな彼らの脇を通って、フロレンスとヴィクトリアの霊魂が並んで静かに歩き去って行くのが見えた。

組4-1  話の展開はこのように至ってシンプルだ。   
  筋を楽しむよりも、話の過程のあれこれが、この映画の味わうところだろう。  
  要すれば、異なるものへの嫌悪と寛容。受刑者に対する冷たい視線、介護しないだろうという先入観、同性愛に対する反感、物言わぬ植物状態の人間の存在、損得なしに他人の親を介護するこころ、保護司ギョームの同性愛に対する寛容と当事者意識。それらを包み込むカナダの森。
  ちなみに同性愛だけを注視して観てもいいが、この映画を美味しく味わう方法ではないだろう。

  それにしても、実はこの映画の一番の魅力は、観て感じるその感触だ。
  つまり粗暴で直截的な感触が光る。
  一夜一話の中から、同類の感触の映画を拾い上げてみると・・・・・・・
  レズのカップルのイギリス犯罪映画 「バタフライ・キス」 が一番近い感触を持っている。
  また、オーストリア映画の「パラダイス 愛」の直截的な独特の感触もこれに近い。
  ドキュメンタリー映画にも表現の味がある。ワン・ビン監督の「石炭、金」に通底するものがある。
  「バタフライ・キス」の記事は、こちらからお読みください。「パラダイス 愛」 は、こちらから。「石炭、金」 は、こちら
  
下1 上








オリジナル・タイトル:Vic + Flo ont vu un ours|
英語タイトル:VIC+FLO saw a bear|
監督・脚本:ドゥニ・コテ|カナダ|2013年|95分|
撮影:イアン・ラガルド|
出演:ヴィクトリア(ピエレット・ロビテーユ)|フロレンス(ロマーヌ・ボーランジェ)|ほか

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