「色で読む中世ヨーロッパ」 「二つの戦後・ドイツと日本」 「戦後の「タブー」を清算するドイツ」 ・・・最近読んだ本。
2015年03月28日 公開

最近読んだ本から、三冊ピックアップしてみました。

◆ 色で読む中世ヨーロッパ (講談社選書メチエ) 徳井 淑子(著)
12世紀から15世紀ごろの、中世ヨーロッパの人々のこころを知ることができる本。
色彩に関する関心は12世紀になって一挙に強まったらしい。白、黒、赤、青、緑、黄。それぞれの色に意味と思いを込めた。
映画「マスク」のマスクがなぜ緑なのかも、理解できる。また、ユダヤ人のしるしとして、なぜ黄色を選んだかも分かる。この本を読んだのちに、美術館に行くと見る目が変わるかもしれない。その色を選んだ画家の意図が理解できるので、作品解釈の幅が広がるだろう。
第6章の子供と芸人に関する記述もおもしろい。
<目 次> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
序1章 色彩文明の中世 第5章 忌み嫌われた黄
第1章 中世の色彩体系 第6章 子どもと芸人のミ・パルティと縞
第2章 権威と護符の赤 第7章 紋章とミ・パルティの政治性
第3章 王から庶民までの青 第8章 色の価値の転換
第4章 自然感情と緑 終1章 中世人の心性

◆ 二つの戦後・ドイツと日本 (NHKブックス) 大嶽 秀夫(著)
戦争が終わるまでのことは、終戦記念日だけに限らずよく語られ耳にするが、その後のことについては、あまり語られない。歴史に関心があることと、現代の政治に関心があることの、不連続、切れ目、断層なのか。
ナチスドイツにいての終戦時の国際環境をまず知る。および連合軍のドイツと日本に対する占領政策は違ったことを、次に知る。加えて、ヨーロッパと東アジアにおいての東西冷戦の構造の違いを知る。これらの状況のなか、吉田茂、西ドイツ初代首相のアデナウアーふたりが持つ政治思想およびその政策と対応の違いを知る。そして、「戦後のドイツ」の安全保障と再軍備とその道筋を知る。
まずは、こういうことをしっかり頭に入れておきたい。
210ページほどの本だが、一回読んだだけでは全部を理解できないほどに、その内容は多い。
だからこそ、しっかり頭に入れておきたい。議論や政治信条の選択は、それからでも遅くはない。一足飛びはいけない。
<目 次> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
第1章 ドイツの降伏と占領 第5章 冷戦と日独の経済復興
第2章 日本の降伏と占領 第6章 ドイツの講和と安全保障
第3章 占領改革の日独比較 第7章 日本の講和と安全保障
第4章 二つの憲法・二つの政治思想 終1章 世界の中のドイツと日本

◆ 戦後の「タブー」を清算するドイツ 三好 範英(著) 亜紀書房
上記の「二つの戦後・ドイツと日本」で基本を押さえたつもりだが、その内容は1960年までの経緯だ。だから、その後の「戦後のドイツ」が分からない。分かる本がなかなか見当たらない。やっと見つけたこの本。著者は読売新聞の記者で中道右派な方。セカンドオピニオンのつもりで読んだ。だが、東西ドイツの各方面の人々への取材からなる、戦後ドイツの状況(東西分断から統一後までの国内外の状況)はよく理解できる。そして、再軍備を著者は語る。しかし、この本も2004年発行なので著述もそこまでである。「戦後ドイツ」の実情を知ることはなかなか難しい。
<目 次> ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
序1章 「戦後」の終焉 第3章 ドイツ統一の「負の遺産」
第1章 移民政策の隘路 第4章 「人道介入」するドイツ軍
第2章 「過去の呪縛」から解き放たれて 終1章 「普通化」の次に来るもの
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