ATGの映画
2010年01月02日 公開

これまでに掲載したATGの映画をリストアップしてみました。
以下、クリックして記事をご覧ください。
この一群の映画には、ほかには無い独特の味わいがある。
それは、1960年代~70年代にかけての時代背景を、色濃く反映しているからだけではない。
要するにATGの映画は、出る杭であった。
今もう一度、新たな視点での再評価が待たれる。
1962年

九州の炭鉱が斜陽になっていく中、主人公の炭鉱夫が殺人事件に巻き込まれる悲劇。ですが、案外、すっとぼけた哀れな喜劇です。謎の男Xに殺された、駄菓子屋の女と炭鉱夫、この二人の亡霊がそのXに向かって、なぜ殺したんだと叫ぶ。だが、Xには彼らの姿は見えない、訴えは聞こえない‥。
1963年

時は昭和20年6月、終戦間際のころ。ある学童集団疎開の話。
東京の国民学校の男女児童20名ほどが、先生と共に、ここ甲府市に疎開している。旅館で全員が寄宿生活をしながら、地元の国民学校に通っていた。
1967年
荒野のダッチワイフ

新宿それは、極ありていに言えば、ヒッピー、アングラ、サイケ等々アンダーグラウンドと言われた音楽演劇美術ファッションなどの文化潮流と、70年安保直前の政治闘争が、既存の歓楽街で交錯していた。
1968年
初恋・地獄篇

今、観ると1968年を記録した映画にみえます。
1968年のオモテは勢い良くて、ウラを覗くと悲しくて、何やらザワザワしていて、それでいて、どんよりした虚無感が観客側まで漂ってくるのです。
1969年

1969年、あの夏の新宿にタイムトリップできる映画。あるいは、状況劇場の舞台をのぞき見たい人、どうぞ。
新宿三越や高野フルーツパーラーという方も大勢いたわけだが、当時の新宿、真昼間からこの映画のようでもあった。

主人公の中学生と幼児、その父母の、家族4人の話。「当たり屋」という稼業を選んだ家族の悲しい物語だ。当たり屋とは、走る自動車に故意に接触して大げさに倒れ込み、オロオロする運転手の弱みに付け込み、事故の損害賠償金を、示談で得る商売・・。

近松の世界で遊ぶ、富岡多恵子(浪花の詩人)と武満徹(作曲家)そして篠田正浩監督の3人による脚色と、美術を担当した栗津潔(グラフィックデザイナー)の仕事を楽しむ映画です。舞台は江戸時代の大阪。北の色里、曽根崎新地の遊女・小春と、紙屋の主人・治兵衛の、あってはならぬ色恋の顛末を描く。
1970年

双子のように瓜二つのヤクザと刑事が入れ替わり、終いには同質化して行くお話。
映画はふたりの登場人物の違いを、徐々に曖昧にしていきます。殺伐とした風景のロケ地に、ドキュメンタリー映画風のリアリティを持ち込んだ本作は、今新たな魅力を放っているようにも思えます。
本作をヤクザ映画だと決めつけず、また、原作は脚本化の素材である位の気持ちで観ることも一興でしょう。
1971年

壊れるものは壊れ、去るものは去り、ほったらかしにされた街を、パラパラと小走りに、小者達が思わくげに暗躍し始めた。いまだ正義の者も、自分自身しか信じない者たちも、彼らは明日に向かって不安げなブーメランを投げていた。そして、多くの賢い者たちは、そんなことにはお構いなしに、着実な階段を見つけようとしていた1971年。
1972年

1972年に沖縄が日本に帰って来た。返還されたその年に沖縄で撮影された劇映画。
作り手が沖縄を恐るおそる扱っている、といった感じが伝わってくる。当時、ヤマトンチュが沖縄をどう見ていたのかが、少し分かってくる。今現在、この映画そのものが、ドキュメンタリーかもしれない。

草子と玲子とは、とても親しい女友達。玲子と親二は、初々しい恋人同士。主人公のこの三人、1972年のその当時、高校三年生。
製作当時、監督は44歳にして、「同時代の空気」を共有しながら、時代と若者に対し、同じ高さの目線、誠実な構えで、いたかったのだろう、と観て思う。
1974年

時代劇だが時代劇じゃない。ジャンルの壁をぶち壊し、この映画は観客の前に現れた。
変わりゆく時代を前にして、それも時代の渦中にいながら、時代に乗れなかった者たち。そして、遅れて来たために、時代に乗り遅れた者たち。そんな者たちの代弁者として、原田芳雄は今も輝いています。

寺山修司の自己の短歌歌集をベースに、作劇する寺山の舞台劇の設定空間と、その向こうに見えるイメージを結集し映像化した作品。
恐山近くの村に生まれた少年の、性への目覚めを軸に、故郷を捨て美しい人妻(八千草薫)との駆け落ちを夢想する話をガイドラインとし、寺山の少年時代の経験と感受性からのエピソード群を彩りにして話は進む。
1975年

高知の中村、海辺の夏。奔放な村人たちの群像劇。原作者が脚本を書いていることが成功の要因だし、また監督の技も良い。
さらには、暗くなりがちなストーリーをおおらかにカラッとさせているのは、原田芳雄、桂木梨江、浜村純、絵沢萠子、ハナ肇だ。いい仕事をしている。彼らを愛でながら、もう一度、観てみよう。
1978年

福島第一原子力発電所周辺を舞台とした1978年の劇映画。(この原発の営業運転開始は1979年3月) 原作はドキュメントノベル「原子力戦争」田原総一朗著1976年。
映画の途中で、原発正門を無許可で撮影するシーンが何故か出てきます。ここだけが唯一「ルポ」なのですが、今観るとリアルです。
1979年

1979年、この時代の空気を吸っていないと、まったくもってツマラナイ映画だ。
ストーリーもへったくれもない。見方を変えれば、1979年を映画に封じ込めた作品と言える。
桃井かおりが好きな人、どうぞ。青二才の頃の奥田瑛二が見たい人、どうぞ。
1980年

京都の医大生たちの青春映画。たくさんの登場人物、その人々分のたくさんのエピソードで構成されている。登場人物たちをないがしろにしない、登場人物を尊重した優しい映画ともいえるし、各エピソードに対して、それぞれ細かい配慮がしてある映画とも言える。手を抜かない真面目さに、初々しさを感じる。そこんところを称えたい。

原田美枝子が書いた原案・脚本や台本を尊重しながらも、神代辰巳監督はじめ、宇崎に原田など、彼女を囲んだ周りのプロ達が、大いに遊んだ風が感じられて、実に楽しげな映画である。
それはまるで、登場する女優男優たちの、1980年当時そのままの活気を封じ込めたショーケースを、のぞき見る思いがする。これが、この映画の売りである。

原田芳雄の映画だと思う。愛欲、情念を禁欲的なまでに抑制しきって、その最後の一瞬にかけようとしながらも、その裏側にある深い闇に、ほんのり浮かぶ、いとおしいまでの狂気を表現したかったのだろう。大谷直子、藤田敏八、大楠道代が熱演している。釈迦堂切通し、光明寺、旧有島生馬邸、そして衣装や小道具もこだわっている。
1981年

いや驚いた。小林薫も、巻上公一も若い青い。
出演者全員、セリフが、こなれてなくて、まるで台本持ち寄って、セリフの読み合わせしてるようだ。これが、なぜか面白くて・・・取り上げてみた。誰も言わないと思うから言うけど、端役の室井滋がいい!!
1982年

中川監督、最晩年の作。
歌舞伎の演目を、紅テント黒テント風の舞台劇要素を絡めて映画化。出演はたった三人だけだが、描く世界は深淵だ。
この映画を観てしまうと、鈴木清順の「陽炎座」なんか、観てられない。「陽炎座」の製作年、1981年。「怪異談 生きてゐる小平次」の製作は、翌1982年。

写真家・浅井慎平の映画。写真家らしく、何を撮っても映像はきれい。
話は母親に面倒みてもらえない女の子が、近所のおじさん(タモリ)を慕うようになる。そして自転車でふたりはあての無い旅に出る。で、子供誘拐(キッドナップ)。ストーリーはほぼ無い。出演者がすごい!!
1984年

哲明とみつ子のラブストーリー。
哲明は地方出身の貧しい早大生で小説家志望。かたや、みつ子は、都内の閑静な住宅街に建つ大邸宅で育ったお嬢さん。
話は上流育ちのみつ子の落ちゆく青春物語である一方、世間の道から外れた’70年代的な哲明の生き方、そしてそれに従おうとするみつ子を描きます。原作・脚本:立松和平、ジャズ演奏:山下洋輔、舞踏指導:麿赤兒。
1985年

福井県の美浜原発を取り上げた映画。
原発内で危険な作業を専門にする人々を原発ジプシーと言っている。定期検査がある全国各地の原発を渡り歩いている。
更衣室で、原発に入る前の準備風景が映画に出てくる。下着の袖口やズボン下(下着)のスソを太い粘着テープで何重にも巻いている、放射能汚染水の浸入を防ぐ手段。発電所の係員は作業者全員の首に放射能探知機をかける。宇宙服のような防御服を着て、暗い狭い作業場所に入っていく。息でヘルメットの前面が曇って周りがはっきり見えない。
◆日本アート・シアター・ギルド公開作品の一覧
ウィキペディアの下記に全リストがあります。
http://ja.wikipedia.org/wiki/日本アート・シアター・ギルド公開作品の一覧
外部リンクですので、今後、リンク切れの可能性があります。
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