映画「ペタル ダンス」 監督:石川寛 出演:宮崎あおい、忽那汐里、安藤サクラ
2015年05月13日 公開

四人の女優が登場する静かな映画。
ふたつの話が語られます。
ひとつは仲の良かった三人組の話。ジンコ(宮崎あおい)と素子(安藤サクラ)は、ミキ(吹石一恵)の近況を風のうわさに聞いて驚き心配になります。ミキは地元に帰って行って後、しばらく音沙汰がなかったのです。

もうひとつの話。「あたしなんか、無くなっちゃえばいい」 キョウコ(韓英恵)は、親友の原木(忽那汐里)の前で、か細い声でつぶやいた。そして、まもなくキョウコは行方不明になる。あの時何も言ってあげられなかったと、原木は悔む。どこかでいまも生きていてほしい・・・。そして、このふたつの話はひとつになっていきます。
原木とジンコの出会い。互いに見ず知らずのふたりは、駅のホームにいた。そこへ電車が来た、その時、原木のちょっとしたしぐさが、飛び込み自殺のように見えた。咄嗟にジンコは原木を抱き込んでホーム内側に倒れ込む。だが誤解であった。この時ジンコは指先を骨折する。
話は進んで、ジンコと素子のふたりは、意を決してミキに会いに行くドライブに出る。そして、ジンコに怪我をさせてしまったことの詫びとして、原木はその運転を買って出た。ジンコは指の怪我でハンドルが握れなくなっていたのだ。
三人は車に乗り込み、ミキが入院する海べりの病院を目指した。ここからロードムービーが始まる。
やっと病院にたどり着く。事前に知らされていなかったミキは、驚きと迷惑の感情を押し殺して無口であった。
だが、ミキの願いで、ジンコと素子らは砂浜に出た。一緒に来てほしいところがあると。そこは壊れた小さな突堤であった。入水した現場らしい。ひとりじゃ来れなかったの。
ミキに、ジンコと素子、そして三人に付いてきた原木の四人は、いつまでも海を眺めている。
それぞれにそれぞれの閉塞感を抱く四人の女たち。そのどんよりさを吹き払い開放するかのように、映画は圧倒的に野外シーンを通す。それは、この映画シーンには吹く風が必要であったし、風景は四人の閉塞感を表わしているからだ。
セリフは削ぎに削いでいる。ごく親しい間柄での会話は、時にひとりごとのようなになる。また、流れゆく景色や大きな風景を前にして、ただぼんやり眺めている時に話すことなんかも気持ちが弛緩していて、そうだ。
こんな状況を再現するセリフに滑舌力はいらない、ボソボソ小声の発声で良い。誰も叫ばない。ここに、この映画のリアリティがあるかもしれない。

また、ストーリーテラー能力、特にシーン展開についても残念なところがある。情感にグッと訴えるワンシーン、ワンカットのつくりは得意だが、それらを束ねて一本の長編映画に組み上げる力が弱い。いい持ち味を出してらっしゃるんだけどね。
最後になるが、安藤サクラがいい。地味な役柄だが、彼女の存在感がこの映画をひとつにまとめるカナメになっていることを見逃さぬように。

監督・脚本・編集:石川寛|2012年|90分|
撮影:長野陽一|
出演:ジンコ(宮崎あおい)|原木(忽那汐里)|素子 (安藤サクラ)|ミキ(吹石一恵)|キョウコ(韓英恵)|川田(風間俊介)|先輩(後藤まりこ)|直人(安藤政信)|
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