映画「大統領の料理人」 監督:クリスチャン・ヴァンサン 主演:カトリーヌ・フロ

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  実話をもとに製作された映画です。
  パリ市内にあるエリゼ宮殿。ここがフランス大統領官邸だ。
  この官邸の地下には、大きな厨房があって優秀なシェフのもと大勢の料理人が働いている。
  官邸に招かれる来賓向けの料理がこの厨房で作られる。

  そして、大統領自身の日頃の食事もこの厨房で作られている。だが、これがミッテラン大統領には苦痛であった。
  装飾過多の宮廷風料理じゃなく、幼い頃に祖母が作ってくれたような素朴な田舎料理が食べたい。そんな料理を毎日食べられたら、どんなに心が安らぐだろうか。ミッテランは、十分に年老いていた。

中3  食通で知られる大統領は、自分専属のシェフを官邸に置き、自分だけの料理を作ってもらおうと決めた。しかるべき筋の紹介で一人のシェフを指名した。それが、主人公オルタンス・ラボリ(カトリーヌ・フロ)であった。突然のことに戸惑いながらも、彼女は小さな厨房と若い優秀なコックを与えられ準備を始める。
  大統領は多忙だ。分刻みのスケジュール。料理についての大統領の好みすら聴けないなかで、ついに緊張のその日が来た。
  オルタンスの目利きで取り寄せた新鮮な素材を、彼女お得意の田舎料理に仕立てて出した。大統領は大いに満足。人選に間違いは無かった。数日後、オルタンスは大統領執務室に呼ばれて、大統領と田舎料理談義。互いに気が合った。

  そんなことで、オルタンスは官邸に馴染んで行ったが、問題は彼女が官邸に来たその日から、実はくすぶっていた。
  それは、従来の厨房のシェフたちとの軋轢である。彼らからすれば、彼女は異物である。手っ取り早く言えばTVドラマ「相棒」の特命係。互いにいがみ合い喧嘩もした。
  そんななか、官邸内の組織が刷新される。同時に大統領に専属の医師がついた。健康管理である。オルタンスは、前もって献立を医師に見せチェックを受けることになる。あれもダメこれもダメであった。さらには、経費削減を言われる。
  オルタンスは徐々に官邸に嫌気が差してきた。そんなある夜、献立を考えていると、大統領がひとり厨房に降りてきた。大統領が彼女に言う。虐められているんだって。彼女は、トリュフのスライスを乗せたチーズトーストを手早く作ってワインとともにステンレス台の上に出した。大統領は何も言わず美味しそうに食べ、また階段をゆっくり上がって行った。

  2年間、官邸で働いた後、オルタンスは南極基地の食堂で隊員たちの食事をつくった。人生の岐路にいると自覚する。彼女は、パリを離れ考える時間が欲しかったのだ。
  
下
  映画は淡々としている。
  オルタンスが作る田舎風料理や厨房作業の様子にあれこれ深入りせず、大統領の満足を大げさに扱わず、従来のシェフとの軋轢騒動も多くを言わない。そして、オルタンスの明日も明確には語らずにエンディングを迎える。つまり、くっきりはっきりの起承転結型の語り口ではない映画です。
  ただ、オルタンス役のカトリーヌ・フロが映画をぐいぐい引っ張る、その魅力を楽しむ映画です。


オリジナル・タイトル:LES SAVEURS DU PALAIS
監督:クリスチャン・ヴァンサン|フランス|2012年|95分|
脚本:クリスチャン・ヴァンサン、エディエンヌ・コメ|撮影:ローラン・ダイアン|
出演:オルタンス・ラボリ(カトリーヌ・フロ)|大統領(ジャン・ドルメッソン)|ダビッド・アズレ(イポリット・ジラルド)|ニコラ・ボヴァワ(アルチュール・デュポン)|ジャン・マルク・ルシェ(ジャン=マルク・ルロ)|メアリー (アーリー・ジョヴァー)|パスカル・ルビック(ブライス・フルニエ)|ジョン(ジョー・シェリダン)|コシェ・デュリ(フィリップ・ウシャン)|ジャン=ミシェル・サロメ(ローラン・ブエトルノ)|

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