映画「ラ・ジュテ」 監督:クリス・マルケル
2015年05月27日 公開


どういう戦争だったのだろうか。
第三次世界大戦なるものが勃発し、そして勝利を手にした者も敗者も、極わずかな人々が生き残った。
核戦争だったのか、パリの街は壊滅状態。生き残りはパリの地下に避難している。
敗者となった人々は、ある実験のモルモットになった。
その実験とは、タイムトラベルだ。だが、実験はうまく行かず、発狂する者が後を絶たない。
ある日、ある男が選ばれた。その男は実験に耐え、過去のパリを散策できた。
そして、男は過去のパリでひとりの女に出会う。実験が繰り返される度に、男はその女と出会えた。ほのかな愛が生まれる。
研究者たちは、この男を未来へ行かせることにした。未来から、医療品とエネルギーを持ち帰ること。これは、この実験のそもそもの目的であった。
そしてその日、未来に行った男は、ある場面に遭遇する。それは・・・。
映画製作の1962年といえば、冷戦の時代。当時、ことは緊迫していて、核戦争による第三次世界大戦がまるっきり架空のこととは思えぬ時代だった。1962年秋、キューバ危機の折、明日核戦争が起きるかもしれないと日本でも不安な日々があったと、そんな話を聞いたことがある。
それから50年以上経った現在、創作上のこととは言え当時ほどには、そうそう簡単に第三次世界大戦なんてことは言わない。それより今、問題はより複雑になった。
ま、それはともかく、映画は第三次世界大戦の戦後からはじまるが、ストーリーは意外にも、男の過去未来、個人の話で終始する。よって戦闘場面などは無い。いわゆるSFを期待しないこと。

この映画は全編、動画じゃないです。写真がスライドショーのように次々に現れて話を進めます。でもそれぞれの写真には力があります。そして静かな映画です。
本作の2年後に、スタンリー・キューブリックによる 「博士の異常な愛情」というシリアスな喜劇映画があった。この映画は、米ソによる回避努力むなしく、核戦争に突き進ん行くその一瞬へと話が進むストーリー。その翌年製作の「アルファヴィル」は、ジャン=リュック・ゴダールの作。電脳化した未来社会を描いて、ソ連や全体主義を批判している映画だった。この二作も冷戦時代の映画です。 「博士の異常な愛情」の記事へは、こちらから。「アルファヴィル」はこちらから、どうぞ。
オリジナル・タイトル:La Jetée
監督・脚本:クリス・マルケル|フランス|1962年|29分|
撮影:ジャン・チアボー、クリス・マルケル|
出演:エチエンヌ・ベッケル|リジア・ボロフチク|ジャック・ブランシュ|ヘレーネ・シャトラン|ジェルマーノ・ファチェッティ|
こちらで、フランス映画の特集をしています。
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