映画「沖縄 うりずんの雨」 監督:ジャン・ユンカーマン ドキュメンタリー映画

上

  総力をあげて沖縄問題を取り上げたドキュメンタリー映画。
  「私たちは、沖縄のことをどれくらい知っているのだろうか」と、映画は問いかけます。

  その内容は、
  米軍の沖縄上陸と日米両軍の白兵戦(米軍から見た当時の映像)
  米軍による沖縄の人々に対する強制収容所への収容
  民間人の集団自殺と日本軍肉弾兵士
  米兵による一般女性に対する性的暴力
  本土復帰直前のコザ暴動
  現在の基地問題など。
  以上、沖縄に関するほぼすべての問題を取りあげ一気に語る。4章に分けて編集されてた148分。

  監督は、日本語達者なアメリカ人ジャーナリスト。(1952年生まれ)
  登場する証言者の証言を、日/米、あるいは、加害者/被害者、の両方から聞きだしている。
  つまり、大戦時の生き残りの米兵と、同じく生き残りの日本兵、
  占領時に性犯罪を犯した米兵と、その被害者の関係者、
  コザ暴動に至るまでの時代の証言者として、アメリカ軍憲兵と、占領下の沖縄の(当時の)若者、
  現在のアメリカ軍兵士と、沖縄県民、
  そして基地反対と賛成の沖縄県民ら、から聞き出している。

  監督の思想的立ち位置については、映画のなかに出てくる現在の基地問題のシーンで推測できるだろう。
  あわせて監督の人道的な面については、90歳を越える元米兵ふたりの人選が物語っている。
  また、占領下に多発した性暴力事件については、アメリカ軍内での女性兵士に対する性暴力問題を絡めて語るあたりに、監督のジャーナリスト魂がみてとれる。
  
  本作には、観客が息をのむシーンがいくつかあります。
  日米白兵戦のフィルム(当時のフィルム)を映し出すシーンでは、死体がはっきりわかります。
  また、沖縄占領時代に性暴力犯罪を犯した黒人米兵ら(米国在住)を探し出してインタビューするシーンも、そのひとつです。

  戦後70年が経ちました。
  とにかく、こうした真正面から語るドキュメンタリーが、つまり過去からの全容を多面的に語りあげ、同時に現在・次代を見据えながらのドキュメンタリー映画が、日本人の手から産み出され難い現状を、この映画は言外に訴えているようでもあります。また、プロデューサーの山上氏にも注目したい。

  いいドキュメンタリー映画です。ぜひ、ご覧ください。

  ※「うりずんの雨」とは、血の雨、涙雨、礎の魂 呼び起こす雨。(映画チラシより)

  公式サイト:http://okinawa-urizun.com/

監督:ジャン・ユンカーマン|2015年|148分|
プロデューサー:山上徹二郎|撮影:加藤孝信、東谷麗奈、チャック・フランス、スティーブン・マッカーシー、ブレット・ワイリー|

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