映画「天使」(1982)・「海辺にて」(1992)  監督:パトリック・ボカノウスキー

  深夜に放映されている魚やサンゴの海中映像を、ぼんやりながめるのが好きです。
  どちらの映画も、そんな気分で観るのがいい。
「天使」 オリジナル・タイトル:L'Ange1-0_2015061814513627f.jpg


  実験映像。アートと科学が未分化だった時代を懐かしむかのような映像だ。それぞれの短編を各章に収めてみせてくれる。
  たぶんに工房的。秘密のラボラトリーで製作されたかのように感じる。
  陰鬱なシーンもあるが、一方でひょうきんさを忘れない。 
  映像は、時に写真的で、また時に抽象絵画のよう。
  繰り返しの映像シーンが多用されるがミニマル的な反復ではない。 
  光と影。ラストはホワイトアウトする。

  バックグラウンドミュージックが残念。どれも映像に添えました的な音で、TVドラマの効果音響の域を出ない。優れた映像作品なだけに、いわゆる現代音楽として、もっとしっかり作曲された上質な曲が欲しいところだ。


監督:パトリック・ボカノウスキー|フランス|1982年|70分|
撮影:フィリップ・ラヴァレット|音楽:ミシェル・ボカノウスキー|特殊効果:クリスチャン・ダニノス、パトリック・ボカノウスキー|



2-00.jpg「海辺にて」 オリジナル・タイトル:La Plage


  海辺の映像を、当時の技術を駆使して加工した短編作品集。
  つまり、非・デジタルなエフェクト効果を効かせた、まどろむような映像。
  感触が柔らかくあたたかい。
  ストーリー性は皆無。ただただ、心地よく眺めていられる。
  第3章の映像は、カメラレンズの前に、不規則な凹凸のある透明ガラスと、模様のある色ガラスを組み合わせた板ガラスを置いて撮影された感じがする。まるで抽象絵画が動く感じ。人がペンギンにみえるのも可笑しい。


監督:パトリック・ボカノウスキー|フランス|1992年|14分|
音楽:ミシェル・ボカノウスキー|

  どちらの映画も、あまり難しく言わない方がいい。
  言ってしまうと、それがフィルターとなって、知識で観てしまう。観る目が曇る。すなおに観ましょう。  

  パトリック・ボカノウスキー Patrick Bokanowski 1943年生まれ。
  絵画、写真、光学、化学を学び、1982年に発表した長編第一作「天使」でアヴァンギャルド映画作家として知られるようになる。画家としても活躍しているらしい。(なるほど) ミシェル・ボカノウスキーは彼の妻。


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