映画「風切羽 (かざきりば)」 監督:小澤雅人 主演:秋月三佳

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 サヤコ(秋月三佳)は児童養護施設で暮らしている高校3年生。
 18歳になると、この施設から出なくてはいけない。
 サヤコの夢はダンサー。ダンスの専門学校に通いたい。近所の店でバイトをしている。でも、そんなことでは入学金すら払えない。だから街で出会った男を誘い、密かに売春をしてまとまった金を貯めている。(ただし、映画は婉曲に語る)

 久々に父親が施設に面会に来た。面会が終わって、父の車で一緒にドライブ。途中、サヤコが車を降りて缶コーヒーを買いに行った隙に、父親は車ごと姿をくらました。サヤコは父親に貯金通帳を盗られてしまった。路肩でサヤコは呆然とたたずんでいる。

 サヤコが幼い時、父親は家を出た。残された母親(川上麻衣子)は、何故か姉ではなく、妹のサヤコを虐待し続けた。そんなことで、サヤコは児童養護施設で暮らすこととなった。一方、母親は男性遍歴を繰り返し今に至っている。
 サヤコが入っている施設は、6人を養護するグループホーム。サヤコのほかには、同世代くらいの女の子が4人と、幼い女の子1人。サヤコは進んでこの子の面倒みている。幼い頃の自分を重ねているようだ。

 さて、呆然とたたずんでいたサヤコは持ち合わせがない。幸い、近くに姉が住むマンションがある。サヤコは姉に金を借りようとした。しかし、冷たい姉は「また逃げ出したの!」と罵り、すぐさま施設に通報、サヤコは逃げた。通報を受け施設の人が車で駆けつけ追いかけるが、なんとか逃げおおせた。サヤコはこれまでに何度も施設から逃げ出していた。
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 夜になって、サヤコは母親がいる実家のアパートにたどりついた。やくざ風の男が来ている。「あんたの来るところじゃない」と追い払われる。

 自転車に乗った男(戸塚純貴)に会った。ケンタという。道で出会う人に誰構わず、「僕の事、知りませんか?」と問うている。精神に障害を持っているのか?
 ケンタも父親の虐待を受けて育ったらしい。自分の中にもう一人の(こうでは無い)自分を育ててきた。互いに似た者同士だとわかる。自転車に二人乗りして夜の道を走る。ふたりの心が少し触れ合う。
 大きな団地の窓々の明かりが、遠目にふたりを見下ろしている。
 
 ケンタの父親がケンタを追って来た。取っ組み合いとなる。咄嗟にサヤコは道端にあったシャベルをその父親の背後から振り下ろした。父親はサヤコに飛びかかり、今度はケンタがシャベルでとどめを刺した。そして、ふたりは・・・・。

 その後、サヤコは、もう一度、実家の玄関先に立った。幼い頃、母親に追い出され「入れて!お願い!」と叫んだ時のように、ドアの前にいた。やがて母親は、昔の時のように無言で娘を部屋に入れた。


 サヤコ役の秋月三佳が時折見せる「目の力」が、この映画を牽引する。
 だが一方で、監督が描きたい想いに映画が付いて行っていない。人物描写が薄っぺらで、観る者に伝わってこないのも残念だ。
 我が子を虐待してしまう話は、呉美保監督2015年作の「きみはいい子」にも出てくる。これはいい映画だった。こちらから、どうぞ。



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監督・脚本:小澤雅人|2013年|88分|
撮影:藍河兼一|
出演:秋月三佳(サヤコ)|戸塚純貴(自分を探すケンタ)|川上麻衣子(サヤコの母親ユカリ)|重松収(サヤコの父親マサカズ)|寺田有希(サヤコの姉サユリ)|佐藤太(ヤスオ)|石田信之(川北)|五大路子(カズコ)|


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そうなんです!本当にいい映画ってなかなか無いんです。
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