映画「誓いの休暇」 監督:グリゴーリ・チュフライ

その後、戦争は終わったが、アリョーシャは帰って来なかった。
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アリョーシャは一時帰郷の途中、シューラに出会う。
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1-0 19歳の通信兵・アリョーシャを主人公にして、母ひとり子ひとり家庭の親子愛、及び帰郷途中に出会った女・シューラとのほのかな愛を主軸に、戦争最前線のうしろで、夫や息子や彼氏を「兵隊に取られた」妻、親、恋人の悲しみや生活苦を、映画は語ろうとする。戦争自体については、独ソ戦の複雑な実態を語る映画ではない。また、共産主義称賛はしていない。

 通信兵・アリョーシャは、もう一人の通信兵と共に戦場に取り残されていた。そこへドイツ軍の戦車が来る。逃げ走るアリョーシャを敵戦車は執拗に追いかけて来る。アリョーシャは放置されていた対戦車砲でその一台をやっつけた。
 部隊に舞い戻ったアリョーシャは上官から大いに褒められ、一時帰郷が認められた。母からの手紙で、家の屋根が壊れたという知らせを受け取っていたのだった。

2-0_20151030133031530.jpg 話はここから始まる。帰郷に2日、屋根の修理で2日、部隊に戻って来るのに2日の合計6日間の休暇をもらったアリョーシャは、戦時下で混乱する鉄道事情の中、列車を乗り継ぎ、時に軍用列車の貨車に忍び込み一路、家路に向かう。その途中で、シューラという女性に出会うことになる。
 また、アリョーシャが降り立つ駅や駅周辺の町、彼が出会う様々な人々を映画は描き出して、戦時下ソ連の民衆の姿や気持ちをありのままに語って行く。

 アリョーシャは、ばかにお人好し。部隊の見知らぬ一兵士から、俺の町はあんたの帰郷途中にあるから、途中下車して、部隊に配給された貴重なこの石鹸を妻に届けてくれ、と頼まれ届けに行く。さらには、片足を失い除隊した男の面倒をみて列車に乗り遅れたり。
 お人好し自体は悪くはないが、6日間しかない日程で、かつ列車ダイヤは無いに等しい状況で、あまりにもスケジュール感覚が無い。映画を観ようとする現代の我々にとって、映画から気持ちが離れて行きかねない脚本だ。

 結局、アリョーシャは家にはたどり着くが、残された時間は無い。母に会ってすぐにその場を去らなければならないことになる。部隊に戻るのも、きっと遅れるだろう。
 そもそもアリョーシャを褒めた上官は、アリョーシャの個人評価を上げてやろうということであったが、結局、人の好い上官はアリョーシャの帰郷休暇申し出を飲んだのだ。これも軍隊規律マネジメントからみて、疑問に思うのだが・・・。 

 映画は、反ソ的。国家・組織より、個人の自由な振る舞い、人として素直な振る舞いに焦点を当てる。反戦映画というよりも、全体主義を批判する作品。
  

オリジナル・タイトル:BALLADA O SOLDATE
英語タイトル:Ballad of a Soldier
監督:グリゴーリ・チュフライ|ソ連|1959年|88分|
脚本:ワレンチン・イェジョフ、グリゴーリ・チュフライ|撮影:ウラジミール・ニコラエフ、エラ・サベリエフ|
出演:アリョーシャ(ウラジミール・イワショフ)|シューラ(ジャンナ・プロホレンコ)|アリョーシャの母親(アントニーナ・マクシーモヴァ)|ほか

すぐに部隊に戻るアリョーシャを見送る母親や隣家の恋人ら。
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