映画「世紀の光」 監督:アピチャートポン・ウィーラセータクン

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 つかみ所のない映画かも知れません。一貫するストーリーは見当たりません。
 ですが、いいです。映像は魅惑的です。
 アピチャートポン・ウィーラセータクン監督の魔術を堪能できます。

 この映画には、相対的なありさまが、対になって幾つも出てきます。
 対比が一番大きく描かれるのが、自然豊かな地方と、都市化された都会。(地方のシーンが映画前半、都会が後半という映画構成になってます。) 
 ほかには、西洋と東洋の医学、自然と超自然、この世とあの世、田舎の愛・都市の愛、科学と非科学、自然の癒し・都会の憂いなどがあげられるでしょう。監督は理系の人ですね、対比できることに魅かれるのでしょうか。

1-0-1.jpg ただし、相対的なありさまは、互いに優劣を競うものとしては描かれていません。両者の境界線は、穏やかに馴染むまでの様相です。そして、映画全体は監督独特の「アジアの不思議のベール」で包まれています。
 あわせて、地方と都会のそれぞれのシチュエーションにおかれた人々の、出会いや愛を織り込んでいます。 
 かつ、話の舞台は、地方の簡素な病院と都会の大病院で、それぞれに医師や患者らが登場します。

 病院の裏手は一面田んぼという地方にある静かな総合病院。
 ここに勤務する若い女性医師が年老いた僧侶を診ています。ところが診察の最中に、僧侶が医師に言います。心が乱れていますね。(なるほど。医師に金を借りた男が期日までに金を返せないと言いに、ついさっき病院に来ていました) 
 また僧侶はこの薬を飲めば身体にいいと言って漢方薬になる乾燥させた植物を医師に渡します。さらには、そう言いながらも、寺の僧侶たちのために薬をくれと医師に言います。西洋医学と東洋医学(&仏教)の出会いです。

2-0-1.jpg この女性医師の回顧シーンがあります。
 以前に片思いで終わった男との出会い。男には好きな女性がいました。
 その女性と医師のふたりが自然に囲まれた沼のほとりで穏やかに会話しています。
 そして女性は、この沼に伝わる不思議な伝説を医師に語って聞かせる、そのシーンで映画は皆既日食を幻想的に見せます。
 一方、映画後半では、都会の大病院の一室のシーンで、不気味なダクトが緊張感を誘います。
 (何か通底する超自然な不思議感を表わしているのでしょうか)

 地方の病院に歯科医の若い医師がいます。
 この医師は患者の若い僧侶にシンパシーを感じます。ある夜、病院の敷地の一画で開催された祭りで、医師はこの僧侶に会い、立ち話をし、血縁関係でもないのに何故かシンパシーを感じることを伝えます。現世と前世・来世の中での、不思議な出会いを語り合います。

 男女の愛のエピソードを地方と都会で短く描きます。
 先ほど登場した女性医師は、院内で地元の男から突然に求婚されますが、医師はその男とちゃんと向き合い、その気がない事を穏やかに伝えます。
 一方、映画後半で、都市の大病院に勤務する男性医師は付き合っている彼女から、郊外に建設される巨大なプラント施設に就職できたので一緒に引っ越ししようと、熱烈なキスのさなかに突然に言われます。現地にも医師の働き口はあるからと彼女は言いますが、医師は顔をそむけて無言で窓の外を見ています。

 この男性医師が同僚と一緒に大病院の地下にある部屋に入ります。
 そこには年老いた女性医師がいて、青年の患者に対してシャーマニズムな民間医療を施しています。男性医師らは、これをじっと見つめています。(科学と非科学の対比)

 切りないですが、最後に。先ほどの女性医師がある男性医師を採用面接するシーンが映画冒頭にあります。
 映画後半で、この女優は大病院でも同じ役で登場し、同じく男性医師を面接します。そして、この男性医師役も同じ男優で、それぞれ二人は二役で登場します。同じことでも生活環境や社会背景が違うと、人は違う反応をするという事らしいですが、いかがでしょうか・・・。

 とにかく、映像がものを言う映画です。文章表現では、なかなか魅力が伝わりません。
 ちなみに、地方の病院で行われた祭りで、小さなライブがあった。ギターを伴奏に歌う歯科医。この曲が実にいい。タイの現代ポップス。下

オリジナル・タイトル:Sang Sattawat
英語タイトル:Syndromes and a Century
監督・脚本:アピチャートポン・ウィーラセータクン
|タイ・フランス・オーストリア合作|2006年|105分|
撮影:サヨムプー・ムックディープロム
出演:サクダー・ケァブアディーほか


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