映画「僕らのうちはどこ?~国境を目指す子供たち」

ラテンビート映画祭   新宿バルト9

僕らのうちはどこ? ~ 国境を目指す子供たち |原題:Which Way Home
監督:レベッカ・カンミサ|2009|ドキュメンタリー|メキシコ・アメリカ

ちらしwhich_way_home  作り手がテーマにのめりこみ過ぎて客観性を失うと、メッセージは観客に伝わり難いものだ。当たり前といえば当たり前だが、当たり前を成した作品は意外に少ない。本作はその基本がとてもしっかりしている。そして決してブレナイ、腰が据わったカメラワークは作品をよりがっちり安定したものにしている。情緒に深入りしないから観客も暗くならない。いい映画だ。
  中南米諸国からメキシコを経由してアメリカに密入国しようとする人々は1年間に13万人、その5%が未成年らしい。取材・撮影のために映画スタッフが近づいたホンジュラスやグアテマラの少年達は14歳前後、中には9歳の少年たちもいる。意外だがみな悲壮感が無いように見える、走る列車の上で遊んでいる。列車の乗り換え地点にある家々では少年達に食べ物を恵んでいる。しかしどうして年端のいかない未成年が死を覚悟でアメリカに越境しようとするのだろうか?

  理由のひとつは家計を助けたい、母子家庭の母親を助けたいという動機。アメリカで金を貯めいずれ帰郷したいが、とにかく向こうで働き口を探し母に送金したい、あるいは数年前にアメリカに出稼ぎに出た父親に合流し仕事にありつきたい、どれも一応 母親と相談の上での行動だ。彼らにとってはアメリカに行く手段は無断無賃乗車の貨物列車しか無いし常態化している。米国へ密入国させる請負業者に頼む親もいるが、業者は旅の途中で子供をセックス対象にし死亡すれば途中で捨ててしまう。
  理由のふたつめは、貧しい生活を変えたい、そのために故郷を捨てる捨てたい組、親と相談せずの家出である。そうさせる背景は義父から疎まれている、すでに故郷で路上生活者になっている。とても甘い幻想だが、なんとかアメリカ人の養子になりたいと皆が口々に言う。
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  メキシコ国内を2300キロ、貨物列車を乗り継ぎながら北上する旅は大人でさえ危険だ。線路の状態が悪くて大きく揺れる列車からの転落、よく起きる脱線事故、強盗(←地元警察官もグルだったりする)、殺人、そして最後はアメリカとの国境にまたがるソノラ砂漠の横断。
  一方、食事、ベッド、情報を無料提供する公や民間のシェルターがある。また子供向けに医療行為や注意勧告をする専門のNPOが近年立ち上がった。赤いトラックが線路際の道を伴走したりする。
  公的な取調べはメキシコの南北の国境にあるシェルターで行われる。精神的に追い詰められた子や病気の子だとシェルター職員が判断した場合、また途中で地元警官に助けを求めた子は、自国へバスで送還される。

  首尾よくアメリカの祖母の家までたどり着いた9歳の子は、旅の話をしたがらない。密入国請負業者からの精神的苦痛が今も彼の心をさいなむ。これも無事アメリカに渡った14歳の子はアメリカ側で保護され収容所に入り1ヶ月後に自国へ強制送還される。自宅に戻ったところを取材するスタッフに少年は言った、義父との軋轢はまったく解消されず自分の居場所はこの家にはない、そのうちまたアメリカへの入国に挑戦すると言った。
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今年公開されたこの映画の私の映画評はこちら (7月4日付け)

アラカルト洋画IMG_0003


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