映画 「みんなわが子」  出演:中原ひとみ   監督:家城巳代治

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甲府市内の旅館で寄宿する疎開児童たち

 時は昭和20年6月、終戦間際のころ。ある学童集団疎開の話。
 (目黒区立 月光原小学校編の「学童疎開の記録」などに基づく)

1‐0 2-0 東京の国民学校の男女児童20名ほどが、先生と共に、ここ甲府市に疎開している。(東京の空襲が激しくなる中、疎開先がない家の子どもたちは、学校でまとまって疎開した。)

 甲府の旅館で全員が寄宿生活をしながら、地元の国民学校に通っている。
 授業では、竹やり訓練や、敵機爆音を収録したレコードを聞かせて、戦闘機名を当てることもしている。

 そんなある日の授業中、突如空襲警報のサイレンが鳴り、みな防空ずきんをかぶり校庭へ飛び出した。そしてその時突然、空から無数のビラが舞い落ちて来た。これを拾おうとする子供たち。
 「日本のみなさんへ。アメリカ軍はオキナワを占領しました。日本が早く降伏しないと、近いうちに爆弾のお見舞いにあがります。」

 米軍が撒いた空爆予告のビラだった。
 これを読んだ先生たちは、子どもたちに見るな拾うな持ち帰るなと慌てて叫んだ。
 しかし、市中全域に撒かれたビラを大人たちは読んでいた。そしてやはり、ビラは町内の人々が回収にまわっていた。
 そののち、しばらくして沖縄戦敗北のニュースがラジオから流れた。



3‐0 再疎開が決まった。徒歩で山奥の寺に移動した。病弱な子ふたりは医療施設のある甲府市内に残った。そして7月、予告通り空爆が行われた(甲府空襲)。
 残念なことに病弱で残った子供ふたりともが亡くなってしまう。死亡した児童の母親が東京から駆けつけ、葬儀が再疎開先の寺でおこなわれた。
 そして8月、終戦の日。怒りと悲しみの先生をよそに、子供たちは親の元に帰れることを喜び、寺にある神輿を担ぎ出して、大はしゃぎし始める。

 エピソードのいくつか。
 食糧事情。
 甲府市内での児童らの夕食は、(たぶん)大根・芋の雑炊と漬物。
 再疎開先の寺では、もうすこしいいものが食べられると期待したが、だめだった。一帯の家々は、疎開の子らにサツマイモなどを供出したがらない。先生がお金で買うといって農家と交渉するが売ってもらえない。しかしその家の納屋には、芋が山と積んである。たまりかねた西野先生(中原ひとみ)らは率先して、その芋を子どもたちと共に、密かに袋に詰め込んで走って逃げた。ただし、お札を納屋に置いて。
 寺の住職の子が水飴を母親にせがむ。あの子らに隠れて舐めなさいと言うシーンがある。一方、疎開児童は胃腸薬や練り歯磨き、絵の具までを腹の足しにするシーンがある。
 疎開児童が近くの沢で沢蟹をとって食べる。村の子は食ったことがないと言うが・・・。うまい!みんなで鍋で焼いて食べた。村の男が蛇を数匹とって来た。「蛇のかば焼き食べる人!」と声をかけると、多くの児童がいっせいに手を上げるシーンもある。西野先生は悲鳴を上げる。

 親との面会。
 「くじ」で面会日程の順番が決まる。(一学期に一回だったらしい)
 このルールを無視してどうしてもわが子と会いたいと言う母親が映画に出てくる。寝静まった夜中に子の枕元に行ける配慮を先生がする。

3-4.png 心中事件。
 最初の疎開先、甲府の旅館内で心中事件が起きた。
 疎開児童の面倒をみていた甲府連隊の男性と旅館の娘との心中。戦争の最末期、男が所属する隊が、どこかの戦場への出兵が決まったのだろう。宿の近所の大人たちは、棺を指して非国民と罵るシーンがある。
 
 学童疎開とは
 第2次世界大戦の末期に東京,大阪,名古屋,横浜など大都市の国民学校初等科児童を郊外の農山村に移動させ,戦火を避けさせたことをいう。 1944年8月から学校単位の集団疎開が実施され,45年の疎開児童数は約 45万人に達した。

 【疎開をテーマにした映画】 
 これまでに記事にした作品は、「風の子」 監督:山本嘉次郎 
 戦時中、東京(大森)を離れ親戚を頼って越後へ、そして能登へと疎開した一家の話。(実話を基にした脚本)
 4人の子と母親そして叔母が登場する。やはり食うに困る。(記事はこちらからどうぞ)

監督:家城巳代治|1963年|93分|
原作:月光原小学校編 「学童疎開の記録」 (未来社刊) その他より
脚本:植草圭之助|撮影:井上莞|
出演:桑山正一(沼田先生)|高津住男(木谷先生)|中原ひとみ(西野先生)|辻伊万里(谷口寮母)|三崎千恵子(梅村寮女主人)|真山知子(京子)|大森義夫(村長)|富田仲次郎(住職)|田上嘉子(邦雄の母)|北林谷栄(房吉の母)|赤木蘭子(順一の母)|上林詢(三沢梅軍少尉)|ほか

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キャプチャ4 天地52  2


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