映画「光りの墓」 タイ映画  監督:アピチャートポン・ウィーラセータクン

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1-0_2016040523541093c.jpg 突然の発作で眠りに落ち、眠り続ける原因不明の難病。この難病にかかった何人もの患者がここに収容されています。
 ひたすら眠る患者たちの全員が、兵士だと映画は言っています。また、眠りから覚めた患者のひとりが言うセリフに、私はもう軍隊には戻らないと言っている。これらはたぶん、やんわりした遠回しの表現ではありますが、タイの軍政を批判している様にみえます。
 この難病治療のための青や赤や緑に光る医療器具は、監督独特の不思議感を醸し出しています。加えて言えば、眠る患者や死者と交信できる女性が登場したり、祭壇があるやしろに祀られた女神(いにしえの国の王女)が現代人の姿で現れるシーンがあります。しかし、この作品には明快なストーリーはありません。

 監督が製作した「ブンミおじさんの森」(2010年)には、魅惑的な物語性がありました。
 ですが本作「光りの墓」は、ストーリーが見当たらなかった「世紀の光」(2006年製作)の作風に舞い戻った印象を受けます。
 あわせて「世紀の光」では、例えば、都会/地方、科学/非科学、この世/あの世など相対的なありさまが対になって幾つも出てきて、基本これらの相対する要素で映画は緻密に組み立てられていました。本作「光りの墓」でもこういった傾向はみられますが、「世紀の光」ほどに執拗に相対的要素を追いかけるでもなし、またその要素間の構成が緻密ではありません。
 ただし本作では、男性/女性の対比が全編を包んでいます。登場する人物の多くは女性です。なぜなら男性の多くが眠りこける患者(兵士)だからです。結果、相対的に、登場する女性たちが持つ能力や快活さや優しさがクローズアップされています。

 では、本作「光りの墓」の大きな特徴は一体なに?・・・というところで残念ながら、その答えはぼんやりしてしまいます。
 監督2作目の「ブリスフリー・ユアーズ」 (2002年)以降これまでに、監督が手にしてきた様々な手法を本作「光りの墓」で踏襲していますが、その結果、本作は自己模倣に陥っている感じがします。監督の魔術が薄れています。
 
 観終わって思うに、アイデアが完全に熟成する前に製作に入ってしまった感じを受けます。さらには、難病患者のベッドサイドで身の回りの世話するボランティア女性で、主人公のジェンを演じる女優のジェンジラー・ポンパット・ワイドナーに、監督は頼り過ぎたきらいがします。次回作を期待したい。
 ちなみに、この映画の予告編は映画以上によく出来ています。


オリジナル・タイトル:Rak ti Khon Kaen
監督・脚本:アピチャートポン・ウィーラセータクン|タイ・イギリス・フランス・ドイツ・マレーシア|2015年|122分|
撮影:ディエゴ・ガルシア
出演:ジェンジラー・ポンパット・ワイドナー(ジェン)|バンロップ・ロームノーイ(ジェンが世話する兵士・イット)|ジャリンパッタラー・ルアンラム(眠る兵士と交信する能力を持つ女性・ケン)|ほか

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