映画 「熱海ブルース」  監督:ドナルド・リチー

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 出演俳優の素の良さと熱海の温泉街を素材に、16ミリモノクロフィルム、セリフなし、アンニュイなジャズサウンドの三つで味付けし、それにコミカル味を少々加えた短編ラブストーリー。

1-0_20160423123531226.png 話は簡単明瞭、行きずりの恋。若い女がひとり、熱海に行く。海を望む旅館で男に出会う。互いに少ずつ魅かれ合い、ついに愛を交わし、だが男はすぐにその場を去る。それを知らずに女は幸せに浸っている・・・。

 ストーリーを追う娯楽作品ではない。50年以上前の公開当時は、とても斬新な印象を与えたのだろう。
 いま観ても新鮮で古さを感じない。かつ観終えたあとに清涼感が残る。またこれは作り手の想定外だが、かつての熱海の風景が、爽やかなノスタルジーを感じさせてくれる。
 ちなみに、本作を観たあとに、続けて何かほかの邦画を観ると、きっとその映画が厚化粧に感じるだろう。

 ドナルド・リチーの作品群の中では、実験映画の色合いがいちばん薄い映画だと思う。
 ドナルド・リチーとは、どういう人?  wikipediaへのリンク https://ja.wikipedia.org/wiki/ドナルド・リチー

 「熱海ブルース」では、温泉街でのロケ風景が作品に生き生きした息吹きを与えている。
 こうした意図で、主人公を街の雑踏に置いて撮るシーンは、当時ほかにもあった。
 例えば、羽仁進の「不良少年」(1961年)、今井正の「喜劇 にっぽんのお婆あちゃん」(1962年)これらはともに浅草だ。石井輝男の「セクシー地帯」(1961年)は銀座だった。(題名のリンクは当ブログ記事にリンクしています)
 加えて言えば、こういう意図はモノクロだからこそいきる手法。モノクロは不要な雑多なものを削ぎ取って、ライブ感ある息吹きだけを抽出する。モノクロはいい。
 「熱海ブルース」、私は好きですね。そして、ドナルド・リチーが版画が好きなのが分かる。

英語タイトル:Atami Blues
監督:ドナルド・リチー|1962年|20分|
脚本:マリー・エヴァンス|撮影:ヒラノヒデトシ|音楽:武満徹|
出演:ワダチエコ|スズキトモスケ|

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