映画 「女はみんな生きている」  監督:コリーヌ・セロー

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物陰に身を隠すノエミとエレーヌ

1-0_20160510122209440.png エレーヌは、なぜその女性にここまで心ひかれたのでしょう。
 この物語は、コミカルな サスペンス・ドラマです。
 話の展開がてきぱきしていて、そのスピード感は小気味よい。
 コミカルとシリアスの取り合わせ、「甘辛」の妙味を楽しみましょう。

 エレーヌ(カトリーヌ・フロ)は、仕事を持つキャリアある40代で、家事もきっちり切り回している。夫のポールは中小企業の社長で会社を経営している。息子のファブリスは大学生で惚れっぽい子、2人の女の子といい関係。つまり、この一家は何不自由ない一家だ。

 エレーヌが心ひかれたのは、ノエミという若い女だった。
 のちにわかることだが、この女は街外れの道端に立っている街娼だ。アルジェリア生まれの23歳。ノエミが幼いころ、父親はアルジェリアからパリに出稼ぎに出て別の女と家庭を持ち、母親は母親で地元の近所の男とくっついた挙句に首を吊った。
2-0_20160510122750244.png そんな中、ノエミは実の妹と一緒に父親のパリの家庭に引き取られた。この家には義母とその兄弟もいた。ノエミは頭が良く成績優秀であったが、父親はノエミに進学ではなく、10代の彼女に一方的に結婚を取り決めた。結婚で父親の懐にまとまった金が入るのである。
 しかし、直前にノエミは逃げた。逃げてパリの街を飢えてうろついた末に、麻薬ギャング一味に拉致され、ヤク漬けにされ街娼にされ、そして時が経っていた。

 そんなノエミが一味から逃げ走っているまさにその時、エレーヌは彼女に出会った。夫ポールが運転する車に向かって走って来たノエミが、フロントガラスに激突したのだ。これを見て一味はその場から逃げた。エレーヌは救急車を呼ぼうとしたが、夫はこれを制して夫婦もその場を去った。誰が見てもノエミは街娼の格好で、一味の男たちはギャングの風体だった。

 ノエミの容体が頭から離れないエレーヌは翌日、救急入院し集中治療室にいる彼女の所在を突き止めた。生死をさ迷う重体だった。その日からエレーヌは仕事と家事を棚上げにして集中治療室に通った。この間、ギャング一味が病院に現れノエミを拉致しようとしたが、果敢にもエレーヌは男たちを追い払った。(ここはコミカルなシーンのひとつ)
 
 さて、ノエミはなぜ逃げたのか、一味はなぜ街娼1人に固執するのか。それは彼女が手にした大金であった。
 仕事柄とはいえ、男を虜にするノエミの才能は抜群であった。とある富豪老人がノエミの罠にかかり、「その全財産を彼女に」生前贈与したのだ。ノエミはすかさず、ルクセンブルクからパナマへ、そして香港やケイマン経由で、すべての金を入院前にスイスのある銀行に移していた。彼女の頭の良さはギャングボスも認めていて、一味の資金洗浄を任されていた、このキャリアがここで活きたわけだ。大金隠しとタックスヘイブン。

3-0_20160510123452745.jpg 話を戻すと、エレーヌは退院したノエミを、夫ポールの母親の家にかくまった。海のそばの田舎の一軒家であった。みるみる元気になったノエミは、ポールの母親と親しくなる。母親は一人住まいで、長年にわたりポールから邪険な扱いを受けていて優しさに飢えていた。ノエミはエレーヌに対してと同様に、ポールの母親にも、母のような存在を求めていたのかもしれない。

4-1_20160510124002e9d.jpg さてさて、話の展開はまだ2つある。
 ノエミの妹が、ノエミの時と同じように結婚が決まったという話を聞きつけノエミがとった行動とは。そして、ギャング一味への仕返しとして、エレーヌとノエミが警察を巻き込んでとった行動とは。

 この映画、総じて喜劇仕立てではあるが、フランスの社会が抱える問題を列挙してみせている。
 中年に達した夫婦の癒やせぬ距離と世間体、妻の家庭内役割と夫の幼さ、夫の仕事と男社会、年老いた親と息子の疎遠、加えて男の性欲に対する皮肉といったことから、アルジェリア移民、イスラムの男尊女卑、売春と麻薬犯罪組織など多岐に渡るが、これらをうまく映画に取り込んでいる。またコリーヌ・セロー監督の女性ならではの視点が効いている。
 ところで、エレーヌはどうしてノエミという存在にここまで心ひかれたのでしょうか。


5-0_201605101301238d4.jpg原題:Chaos
監督・脚本:コリーヌ・セロー|フランス|2001年|112分|
撮影:ジャン=フランソワ・ロバン
出演:カトリーヌ・フロ(エレーヌ)|ヴァンサン・ランドン(その夫・ポール)|ラシダ・ブラクニ(ノエミ)|リーヌ・ルノー(ポールの母親・マミー)|オレリアン・ウィイク(エレーヌの子・ファブリス)|ヴォイチェフ・プショニャック(パリ)|イバン・フラネク(トゥキ)|ほか





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