映画 「ママと娼婦」  フランス映画  監督:ジャン・ユスターシュ

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 ひとりの男と二人の女のラブストーリー。舞台は1973年、パリ。

1-0_2016061314294824b.png 20歳代半ばくらいの男・アレクサンドル(ジャン=ピエール・レオ)は、年上の女・マリー(ベルナデット・ラフォン)の部屋に居候している。
 マリーはブティックで働いている。自分の店のようだ。一方、アレクサンドルは、仕事を待たず金銭的にも精神的にもマリーの世話になっている様子。

 セリフから想像するに、アレクサンドルはたぶん二十歳過ぎくらいの頃に、パリ五月革命(1968年)の影響を、カウンターカルチャーとして、もろに受けたようだ。しかし、それから5年経った1973年の現在、パリでは一時の高揚感は霧散していた。

 だからだろう、アレクサンドルはこの先に希望を見いだせず内向きで無気力な毎日を過ごしている。また、現実の資本主義社会にコミットして企業に勤め生活の糧を得る、いわば普通の生活スタイルに対して、彼はある種の嫌悪感を持っていた。それは、カウンターカルチャーに心酔した男の現実逃避だ。
 かたや、マリーはすでに社会人になった後に五月革命を経験し何らかの影響はあったにせよ現在、ブティックという現実の生活手段をしっかりと得ている。(登場人物の世代を日本風に置き換えれば、アレクサンドルは70年安保世代、マリーは30歳過ぎであれば60年安保の世代だ。)

 ある日、アレクサンドルはジルベルト(元彼女)に会いに行った。
 アレクサンドルとジルベルト(イザベル・ヴェンガルテン)は、多分、1968年ごろ同棲していたのだろう。彼女の妊娠・中絶を機に、アレクサンドルは彼女の元を去っていた。だが、この頃、アレクサンドルは焼け木杭に火がついたらしい。ジルベルトと結婚したい。しかし、大学に職を持ち自立しているジルベルトは、元彼に優しく振る舞いながらも拒否。ジルベルトは近く医師と結婚するのだ。

2-2_20160613143204996.png そんな喪失感の折、アレクサンドルはヴェロニカ(フランソワーズ・ルブラン)という少々猫背の女に出会う。ヴェロニカは25歳、仕事は麻酔士で病院の女子寮に住んでいる。本人が言うに、もぐりの麻酔士なので薄給らしい。これまで多くの男と寝てきたと言う。ヴェロニカはパリの街を浮遊してきた。あらかじめ諦めを背負った女のように見える。
 ふたりの出会いは愛へと発展する。ヴェロニカは彼の欠点を見据えながらも、初めて愛せる男と出会えたと言う。

3-0_2016061314391056d.png 三角関係が始まる。アレクサンドルはマリーの留守中に、ヴェロニカを部屋に引き入れた。これを機に、アレクサンドルとマリーとヴェロニカはマリーの部屋で酒を呑み、三人が同じベッドに横たわり、さらにはマリーの前でアレクサンドルとヴェロニカはセックスするまでになる。マリーは嫉妬を抑えて黙り込む。ヴェロニカは二人の前で愛について告白する。曰く、愛とは好きな男と結婚し子供を産むこと。
 ヴェロニカはアレクサンドルの子を宿していた。アレクサンドルはヴェロニカに結婚してくれと言いつつも、表情は歪む。
 映画はアレクサンドルという男を追い詰める。

 
 この映画、220分の長尺。セリフには堅苦しい会話もあるが、長尺を感じずに意外とすんなり観てしまえる。
 ヴェロニカは、ウィスキーをコカコーラで割る。アレクサンドルよりも新しいカルチャーの人を表わしているんだろう。
 ちなみに、フランスの1967年のドキュメンタリー映画に「想い出のサンジェルマン」(ジャック・バラティエ監督)がある。この映画の中で当時の音楽がよく流れる。リズム&ブルースや、これからロックになろうとするエレキサウンドだ。
 これに比べて1973年の 「ママと娼婦」の中で登場人物が聴くレコードはクラシックであったりシャンソンであったりと、音楽が古典的。暗に保守性を匂わせているのだろうか。
 総じて監督は、パリ五月革命や反戦機運やカウンターカルチャーについて否定的なシグナルを出しているのだろうか。

 どうでもいいことだが、マリーのブティックで、試着室の女性客が胸をはだけるシーンがあるが、「想い出のサンジェルマン」にも酷似のシーンがあった。

 パリ五月革命とは・・・ウィキぺディア:https://ja.wikipedia.org/wiki/五月革命(フランス)
 

オリジナル・タイトル:La Maman et la putain
英語タイトル:THE MOTHER AND THE WHORE
監督・脚本:ジャン・ユスターシュ(1938 - 1981)|フランス|1973年|220分|
撮影:ピエール・ロム
出演:マリー(ベルナデット・ラフォン)|アレクサンドル(ジャン=ピエール・レオ)|ヴェロニカ(フランソワーズ・ルブラン)|ジルベルト(イザベル・ヴェンガルテン)|

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