映画 「ロマンス・ロード」  監督:むらまつしんご

上

 ひとりの男を同時に愛してしまった、ごく普通の女の子二人のその後を、コメディタッチで描く物語。 見慣れぬタイトルなのでレンタルしたが、残念な映画でした。

 ふたりはともに彼に見切りをつけ、やがて友人となる。
 失意のふたりは旅先で、新作を書けずに悩んでいる(人気の)恋愛小説家と出会い親しくなった。その小説家から「実は自分の恋愛経験は乏しいのです」と聞いたふたりは、彼と一対一で模擬デートを繰り返して恋愛指南をし執筆協力をする。これを元に小説家は、このふたりと自分自身を新作の登場人物として小説に仕上げようとする。そのうち、三人に恋愛感情が・・・。それも小説に織り込んで行く小説家。そして、ラストは意外な展開。またもや、同時に失恋するふたり。

 話のアイデアは、可笑しくて面白い。そして脚本も、まあいいとするなら、その先がいけない。 脚本はあくまで紙の上の世界、その先は俳優の仕事であり、同時に映画監督の仕事なのだが・・・。
 男とのめぐりあわせが良くない二人が、恋敵の関係から友人関係に変化し、著名小説家に恋愛指南を施し、その過程で三角関係が生まれ、結果、ふたり共また失恋するという、奇妙で微妙ないきさつを巧みに表現するには、俳優と監督にそれ相応の技量が要求される。

 さらにこの映画では、俳優が演ずる役に、観客が自分自身か、あるいは身の回りにいる人を重ね合わせて、そうかも、そうよね、と感じさせようとしている。舞台の上にいる人、美男美女のスターが演じるのではなく、観客の普通の日常感覚を、観客と同じ目線で語る身近な映画にしようとしている。
 観客が身近に感じられる人物を作るには、どこにもいるような人物を作ることになる。見た目も特別じゃなく、台詞が日常の自然なさまになる俳優。だからといって、普通を求めて普通っぽい俳優を起用すれば、普通の人を描けるというものでもない。自然体のさまが欲しくて、ど素人を主役に起用する方法もあるが、これはそれなりの工夫が必要だ。

 「普通」を映画にするのは、思いのほか、難しい。
 優れた俳優は、例えスターであっても、普通の人の日常感覚を体現できるものだ。ただし、予算があればの話。
 映画を作るのは難しい。


 監督・脚本:むらまつしんご|2012年|115分|
 出演:中村 はるな、太田 順子、土屋 裕樹ほか

 例えば、川で取った魚は水槽の中じゃ冴えない、水槽は魚にとって普通じゃないからだ。いきいきした魚を撮るには、カメラが川 (セットじゃなくロケ地) に入って行かねばならない。
 例えば、不幸な主人公の「普通」さを求めた、大島渚の「少年」、羽仁進の「不良少年」、先日記事にした洋画 「自由はパラダイス」などは、みな俳優志望でもない素人を主役に据えているが、それぞれ念入りに工夫している。

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