映画 「ある子供」   監督:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ

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ソニアとブリュノ。彼女は言う 「これからは、ちゃんと働いてよ」


 主人公のブリュノは20歳、路上生活者だ。
 彼がママと呼ぶ人が映画に一瞬出て来るが、ママには、ブリュノの知らぬ男がいる。
 ブリュノが母と別居したのは、彼が幾つの時なのか映画は語らない。ただ、余程のことがない限り、この母子は他人のようだ。孤児院育ちかもしれない。
 ブリュノの寝泊まりは、住み慣れた川岸の小屋か、ソニアという彼女の部屋。持ち物といえる物は着替えの衣服くらいで、それを川岸の物陰に入れている。所持金はいつもほとんど無い。

1‐0 ブリュノは数人の少年を手下にしている。その1人を原チャリの後ろに乗せ、ブリュノは街を流す。ブリュノが目星を付けた歩行者に後ろから近づくと、少年は飛び降り、走りざまに歩行者のカバンを奪い、急いで原チャリに飛び乗り、走り去る。ひったくりの常習犯。
 奪い取った金から、少年に僅かな分け前を、そして原チャリの持ち主に借り代を支払う。何ごとも、小銭の現金決済。
 多分、ブリュノも、この手下の少年たちのように、10代からこんな生活を送って来たのだろう。これが彼の生きて来た世界。世渡り上手だと思っているかもしれない。職に就いたことはなさそうだ。

 そんな彼がソニアに出会って恋をした。やがて妊娠、そして出産。
 だが、ブリュノはソニアがいる病院に顔を出さなかった。退院後、ブリュノは中古のベビーカーを買った。車を借りて三人でドライブもした。
2‐0 しかし、ブリュノはソニアの目を盗んで、赤ちゃんを地下組織に売り、まとまった金を手にした。
 彼は、赤ん坊と、かっぱらったブツとの違いを理解しない。
 彼の人生これまでに、家庭や新しい命、育児といった親子の愛や慈しみに接する機会がなかったのだろう。そんな心の動きが欠落していると言ったほうがよさそうだ。
 良心は社会的に形成されるというが、ブリュノはそういう社会性の外で生まれ育ってきたストリートチルドレンであった。

 とは言え、ソニアを愛する心はある。赤ん坊を売ったことを知ったソニアの激しい怒りを知ったブリュノは、彼女とのヨリを戻したいがために、組織の男に金を返し赤ん坊を取り戻す。

 18歳のソニアも、家庭に恵まれずに育ったのかもしれない。これまでどうやって暮らしてきたのか分からないが、いまは部屋を借りて一人住まいしている。(そのくらいの収入はあるようだ。)
 しかし、母となった今、ソニアは変わった。ブリュノと恋人同士という、浮ついた感情は退いて行く。「これからは、ちゃんと働いてよ。」 ブリュノとしっかりした家庭を持とうとしている。だが、ブリュノにそういうことが分かってない。

 映画はいくつかのシーンで、ブリュノの幼児性を表わしている。川岸でひとり、川面を棒でかき回し続けるシーン。靴底に泥を着けて、壁に向かってジャンプし、より高い位置の壁面に足跡を付けようと繰り返すシーン。

 組織的な幼児誘拐がベルギーでもあるらしい。ブリュノは、取り調べの刑事から、(自分の子を売るより)「誘拐の方がまだマシだ」と言われる。ブリュノは子を売る時、金持ちの家にもらわれて行けばいいと言っているが、相手は組織的な何者かである。もし、子供を取り戻さなかったならば、ふたりでジミーと名付けた赤ん坊の行く先は、闇であった。

 う~ん、イマイチな作品。ブリュノとソニアの人物像が描き切れていなくて平板だ。よって、わが子を売る、というただそのことだけが、やけに印象に残ってしまう。
 同監督の作品 「ロゼッタ」 の女の子・ロゼッタには一種の迫力があった。また、「イゴールの約束」 の少年・イゴールには、少年期ならではの揺らぎが表現できていた。(下記の【 ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督の映画 】から記事をご覧ください。) 



オリジナル・タイトル:L' Enfant
監督・脚本:ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ|ベルギー、フランス|2005年|95分|
撮影:アラン・マルコァン|
出演:ジェレミー・レニエ(ブリュノ)|デボラ・フランソワ(ソニア)|ジェレミー・スガール(スティーヴ)|ファブリツィオ・ロンジョーネ(若いチンピラ)|オリヴィエ・グルメ(私服の刑事)|ステファーヌ・ビソ(盗品を買う女)|ミレーユ・バイ(ブリュノの母)|ほか
 
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ロゼッタ
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イゴールの約束
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ある子供
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サンドラの週末


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