映画 「パラダイスビュー」   監督:高嶺剛

上

 沖縄返還(1972年)直前の、村人たちを描く群像劇。

1-0_20161012130855481.png 群像劇とはいっても、はっきりしたストーリーはない。取っ散らかした、たくさんのエピソードを、映画は気ままに映し出す。

 レイシュー(小林薫)は米軍の仕事をしていたが、クビになった。(ストライキに加担し過ぎたようだ)
 小遣い稼ぎにハブ捕りをしているが、ほかに何することもないボンヤリした毎日だ。アリの背に背番号を張り付けたりしている。祖母と母親(平良とみ)それに妹のビンダレー(職業:沖縄民謡歌手)の四人暮らし。
 レイシューは独身だが、長年連れ添っている愛人ジュール(りりィ)がいる。レイシューは米軍払下げの軍用トラックを使って、チョイ悪な仲間たちと海上トラックの商売を始めようとしている。妹のビンダレーは、サムライ姿の男(巡業の一座か村芝居の座員か)に、しつこく付きまとわれている。
 映画後半でレイシューの祖母は、米軍の軍事演習の流れ弾が当たって死亡する。

 ヤマトンチュ(本土の人)のイトー(細野晴臣)は、植物学者らしい。沖縄に生息する未知の不思議な植物の採集と研究をしている。
 彼は沖縄の地に根付くためにウチナーンチュの女性と結婚したいと思っていた。そしてナビー(小池玉緒)と知り合った。
 ナビーの母親は、本土の男との結婚に躊躇していたが、本土復帰を前にして、「いずれ日本復帰するから日本人と結婚しなさい」と言って許すつもりであった。

 しかし、ナビーが毛遊び(もうあしび)に参加して、妊娠したことが発覚した。ナビーの母親が問い詰めたところ、相手はレイシューらしい。これを聞いたナビーの2人の兄たちは困った。妹の幸せを壊した男レイシューは兄たちの親友でもあった。

 困った母親は、ある盲目の男を訪ね相談をする。
 この男は村人からフィリピナースと呼ばれている。戦前、フィリピンへ出稼ぎに行って、彼の地で女と一緒になり子供を設けていたが火事で子を亡くした。そして単身、村に帰って来た男。ナビーの母親とフィリピナースは、フィリピンへ行く前には相思相愛の仲だった。
 ナビーの2人の兄は、ロックバンドのメンバーで、近くハノイへ行く。米軍の基地を慰問で巡るツアーに参加するらしい。(まだベトナム戦争のさ中だ)



3-0_20161012132548b82.png チルー(戸川純)は、村の家々の家事手伝いをしている女。母親は村で飯屋(呑み屋)を営んでいる。チルーは、レイシューに思いを寄せているが、母親はこれをよく思っていない。またチルーは、レイシューとジュールのことが気がかりだ。
 ある日、チルーは夢を見た。レイシューのマブイ(魂)が、彼の体を離れ落ち、彼のそのマブイを犬が食ってしまう夢。自分のマブイを失くした者は、神隠しに会うと昔から言われている。チルーの夢は神秘的予言であった。

 レイシューは神隠しに会い、森の中をさ迷う。
 映画は、沖縄土着の不思議も映し出す。マブイを落とす、虹豚、淫豚草、神隠しに会う、土を食べてその呪力を解くなど、村人の日常に隣接するあちらの世界を描きます。村人のひとりアガダニースーに至っては、森の中で神と親しくしている。
 レイシューが神隠しに会うきっかけは、少年院を脱走した男達による護送車襲撃事件だった。レイシューは、祖母の葬儀の夜、村人と取っ組み合いをし、警察に取り押さえられ、護送車に乗っていたのだ。そして、彼は闇夜の中、脱走し、その後神隠しに会った。

 1972年の沖縄返還が近づくにつれ、沖縄独立の気運が反復帰運動として盛り上がりを見せる頃だった。日本政府は神経をとがらせていた。だから、その余波で、レイシューは村人との些細なケンカで、警察に連行されたのだ。(映画は、村人の一部がこの反復帰運動に加わる様子も描いている。)

 ラスト近く。虹豚に腹部を食われたレイシューは、村はずれの道端で倒れている。たまたま、通りかかったナビーの兄たちらに発見されるが、もう手遅れだった。
 青空の下、レイシューは、一本道をひとり、よろよろと歩いて行くのであった。

 毛遊び(もうあしび)とは、かつて沖縄で広く行われていた慣習。主に夕刻から深夜にかけて、若い男女が野原や海辺に集って飲食を共にし、歌舞を中心として交流した集会をいう。映画は、このほかにも、種々の沖縄の風習を話に織り込んでいます。

4‐0 映画には、沖縄民謡歌手の嘉手苅林昌 (鍋修理屋)や照屋林助 (陽気な歯医者)らが出演しています。
 映画音楽の担当は、元はっぴいえんど元YMOの細野晴臣。このころの細野晴臣は、ワールドミュージック(沖縄音楽含む)とコンピュータミュージックが交差する時代を築いたひとり。
 ちなみに、照屋林助演ずる歯医者は、照屋林助の師匠・小那覇 舞天(おなは ぶーてん、1897-1969)をなぞっている。小那覇は、沖縄の演劇人、かつ歯科医師。沖縄のチャップリンと呼ばれた人。



監督・脚本・美術:高嶺剛|1985年|113分|
撮影:東司丘宇天|音楽:細野晴臣|
出演:ゴヤ・レイシュー(小林薫)|村の女・チルー(戸川純)|レイシューの祖母ゴヤ・パーパー(大宣味静子)|レイシューの母親ゴヤ・カマド(平良とみ)|レイシューの妹で歌手のゴヤ・ビンダレー(谷山洋子)|イトー(細野晴臣)|イトーと結ばれるはずだったタカシップ・ナビー(小池玉緒)|ナビーの兄タカシップ・ミッチャー(コンディション・グリーン・エディ)|ナビーの兄タカシップ・マチュー(コンディション・グリーン・カッチャン)|ナビーの母親タカシップ・モーシー(関好子)|チルーの母カナー(北島角子)|チルーの義父タルガニ(島正太郎)|チョッチョイ(辺土名茶美)|レイシューの愛人ジュール(りりィ)|リョースケ(平良進)|ナビーの母親の昔の恋人フィリピナース(北村三郎)|サムライ姿の男(宮里栄弘)|助役(森田豊一)|アガダニースー(グレート宇野)|鍋修理屋(嘉手苅林昌 1920-1999)|歯医者(照屋林助 1929-2005)|村長(大宣味小太郎)|ほか



沖縄の高嶺剛監督の映画です。
ぜひ、観て欲しい映画です。
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