映画「さくらん」   監督:蜷川実花  脚本:タナダユキ

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 この映画は安野モヨコの漫画をもとにし、(だから基本、女性向けで)、そして、やたら極彩色な写真家・蜷川実花と、「モル」「百万円と苦虫女」の映画監督・脚本家のタナダユキと、椎名林檎との、3人による共作の映画。
 江戸時代や時代劇や遊郭モノが好きな人は敬遠するかもしれないけれど、たまにはこういう映画もそれなりに悪くない。

1-0_201701251405554b3.jpg これでもかという濃厚な色使いで埋め尽くされる映像は、結果、その色彩に酔う感覚で心地良く思う人や、外国人を狙っているんだろう。
 でも映像を観てると、室内インテリアや着物が、残念ながら安っぽい。いま出来上がりました的で、衣装や大道具に、まだ味(色味)がしみ込んでない感じがする。色に深みが無く、なぜか色紙を思い浮かべてしまう。
 色彩じゃない方の「色」は、女優3人の白い背中を拝めるくらい。そもそも、この映画に粘っこい男性目線はない。

 男性と言えば、店の使用人・倉之助(椎名桔平)。倉之助は、吉原遊廓の遊女で主人公の日暮(土屋アンナ)の相手役。
 この倉之助はイケメンで、イケメンの役どころだからこその、いつもの宿命で、なにやら「場」から浮いているのが可笑しい。
 でも、だからこそ、遊郭の中庭にいる倉之助は、店の2階にいる日暮と、「ロミオとジュリエット」ができるし、ラストでは満開の桜の中を、ふたりして走れるのである。こういうところが、倉之助が映える活躍の場なのだ。

 さて主役の土屋アンナは女優として「見せる」が、あの一本調子の演技は変わらない。
 あとふたりの花魁、高尾(木村佳乃)、粧ひ(菅野美穂)も、極彩色に埋もれて、演技はかすれ気味。
 ま、しかし、時代劇に挑戦するのは良い。

 この映画を作った人は、製作にあたって参考に、川島雄三の映画 「幕末太陽傳」を観てるだろう。
 また、遊郭を扱った破天荒なインディーズ映画、林海象の「音曲の乱」は、もし予算がたっぷりあったなら、「さくらん」に近い極彩色を得たかもしれない。
 男性目線が多い中、周防正行の映画「舞妓はレディ」は、遊郭じゃなく祇園だが、かわいい舞妓目線の映画だった。
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監督:蜷川実花|2007年|111分|
原作:安野モヨコ|脚本:タナダユキ|撮影:石坂拓郎|音楽:椎名林檎|
出演:きよ葉/日暮(土屋アンナ)|倉之助(椎名桔平)|惣次郎(成宮寛貴)|高尾(木村佳乃)|粧ひ(菅野美穂)|光信(永瀬正敏)|若菊(美波)|大工(山本浩司)|坂口(遠藤憲一)|幼いきよ葉(小池彩夢)|しげじ(山口愛)|お蘭(小泉今日子)|楼主(石橋蓮司)|女将(夏木マリ)|ご隠居(四代目市川左團次)|清次(安藤政信)|桃花(蜷川みほ)|花屋(小栗旬)|

タナダユキ監督の映画
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お父さんと伊藤さん
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百万円と苦虫女
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モル
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マイ・ブロークン・マリコ
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さくらん(脚本担当)


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