映画「精神」  監督:想田和弘

2008年|ドキュメンタリー|原題:MENTAL|135分

庭01精神科専門の診療所が舞台の、患者たちと医師のドキュメンタリーである。ただしその様子は一般の診療所や病院とは大きく違う。私たちは医師(医療関係者)です、あなた達は患者ですと線引きがある、だから院内の部屋がそういう造りになっているし服装もそう、が普通。ところがこの診療所は昭和に作られた民家である、待合室は座敷2部屋をあてている、一日中ここにいて寝そべっていても良いことになっている。どの部屋でも喫煙オーケー。お茶もコタツもある。作業所も敷地の離れにある。





先生医師はていねいに、実にていねいに患者に接する。患者は医師に出会って少し救われた気持ちを抱く。そして通う。通っては医師に自分の気持ちを伝える。そして気が向けば、診療所の庭の椅子から大きな庭木を見上げたり、待合室でじーっと一日を過ごす。
医療事務の方々以外はボランティアかアルバイトのようだ。医師ご本人も年金からの収入があるのでその分を削っているらしい。見かけはつましいが、精神医療の現場からその本質を見極めた診療所だ。流行のメンタル・クリニックや大手精神病院は商業主義であったり浅い見識に基づいている気がする。




庭2患者たちが撮影に協力参加しているのは驚きだ。それにとても自然体だ。監督の話では事前に話をし了解を得た患者はわずかだったそうです。また了解を得たのちのコミュニケーションには、たぶん相当な時間を要したことだろう。患者とカメラは、同じ高さの目線で距離感もなく成り立っている映画だ。撮影に協力した患者3人の感想はこうだ。「日本にこんな優れた診療所があることを精神病で苦しんでいる他の方々にも伝えたい」 「我々のような人間と健常者の間には高い垣根がある、精神病で苦しんでいる我々のような存在を認知し理解して欲しい」 「暴力を振るう夫から子供と共に家出し今に至る。この映画に出演すれば自分の所在が夫に知れ追いかけてくるかと心配だったが、もう自分に失うものは無い、そう思い至ると怖いものは無いと思えてきたので、協力した」
公式サイトによると、鳥取県自殺対策フォーラムにて上映したそうだ。映画館以外で上映されるドキュメンタリー映画は強い意志を持つ映画だ。
ぜひ、ご覧いただきたい!
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精神障害の方々が世の中から理解されていないと同時に、精神科はどんな医療をするのか、一般には知られていない。注射や手術をするわけでもなく会話だけ?だから、この診療所を宗教的と見る向きもあるだろう。
以前このブログで書いた、中国のドキュメンタリー映画「胡同の精神病院」2002年 監督:シー・ルンチウ  
「精神」で登場する患者は外来だから診療所内で自由に行動し、もちろん日ごろは市中で生活しているが、「胡同の精神病院」に出てくるのは病院の入院患者。症状は重いし発作時の行動は激しい。病室に鍵は無いが訓練室には鍵がかけられる。もちろん門から外には出られない。こういった患者は精神障害として一般的には分かりやすいのかもしれない。しかし「精神」に登場する方々と「胡同の精神病院」に登場する方々とどっちがどっちなどとは決して言えるものではない。どちらも苦しいのである。精神障害という一言ではくくれないくらい幅が広い。医療者側ももっと世の中に対して分かりやすく発言していくべきだと思う。想田監督には「精神‐2」を期待したい。


想田和弘 監督の映画
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精神
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Peace
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牡蠣工場


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