東京に暮す  キャサリン・サンソム著

東京IMG_0001英国外交官の夫の赴任に伴い、来日した著者キャサリン(1883-1981)が、昭和初期の東京の街や人々の暮らしをリアルに描いた、おだやかな日本滞在印象記。(1928年~1936年つまり昭和3年~11年まで滞在)

当時の日本人は、どんな風だったんだろうか? 現代人がタイムスリップして昭和3年に行けば、その見る眼は外人キャサリンと近いだろう。そう考えると面白い本です。昭和12年発行。
著者は、銀座や下町、バスや電車、百貨店や街の本屋などなど都内をくまなく見て回っている。そして片言の日本語で東京庶民に暖かく優しく接し、女性ならではの丁寧で細やかな視点で本書を書いている。エリート外人が見下したような視点は決してない。著者は英国人と日本人の共通点を見出し、基本的に親近感を持っている。また違いを感じる場合、日本人を非難するのではなく、時に日本人の気風に憧れに近いものを感じている。

<抜書き> 第8章 日本人の人生より
西洋人の人生の「攻め方」は見方によっては、落ち着きがない、あるいは元気が良すぎる、面白いあるいは疲れる、ということになりますが、日本人の性には合いません。「攻め方」という言葉自体、彼らと私たちの生き方の違いを見事に示しています。日本人には私たちにない落ち着きがあります。人生が彼らの中や傍を流れていきます。彼らはあせって人生を迎え入れたり、人生の舵を取るようなことはしません。流れが運んでくるものを受け取るだけです。流れてくるものが富や高い地位であっても、驚いたことに彼らは何気なく利用するだけです。その後も依然として地味な生活を好みますし、他の国民のように気取ることもないので、たとえ運が傾いたとしても私たちのようにショックを受けるこよはありません。高官や金持ちの質素な暮らしと、身分の低い者の暮らしは大して違いません。どちらも優雅で無欲です。・・・・

下の挿絵は著者の友人マージョリー西脇氏によるもの。多数掲載されていて本書の雰囲気を盛り上げている。
最後に大久保美春氏の流れるような翻訳が素晴らしいことを添えます。

<目次>
日本上陸|日本の食卓|日本人と労働|日本の伝統|百貨店にて|礼儀作法|樹木と庭師|日本人の人生|社交と娯楽|日本人と旅|日本人とイギリス人|日本アルプス行|日本の女性|
東京IMG_0005 東京IMG_0002
東京IMG_0003 東京IMG_0004
 
関連記事
やまなか
Posted byやまなか

Comments 0

There are no comments yet.

Leave a reply