映画「薔薇大名」 監督:池広一夫
2017年10月07日 公開

月太郎の婚約者・お小夜と、横恋慕のスリ師・お京。
だが、この男、月太郎じゃなく、実は奥州棚倉藩の若君・小笠原左馬之助であった。
★
時代劇です。陽気でおバカな喜劇話です。大名行列など冗長なシーンは早回しで観せますし、悲しいシーンも含め音楽はユーモラスなジャズ風。
でも、ストーリーは凝っています。
「薔薇大名」の「薔薇」の意は、若君の腕に薔薇のようなアザがあるからで、他意はない。
私は池広一夫というこの監督の映画が好きで、本作は監督の第一作目らしい。
1シーンだけの特別出演で市川雷蔵が突然出てくるが、ほかは主役も含め、一般的には余り知名度がない俳優ばかり。
でも今となっては、これがかえって新鮮でいい!

話は、ある藩の若君・左馬之助と、曲芸一座の芸人・月太郎の、その姿かたちがソックリであったことから始まる。
そして、月太郎に恋する、同じ一座の芸人娘・お小夜と、月太郎に横恋慕のスリ稼業の女、この2人の女が話に花を添える。
さらには、若君/月太郎、この瓜二つの2人の立場が入れ替わった事が、つまり偽・若君が、結局は、若君の藩の内紛を解決することになるという、藩をあげての大騒動に発展する。
では、若君と町人の月太郎がなぜ入れ替わったのか?

密かに江戸市中に滞在する小笠原左馬之助(小林勝彦)は、実は奥州棚倉藩(福島県)の若君。
その棚倉藩では、城主の跡目争いという陰湿な内紛が起きていた。
現城主(左馬之助の父親)は、悪者家老の指図で長期間に渡り藩医から毒を盛られ衰弱していた。
家老は城主と若君を暗殺し、家老派の新たな城主をうちたてようと企んでいるのだ。
これに気づいた左馬之助はひとり江戸に出て急ぎ毒薬の勉強をし、藩医が薬と称する毒薬の証拠を握ろうとしていた。
しかし、左馬之助が国元から突然姿を消した事とそのわけは極秘であり、父親はじめ藩の誰もが知らぬことであった。
だが、家老は若君が江戸にいることを嗅ぎつけ、暗殺団を江戸へ送り、若君は切られて大川に落ちた。

一方、そんなことなど知る由もない城主派の侍たちも、若君を探しに江戸に来ていた。
城主の寿命があとわずか、一刻も早く若君を見つけ出し、国元へ帰ってもらわないと、家老派の思うがままになってしまう。わが藩、存亡の危機。
そんなある日の江戸市中、城主派の侍が月太郎(小林勝彦)を見かける、あ!若君だ! いや、人違いだ!俺は月太郎だ!
結局、月太郎は城主派に拘束されるが、彼の腕に若君の証拠の「薔薇」のアザがないことが分かり、今度は若君に化けて身代わりで国元へ行ってくれと懇願される。
このお礼は100両という多額で、月太郎は婚約者の病父の薬代を思い、大役を引き受け、大名駕籠に乗せられて、侍たちと国元の奥州棚倉藩(福島県)へ。
さらに一方、そんなことなど知る由もない、月太郎の婚約者・お小夜(浦路洋子)。
突如姿を消した月太郎から奥州棚倉へ行くとだけ知らされたお小夜は、一座の座長を説き伏せ、一座の面々とともに棚倉へ巡業の旅に出る手はずとなった。
そんな時に、月太郎がお小夜の前に現れた。ずぶ濡れで傷を負っていた。どうしたの!
優しく介抱された左馬之助だが、知らぬ町人に自分が誰かも言えず、なりゆきで月太郎を演ずることとなる。
お小夜は左馬之助を月太郎だと疑いすらしない。(左馬之助は侍言葉で話すんだけどね) お小夜は「いつまで芝居の真似をしてるのよ」てな感じ。(喜劇ですから)

しかし、一座の棚倉への巡業スケジュールはもう変更できず、お小夜と左馬之助と一座全員は旅に出た。
旅の途中、左馬之助は、本陣(大名専用の宿)の準備の様子や、街道を駆け抜ける早馬から、胸騒ぎを覚える。
その夜、旅籠の一室で左馬之助はお小夜に抱いてと迫られ、左馬之助はおおいに戸惑う。
そこへ、市川雷蔵扮する町人が「いちゃいちゃする声がうるせぇ、宿は貸し切りじゃねぇんだ」と、部屋に飛び込んで来る。
そして市川雷蔵は左馬之助に向かって、本心をこの女に打ち明けろと言い残して去る。(無理やりの筋書きで可笑しい)
そこでついに左馬之助はお小夜に、自分は月太郎じゃない、それに月太郎が藩騒動に巻き込まれているらしく、危険だと告げる。
これを聞いて心配するお小夜に、「この小笠原左馬之助が彼を救える」と言う。お小夜はお願いいたしますと頭を下げた。
さて、ラスト近く。
月太郎こと偽若君と城主派一行が、城内に入る。
また、曲芸一座は城主の招きと偽って、これも城内へ。(若君の計らいだろう)
そのうち、偽若君の腕にアザがないことが家老派にばれて一大事。だがそこへ一座が現れる。

そおして、時代劇のお約束事、家老一派と城主派のチャンチャンバラバラ。
若君の武道達人の技、月太郎とお小夜らの曲芸の技が敵をやっつけます。
加えて、一座の出し物、中に入った人を消す魔法の箪笥や、一座巡業に付いて来た、月太郎に横恋慕のスリ師・お京が大活躍します。めでたしめでたし。
監督:池広一夫(池廣一夫)|1960年|68分|
原作:陣出達朗|脚色:淀川新八|撮影:本田平三|
出演:月太郎、小笠原左馬之助(小林勝彦)|月太郎の婚約者・お小夜(浦路洋子)|スリ稼業の女・お京(宮川和子)|ほか多数
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