転がる香港に苔は生えない 星野博美 著 2000年発行
2011年01月04日 公開

ドボンな雰囲気の日本は、本当は何もしたくない、海外からも時代からも取り残されていく、と諦めているふしがある、そういう安定期なのだ。
この本を読めば、香港の、普通の人々の生きざまから勇気をもらえる。
ドボンな雰囲気に安住している自分は、
アンタ何やってんの!と背中を押される感じ。
そして著者の、人間への好奇心・探究心の強さに感心する。
香港の奥深くにどんどん入っていく。
だからこの本なのだ。
インタビューしました的な本じゃありません。
元気でます。
<引用>
香港という街は、人間が生きるのに楽な街ではない。将来どれだけの自由が保証されるかわからない不安の中で、誰もが自分の居場所を確保しようとしのぎを削りあっている。
すべてのものは変わってゆく。予期しない変化を嘆いたところでどうしようもない。ただその中で自分が生き残ることだけを考えて前に進む。我々にしてみれば、それほどの緊張感を持続させながら生きるのは並大抵のことではないが、香港ではこれが、朝起きたら顔を洗って歯を磨くと同じくらいの、日常の大前提なのである。
私は、香港の人が本当に安心して眠れる夜はないと思っている。ずっと勝ち続けられる博打などないし、負け続ける博打もない。だからこそ次にチャンスを目指して生き続けていく。安心して眠ることはできないが、彼らは浅い眠りの中で明日を夢見ているのである。
そんな彼らのしなやかな生きざまを見ていると、次から次へと押し寄せる変化を前にただおろおろするばかりで、時には攻撃的に硬直していく我々は、やはり千代に八千代にさざれ石の巌となりて苔のむすまで変わらない安定を望む人々なのだと思った。・・・<引用おわり>
大図解 九龍城 (1997年発行)


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