映画「天の茶助」 主演:松山ケンイチ  監督:SABU

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 あなたの現在過去そのすべては、天界の、大勢いる人生脚本家のひとりが執筆した脚本に書かれている。
 あなた担当のその人生脚本家は、今このときも書き続けている。あなたのすぐの未来を、先の未来を。

0_201712051850155e3.jpg このユニークなドラマ設定がなかなか良い。
 挿入される有名映画のパロディ(下記)や、コミカルなシーンもいい。アクションシーンも悪くない。
 また、時系列の中で、その間の推移を語る説明シーン、これをヒョイと省略ジャンプする場面切り返しに、スピード感があって荒削りで斬新だ。
 沖縄の伝統芸能エイサーの踊り、あの衣装、太鼓の響きの中に、天界から降りた主人公・茶助らを放り込んだのもGood。
 松山ケンイチを選んだキャスティングもいい、こんなお話には、たぶん彼が一番最適だ。
 白塗り顔の、狂気警官の鋭い笑いはスクリーンを突きぬけて行く。テント芝居の役者のよう。

 だが、良いのは、ここまで。
 情に訴えるシーンが、とても冗長。ゆったり見せて堪能してもらおうとの顧客サービスが見え見えで、観ていてしんどい。
 そのほか、各所に、分かりやすさの配慮が散りばめられていて、ここまでしなきゃいけないんだ。
 茶助の念力で不治の病人を直すシーンで、茶助の念力疲れを、目の下のクマのメイクで表現させるところは、遊びかな。
 とにかく、良い/良くないが、マダラ模様を呈して展開して行く。
 売れなきゃが第一なんだろうけれども、プロデューサー・市山尚三のお考えか。着想が良いだけに、踏ん張ればもっといい作品になったのに、残念。

 ストーリーはこんな感じ。
 天界でお茶くみをしている茶助(松山ケンイチ)は、ある人生脚本家が担当する脚本中の女性ユリ(大野いと)に惚れていた。
 しかし、脚本を盗み見するとユリは、この先、交通事故死するようだ。
 そうなるのは、他の人生脚本家が書いている脚本の中で、ある男が自暴自棄になって車を暴走させるからである。人生脚本家は他の脚本家が書く内容を曲げられない。

 ユリの人生を書く脚本家は茶助に言った。「ユリを救えるのはお前だけだ。下界へ行け。私は脚本でお前を支援するから。」
 このあとは観てのお楽しみ、かな。

監督・原作・脚本:SABU|2015年|105分|
プロデューサー:市山尚三|撮影:相馬大輔|
出演:早乙女茶助(松山ケンイチ)|新城ユリ(大野いと)|骨董店の種田潤一(大杉漣)|ラーメン屋の彦村ジョー(伊勢谷友介)|チャーリー・ポン(田口浩正)|早乙女茶子(玉城ティナ)|白塗警官(オラキヲ)|康夫(今野浩喜)|根岸一輝(RYO)|加賀謙一(DJ KEIN)|ヒットマン(山田親太朗)|黒竜会:黒木(寺島進)|ほか

この映画に出て来るあのシーンは、あの映画。
 映画「タイタニック」や「ゴースト/ニューヨークの幻」のほかに、ウォン・カーウァイの香港映画「恋する惑星」のサングラス女性や、アニメ「有頂天家族」に出くるような商店街アーケード屋根上シーンもあった。
 また、ラーメン屋の彦村(伊勢谷友介)が女優の女性と出会い頭にぶつかるシーンは、「ノッティングヒルの恋人」ですね。
 そのほかに私が連想した映画。
 天界から降りてきた男の背に羽があるのはヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン・天使の詩」、狂気じみた白塗り顔の男は、岩井俊二監督の「スワロウテイル」に出てくる男を思い出す。
 アーケード街で格闘する強い男は、真利子哲也監督の「ディストラクション・ベイビーズ」をイメージした。天界の人生脚本家たちの白装束は韓国映画の「祝祭」を連想した。
 それと病気を治す茶助の不思議な念力は「ブラザー・フロム・アナザー・プラネット」あたりかな。
 (画像をクリックしてお読みください)
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「恋する惑星」
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「ベルリン・天使の詩」
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「スワロウテイル」
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「ディストラクション・ベイビーズ」
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「祝祭」


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ポストマン・ブルース
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天の茶助


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