映画「ハーブ&ドロシー」 監督:佐々木芽生 ドキュメンタリー映画 

herb2.gifいい映画だ。創り手が色を付けないドキュメンタリー。
一見、無味無臭、創り手を感じさせない。事実(素材)をありのままに効果的に伝える(料理する)、これが難しい。・・・創り手は自己主張したがるもの。
さてさて、なにしろ、このご夫婦が素晴らしい!!に尽きる。感激しました。
登場するアーティストからの発言。「アート界が彼らの生息地」「美術コレクターというより、キュレーター」「制作中のアーティストと同じ視点」
遠い親戚に洋画家がいる。永年、日動画廊にお世話になっている。若い頃から海外渡航などいろいろな面で便宜を図ってもらっていた。パトロンなのだ。その代わり、描いた絵は隠さず、みなよこせ、だ。(時折、アトリエに監視に来る)この映画にも同業がひとり登場している。彼曰く「ハーブ&ドロシーが、画家から直接買っていくのを苦々しく思っていた」と。それほどに、ご夫婦はたくさんのアーティストに信頼され、ニューヨークの現代アート界に根を下ろしていた。
右の絵を描いた画家が言っている「ハーブは鋭い嗅覚で直感的に、これはという作品を見つけ出し、食い入るように見つめる、ドロシーはそれを客観的に見ながら広い視野で評価する」
ハーブはマンハッタン生まれ。両親はロシアとポーランドからの移民。貧しい家庭で育つ。教師にくだらぬことを教えられることに反発して高校中退。マンハッタン街の中央郵便局に就職、勤務を続けながら大学に通い美術史を学ぶ。1980年に定年を迎え現在に至る。
ドロシーはニューヨーク州の外れの中流家庭に生まれる。父は文房具商。大学卒業後、1958年にニューヨークに出てきてブルックリン図書館に司書として勤務。定年を迎え現在に至る。
ふたりの出会いは1960年初めごろのダンスパーティ。新婚旅行はワシントンD.C.。この時「美術鑑賞好き」だということをハーブは初めてドロシーに告白、彼主導で美術館めぐりをし、ドロシーにとっては人生最初の美術研修だった。このときからお二人の、二人三脚美術の旅人生が始まった。
当時ハーブの郵便局勤務は夜勤で、郵便物の住所仕分け作業を夜中12時から朝8時までやる。日中はアトリエ周り、人生を200%生きている。
思うにこのご夫婦、ニューヨーク住まいという地の利を、一般人の300%満喫している。
1960年初め、ニューヨークに世界のアーティストが集まりだした時代、ご夫婦は時代にも恵まれた。
ローアー・マンハッタン、グリニッチ・ヴィレッジやソーホーを歩いて回ったのだろう。楽しかっただろうね。一種の狩猟だ。集めるのが楽しい、というより狩猟(発見)が楽しかったのだろうと思う。さらには、世の中で初めて、自分がその作品を評価する、その面白さ。
マンハッタンにある小さなアパートに、集めまくったコレクションはどうなったか?
結局、その一部をナショナル・ギャラリーに寄贈、その作品点数は1000点。残り50点は、全米各地の美術館50館に。
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 このお二人に、すごく共感、同感しまくり。
 見知らぬ他人にこんなに共感、同感することは、珍しい。
 なんか、いくらでも書き続けられるぞぃ。どうしよう!!

 私が以前書いた「観たい映画(ハーブ&ドロシー)」に映画の概要がありますので。




 ハーブ&ドロシー|監督 : 佐々木芽生|2008年|アメリカ|ドキュメンタリー映画|
 シアター イメージフォーラムにて|


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