映画「エスケイプ・フロム・トゥモロー」 監督:ランディ・ムーア
2018年05月06日 公開

妻子を連れてディズニーランドに来た男ジムの不幸な顛末。

さあ、これからディズニーランドへ!という時に、ジムの携帯が鳴った。(休暇中に会社から電話が来るのは嫌なものだ)
この電話で、働き盛りのジムは、勤め先の友人から(会社の決定だと前置きされて)突然の解雇を言い渡された。
だが、家族でこれから楽しい時を過ごそうという、この日、ジムはクビになったことを妻に言いそびれる。

加えて映画は、こんな時にも、妻子に対し「良きパパ」を演じようとするジムの(現実逃避との)格闘を表していく。
次いで、この不幸をトリガーにして、「良きパパ」の限界線にいるジムの目線を借りて、映画はディズニーランドという、「楽しい虚構」を実態ある世界に作り上げた、その仕組まれた作りごとを突く。(とても嫌なことがあると、目の前の楽しいことに対し、一気に批判的になるものだ)
さらに映画は、一度嫌なことに会うと嫌なことが続きがち、というよくある「いら立ちの連鎖」を、シーン各所にうまく織り込みながら、一方で、プレッシャーからの逃避から来る、見知らぬ若い女性へのチョッカイや酒の暴飲といった、「良きパパ」ジムの、いけない誘惑との葛藤を可笑しくしてみせる。
以上のようなことを踏まえ、話は、始めは、ディズニーランドでありがちな家族の行動/感情を示しながら、話の進行につれてジムの心に「いら立ちの連鎖」が鬱積し、後半ついに、ジムはSFの世界に迷い込み、悪夢に取り込まれて精神が爆発する。
ちょっと、映画「未来世紀ブラジル」のラストシーンが心をかすめた。
オリジナルタイトル:Escape from Tomorrow
監督・脚本:ランディ・ムーア|アメリカ|2013年|90分|
撮影:ルーカス・リー・グラハム|
出演:ジム(ロイ・アブラムソン)|エミリー(エレナ・シューバー)|サラ(ケイトリン・ロドリゲス)|ソフィー(ダニエル・サファディ)|イザベル(アネット・マヘンドリュ)|科学者(スタッス・クラッセン)|看護師(エイミー・ルーカス)|

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