映画「大いなる休暇」 監督:ジャン=フランソワ・プリオ
2018年05月20日 公開


心温まるストーリーで、少しドタバタ喜劇です
島民はかつて漁業で生計を立てていたが、今は皆、廃業して一様に生活保護を受けている。
しかし支給金の月額では、2週間分の生活費しかまかなえない。
働き甲斐を無くした島民は、ただただ、ぼんやりした毎日を過ごす。(なぜ漁業を辞めざるを得なかったかは映画は語らない)
そんな折、ある会社がこの島に工場を建設したいという話が浮上した。
工場が出来て島民が工場で働けるようになったら素晴らしい!
しかし、それには条件があった。条件とは島に常勤の医師がいる事であった。
この島には長らく医師はいないのだ。代理医者と称して精肉店のおやじが危なげな処置をしていた。
工場進出という湧いて出た美味しい話があるのに、医師がいなくてはどうにもならない。
クシの歯が欠けるように、少しずつ住民は島を離れ本土へ移住していく。

本土に移住していった男から、自然豊かな「へんぴな島」に住みたいという若い医師がいるという。
そしてその医師クリストファー・ルイスがついに島へやって来る。
村長ジェルマンは、田舎者であるがちょっとした策士であり、行動派である。
医師が島に定住してもらうには、どうすればいいか。まず島の家々の外観をきれいにした。
そして何よりも、医師が好きだというクリケットを、この島でも盛んにやっているというウソを、島民たちで装う。(実は島民はクリケットの「ク」の字も知らないのだ。このシーンは幾つもある可笑しいシーンのひとつ)
次の策は、医師の家の電話盗聴だ。これは彼が好きな物事調査だ。
彼の好きな料理が分かると、島でひとつのレストラン&バーのメニューに急遽追加するなど、医師向けのウソは増えていく。
ま、そんな努力が実って医師は島を気に入りだし、島の娘を好きになるが、次の難題が発覚。
工場進出の企業に、別の所から誘致話が持ち上がり、そこと競り合う形となった。企業の社長は基本的に島に工場を建てたいのだが・・・、別の誘致先からは工場が来るなら5万ドルの補助をするとのこと。
しかし、この島ではどうあがいても5万ドルは捻出できない。
島には生活保護の支給金を支払うため「だけ」に、銀行の出張所がある。
島民が彼をATMのような支店長と呼ぶその男に、村長は銀行融資を迫る。気弱なその男は、恐る恐る本店に融資の旨を伝えたが、折り返しの返事は、島の出張所の廃止とATMの設置だった。
支店長は落胆し、かつ怒りがこみ上げ自暴自棄。勝手に銀行の金庫から5万ドルを出金し、村長に進呈した。
金が用意できた村長たちは、ヘリで島に降り立った、工場進出の社長たち視察団を迎える。
そこでまた難題。200人以上の住民の地に工場を作るのだと・・。
しかし負けない村長は社長たちの前で、また島民を使って200人以上いることを演出した。(島民たちは大変だ!)

医師に、あれもこれもウソをついてきたことが、好きになった娘の口からバレる。
医師は、好きな彼女ができたことに後ろ髪を引かれながらも、島を離れると村長に言った。
だが、契約に来る社長はじめのお偉方の日程は決まっていた。
そこで村長、まだ負けない。島に物資を運んでくる小さな船の船長を説き伏せ医師に仕立てるが・・。
村長はじめ島民たちは実にまじめに、生活と生きがいとを求めて、「ウソ」を医師と社長につくが、所詮ウソはウソ。ついに、どん詰まり。
だが、これを救ったのは、なんと医師のクリストファー・ルイスだった。(終)
真面目で可笑しいお話、観てのお楽しみ!
余談1:同じく、離島の人々のコミカルな映画に「ウェイクアップ!ネッド」がありました。
アイルランドにある離島で起きた出来事。宝くじで12億円を仕留めた独身の島民が当たったその日に死亡。それを島民全員で何とかして横取りしたい。そして宝くじ会社の調査員が島にヘリで降り立った・・・。
余談2:オドレイ・トトゥ主演の映画「アメリ」(2001)に出てくる同じようなシーンが、本作「大いなる休暇」の中に2回あります。
オリジナルタイトル:La Grande seduction(SEDUCING DOCTOR LEWIS)
監督:ジャン=フランソワ・プリオ|カナダ|2003年|110分|
脚本:ケン・スコット|撮影:アレン・スミス|
出演:村長ジェルマン・ルサージュ(レイモン・ブシャール)|クリストファー・ルイス(デヴィッド・ブータン)|アンリ・ジルー(ブノワ・ブリエール)|イヴォン・ブルネ(ピエール・コラン)|エヴ・ボーシュマン(リュシー・ロリエ)|スティーヴ・ロラン(ブルーノ・ブランシェ)|エレーヌ・ルサージュ(リタ・ラフォンテーム)|クロティルド・ブルネ(クレモンス・デロシェ)|モンシュール・デュプレ(ドナルド・ピロン)|リチャード・オジェ(ケン・スコット)|
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