映画「夜空はいつでも最高密度の青色だ」 監督:石井裕也
2018年05月22日 公開


それは繊細な男女の物語。恋することを怖がる美香の話でもある。
とは言え、映画は今を生きるシンドさを、時間をとって描いている。
特に慎二の周辺の登場人物は底辺であえぐ人が多い。心に重荷を抱いて、それでもなんとか今日一日分の、心のバランスを保とうとしている。
舞台は東京。
慎二と美香が出会う渋谷新宿の、作られた眩さと、人気のない街はずれの夜の暗さ。
そして日雇い労働のビル建設現場と、死んでゆく患者を見送るに慣れた総合病院の廊下。
そんな舞台を背景に、明日を見通せぬ日常の、鉛のような海に浮かんだ、慎二と美香の危なっかしい小さな恋。
それで二人は、やっと明日を考えられる気がして、少し安堵するに至ったようだ。

高校の時、それなりに勉強ができ友達にも囲まれていたようだが、それは装いの日々であった。
今は日雇いで生活している。慎二はこの生活に不満は無いようだ。今までに無くすなおに生きれる。
日雇いの先輩は智之(松田龍平)という男で面倒をみてくれる。
慎二が住むアパートの隣室のじいさんと仲がいい。本をたくさん持っていて、貸してくれていたが、ある日じいさんが孤独死。
智之も、建設現場で突然死してしまう。

毎日ではないが、患者が死んで病室を出ていくを見送るのが辛い。
夜のバイトもしているのは、実家の父親に仕送りするためだ。
美香が幼いころ母親は他界。自殺だったのか父親は口を閉ざしてきた。
別れた彼氏から今でも愛しているというメッセージを受け取るが。
物語は、登場人物に割り当てられたエピソードのパッチワークといってもいい。
その一つひとつは、陳腐とは言わないが、よくある話。
しかし、監督の素晴らしい演出力という魔法が、話をわざとらしくなく、リアルにして最後までしっかり観せる。

監督・脚本:石井裕也|2017年|108分|
原作:最果タヒ(詩集「夜空はいつでも最高密度の青色だ」)|
出演:美香(石橋静河)|慎二(池松壮亮)|智之(松田龍平)|美香の母(市川実日子)|岩下(田中哲司)|玲(佐藤玲)|牧田(三浦貴大)|フィリピン人の実習生アンドレス(ポール・マグサリン)|慎二の隣人の老人(大西力)|ストリートミュージシャン(野嵜好美)|ほか
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