映画「木靴の樹」 監督:エルマンノ・オルミ
2018年05月29日 公開
時は20世紀一歩手前の19世紀末。
イタリアの小作人たちの日常を群像劇として観せる。
この映画、はるかな遠景を眺めるように、ゆったり構えて広い視野で観るといい。
あるいはタイムスリップしたと思って観るのがいい。
イタリアの北方、アルプス山脈に近い町、ベルガモ周辺に広がる農村地帯。
広大な大地を所有する大地主と、地主につかえる管理人。
そして小作人たちとその家族。老人、夫を亡くした妻と子沢山、恋する若い男女、働き遊ぶ子たち、生れたばかりの赤ん坊。
種まき、とうもろこしの収穫。馬と荷車、干し草、牛の搾乳、解体される豚、水たまりのアヒル、うろつく犬、服地の行商人、放浪する乞食。
そんな中にある、小作人たちの週一の寄り合い、結婚式、町のお祭りといったハレの時間。
しかし、そうした小作人たち農民の、一見、何の変化もない様に見える19世紀末の日常は、ゆるりと20世紀を迎えようとしている。
そんな変化を映画は、小作人の子供の通学、工場勤めの娘たち、町(都会)の人々の新しさ、社会主義の芽生えなどのシーンで表現する。
「木靴の樹」という題名に注目しすぎると、この映画の一部分しか見ないことになる。
地主の領地内のすべては地主の物だから、領地内の道に沿って立ち並ぶ木を切り倒し、子供のための木靴を作った小作人一家は、この地を追われることになるのだが、地主と小作人という対立構図だけで本作を観てしまうと、本作の良さが半減してしまうだろう。
オリジナルタイトル:L'albero degli Zoccoli
監督・脚本・撮影:エルマンノ・オルミ|イタリア|1978年|187分|
出演:ルイジ・オルナーギ(バティスティ)|フランチェスカ・モリッジ(バティスティーナ)|オマール・ブリニョッリ(ミネク)|ほか多数
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