映画「合葬」 監督:小林達夫
2018年06月26日 公開

将軍徳川慶喜が政権返上を明治天皇に奏上した大政奉還1867年から翌年1868年までのお話。
世の中の土台が瓦解する幕末に、武士に生まれたからこその、生き方選択の迷路に迷い込んだ、幼なじみの3人の男たちがいた。
しかし、この先世の中どうなる、という大きな不安が押し迫るさなかでも、武士にも、また武家の女や町人・農民といった人々にも、彼らの日常はそれぞれにあった。もちろん恋もあった。

砂世は、秋津の幼なじみの福原悌二郎の妹で、砂世は幼いころから秋津に淡い恋心を抱いていたのだった。
秋津のもう一人の幼なじみ吉森柾之助は、養子先の武家から前触れなく、ていよく追い出される。(養子先の武家の女達は武士の世は終わったと、時代の変わり目を読んでいる)
吉森に何処へと行くあてはない。秋津はこの迷える吉森を彰義隊に引き入れた。
その吉森にもうひとつの迷いがあった。それは、茶屋で働く かなという女に恋をどう打ち明けようかという迷い。だが、そのかなは秋津に猛烈に一目惚れしてしまう。
こうして秋津は妻になる女を捨て、吉森は女への思いを抱きながら彰義隊に入隊する。
この事態におよんで、徳川将軍の身辺警護と江戸の秩序守護を目的とした彰義隊なんて、大政奉還した今、もう意味ないじゃんと思う福原は秋津に、改めて妹との婚約解消を考え直してくれ、いや少なくとも妹にもう一度会ってやってくれ、と頼み込んだ。
そしてさらには福原は、秋津と吉森の、彰義隊に対する考えを覆そうと、彰義隊の客分となって彼らの宿舎(寺)に出入りするようになった。
その寺には、森篤之進(オダギリジョー)という、彰義隊の武闘派(抗戦派)に懐疑的な男もいたが、その日、彰義隊と新政府軍との戦争が上野(パンダがいる上野)や谷根千あたりで始まってしまう。
結局、福原は秋津、吉森と共に戦争に加わるが、福原は戦死。
(彰義隊は、上野の寛永寺(上野公園)に結集するがほぼ全滅、生き残ったわずかの隊員は散り散りに谷根千あたりに四散。上野戦争)
農家の小屋に身を隠す、負傷した秋津とそれを見守る吉森。翌朝、秋津はこの小屋で自害。
福原の妹、砂世は、年上の穏やかな男と結婚した。
砂世は、夫の前で胸の内を打ち明ける。
あなたとの縁談の話が持ち上がった時、私は兄にウソをつきました。これから一生悔やむことになるから、一目秋津に会っておきたいと。

これを聞く夫は穏やかにほほ笑むばかりでありました。
いわゆる歴史小説で描かれる幕末ではありませんね。
話の底にある、ある種の「静寂さ」を感じ得れば、よりいい映画に思えるかもしれません。
何かで読んだ記憶ですが、谷根千あたりの武家屋敷の庭に上野戦争で敗れた彰義隊隊員が隠れていたという話を思い出しました。
監督:小林達夫|2015年|87分|
原作:杉浦日向子|脚本:渡辺あや|撮影:渡辺伸二|
出演:秋津極(柳楽優弥)|吉森柾之助(瀬戸康史)|福原悌二郎(岡山天音)|福原砂世(門脇麦)|かな(桜井美南)|森篤之進(オダギリジョー)|ほか
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