高野文子(著)「田辺のつる」「アネサとオジ」「ふとん」, 大友克洋(著)「ヘンゼルとグレーテル」「童夢」, 松本大洋(著)「鉄コン筋クリート」・・最近読みかえした漫画

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 漫画を振り返る。
 いま見ても、やはり、いいなぁ という作品を取り上げてみた。
 今回は高野文子、大友克洋、松本大洋だ。
 まずは高野文子の短編3作。

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【高野文子】・・・「田辺のつる」、「アネサとオジ」、「ふとん」

 その昔、初めて出会った高野文子の作品が「田辺のつる」、漫画雑誌・漫金超創刊号に掲載されていた。他の掲載作品に比べ抜きんでて刺激的な漫画であった。
 田辺家に、明治生まれのばあさんがいる。家族から見て、彼女は認知症だが、本人「つる」82歳は、4歳くらいの少女の自意識で、現在を生きているのです。
 だから、ばあさんは可愛い少女の姿で描かれる。
 話は、つるばあさんと家族とのあれこれを語りますが、つるさんは可愛らしくも、たくましい。この嫌味の無いたくましさが、とても印象に残ります。

 「アネサとオジ」は、マンガ奇想天外の春・創刊号に掲載されていた。
 「田辺のつる」同様に、同時掲載されている大友克洋、柴門ふみ、吾妻ひでお、松本零士など他の漫画より図抜けて鮮烈な印象が残った作。(ヘタウマ漫画風のタッチです)
 姉のアネサは野獣のような人間離れの凶暴さで、例えば家猫を一口にパクリ、食べちゃう。
 また、アネサの手足は体から自由に離れる。離れた手は弟のオジの朝食やオヤツをかっさらい、これもあっと言う間にアネサの口に入る。
 オジはアネサを姉として慕うものの、ある日、我が身の危険を感じた。
 そこで、ついに反撃に出る。二階の窓から、下を歩くアネサ目掛けてオジは大きな石を落としたが、アネサの頭が肩に食い込んだだけ、アネサは食い込んだ自身の頭を引っ張り上げ、何事もなかったようにその場を去っていく。
 そんなあるとき、オジを見てアネサが驚愕した。なぜ?(あとは見てのお楽しみ)

 「ふとん」もマンガ奇想天外に掲載されていた。
 やはり、掲載他作を凌ぐ漫画だった。本作は可愛い少女の葬儀の日の話。
 だから悲しいのだが、その悲しみに勝るのが、少女の霊と観音さまとの、可笑しなやり取り。巧い!そして爽やか。
 以上3作、このころの高野文子は冴えていた。

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【大友克洋】・・・「ヘンゼルとグレーテル」、「童夢」

 短編作品「ヘンゼルとグレーテル」の絵は、あの「アキラ」や初期作品群などの、描き込み多いタッチとは異なるプレーンな描写。大友克洋のもうひとつの顔。
 合わせて、お話は童話にさらに「毒」を盛り込んだ、大人の童話に仕上がっている。
 この大友克洋の漫画作品集には、「ヘンゼルとグレーテル」のほかにも有名童話をモチーフにした作が並んでいるが、やっぱりこの「ヘンゼルとグレーテル」の出来が出色。
 大友特有の、滑稽さと残酷さと馬鹿馬鹿しさがここに集約されている。実にいいね。

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 「童夢」は大作。
 当時、(漫画アクションだったかに)何か月かおきに連載されたのをそのたびに読んではいたが、いささか散漫な印象だった。
 しかしその後、修正/書き直ししたんだろう、単行本になって素晴らしい作品となって現れた。(発行が遅れ、単行本購入時にお詫びの特製しおりが付いた)
 とにかく、「アキラ」よりずっと凄い。
 超能力を持つ独居老人のチョウさんの出現シーンは、今も鳥肌が立つ。
 そして同じく超能力を持つ少女エッちゃんが、この団地に引っ越してきた・・。
 230ページのこの単行本、一気に読ませます!

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【松本大洋】・・・「鉄コン筋クリート」 

 この単行本610ページも、釘付けになり一気に読ませます。
 読み始めると、無音の強音圧が読者を圧倒しだすのを感じます。
 身寄りのない二人の少年シロとクロ。
 身体能力が半端じゃないこの二人の自由奔放さと疎外感、激しい暴力、そして互いの信頼と幼さと心の飢え。
 読み応え十分、骨太な感触、いいですな!


高野文子漫画作品集「絶対安全剃刀」1982年・白泉社 (1977年から1981年までに発表された17作品を収録)
たあたあたあと遠くで銃の鳴く声がする|花|はい―背筋を伸してワタシノバンデス|絶対安全剃刀|1+1+1=0|おすわりあそべ|ふとん|方南町経由新宿駅西口京王百貨店前行|田辺のつるアネサとオジ|あぜみちロードにセクシーねえちゃん|うらがえしの黒い猫|午前10:00の家鴨|早道節用守(はやみちせつようのまもり)|いこいの宿|うしろあたま|玄関|

大友克洋漫画作品集「ヘンゼルとグレーテル」1981年・ソニー・マガジンズ
ヘンゼルとグレーテル|赤頭巾|狼と七匹の子やぎ|狼と羊飼いの少年|三匹の子ぶた|ジャックと豆の木|金の斧、銀の斧|牛とカエル|マッチ売りの少女|白雪姫|ロビンソン・クルーソー漂流記|不思議の国のアリス|オズの魔法使い|アリババと四十人の盗賊|シンデレラ|白鯨|青い鳥|狼男|眠れる森の美女|DON QUIJOTE|I・N・R・I|

大友克洋著「童夢」1983年・双葉社

松本大洋著「鉄コン筋クリートall in one 」2007年・小学館

漫画雑誌「漫金超」 創刊号 1980・春
大友克洋「サン・バーグズヒルの想い出」|川崎ゆきお「猟奇のパラドックス」|雑賀陽平「3193より2316」|さべあのま「I LOVE MY HOME」|高野文子「田辺のつる」|いしいひさいち「絶望的前衛の巻」|ひさうちみちお「ヨセフ」|赤星ジュン「香港猫」|

マンガ奇想天外SFマンガ大全集 春・創刊号  1980年・奇想天外社
坂口尚「祭の日」|吾妻ひでお「Dr.アジマフ安全着陸」|高野文子「アネサとオジ」|柴門ふみ「反逆天使の墜落」|白山宜之「Golden Slumbers」|川崎ゆきお「飛ぶがごとく」|いしかわじゅん「至福の街」|大友克洋「大友克洋の腸の陰干」|坂口尚「坂口尚のSTAR DUST COLLECTION」|松本零士「モルモダリウム1978」|杉浦茂「猿飛天助」|ほか


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やまなか
Posted byやまなか

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