映画「放浪記」(1962)  主演:高峰秀子  監督:成瀬巳喜男

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女給として働くも、客がすすめる酒で酔っぱらい、「洋風ドジョウすくい」を踊りだした林芙美子(高峰秀子)
こののち、店主から解雇されるが、しゃあしゃあとする林であった。

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 「放浪記」とは、小説家・林芙美子(明治36年生まれ)が大正11年の頃から書き留めた日記をもとに、後年、作品としてまとめ上げ、昭和5年にベストセラーとなる小説。
 よって「放浪記」は、いわば若き日の自叙伝であり、映画はこれに沿いながら、底辺から這い上がり著名な作家となるまでのサクセスストーリーに仕上げている。
 林芙美子を演ずる、高峰秀子の素晴らしさを堪能してください。


2-0_201812251844125b8.jpg 林芙美子(高峰秀子)は、その母親が言うに、子供のころから一風変わった娘だった。
 世間が気にするような諸事には、まったく無頓着で、周囲は彼女が何を考えているのか分からず、しかし本人は自立する女性の自我を貫き、我が道を行くのです。

 すなわち、芯が強く、向こう見ずで酒豪で、文学作品をよく読み、いたってロマンチシストで詩人、そしてイケメンに惚れっぽい。(上京の前に尾道市立高等女学校を卒業している)

 そんな林芙美子の人柄を手っ取り早く知るには、「放浪記」を少し読むといいかもしれない。
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 「放浪記」には、子供の頃から今に至る貧乏の苦労や、惚れた男の冷たさや、そんな恨み辛みのつぶやきが赤裸々に描かれています。
 しかし、その赤裸々をネガティブに感じ過ぎると、貧乏不幸をことさら売りにする女の、愚痴や嫉妬にしか聞えないかもしれない。

 さて彼女について、もう少し。
 当時、世は不景気で、まして東京で女ひとりが生きて行くには大変だったろうに、だが、それでも彼女は東京生活を選んだ。
 それは、いくら貧乏してもお構い無し、自己の責任で引き換え得られる自由奔放さが、彼女の身に合っていたからだろう。

 酒場や牛鍋屋の女給などの職を転々とし、今日の食事もままならぬ一方で、林は、多数の女性応募者が殺到した証券会社の面接試験に受かるも、その事務職の仕事の面倒臭さから、一日で職を蹴ったりする。

 さらには惚れた男を追って東京に出た彼女だが上京後すぐにフラれ、次に惚れたイケメンの舞台俳優&詩人の伊達(仲谷昇)、その次に惚れた陰のある詩人の卵(宝田明)にそれぞれ、押しかけ同居するも、うまく行かない様も描かれている。
 一方、上京間もなくの頃から彼女に片思いの、人の好い印刷工の安岡信雄(加東大介)にはすげなく、後年、彼女が著名な小説家になって初めて、林は安岡を人生の友として接したのでした。

 あとは観てのお楽しみということで・・。3-0_20181225190658903.jpg


監督:成瀬巳喜男|1962年|123分|
原作:林芙美子|脚色:井手俊郎 、 田中澄江|撮影:安本淳|
出演:林ふみ子(高峰秀子)|その母きし:田中絹代|貸間の隣室に住む印刷工の安岡信雄(加東大介)|林芙美子の詩人としての輝きを発見する男、そして林の愛人となる伊達春彦(仲谷昇)|売れない詩人、のちに林と同居する男・福池貢(宝田明)|同人会の幹事・白坂五郎(伊藤雄之助)|上野山(加藤武)|林と競う小説家・日夏京子(草笛光子)|同じく小説家の村野やす子(文野朋子)|のちに夫となる画家の藤山武士(小林桂樹)|田村(多々良純)|ほか

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サム成瀬


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