映画「夜ごとの夢」(1933) サイレント映画 主演:栗島すみ子 監督:成瀬巳喜男
2019年02月20日 公開


話は女と男の4日間の出来事。(その月の23日から27日)
幼い一人息子の出世を願い、それを生きがいに女給として今を生きる女、おみつ(栗島すみ子)。
そんなある日、おみつを捨て家を出て行った男が3年経って、ふいににふらりと現れた。水原である。
水原は一目、子供見たさに、そしてあわよくばまた、おみつと、よりを戻したい。
だが、気丈なおみつは、キッパリと水原の申し出を拒み追い返そうとした。
さてこの騒ぎを聞き付けた家主夫婦が、親切心からふたりの間に入って、これが結果おみつの女の気持ちのスイッチを押したのか、あるいは見るからに萎れた水原におみつが憐れみ以上のものを感じたか。
ともかく、おみつの胸の底に、水原への愛がまだ宿っていたらしい。
その日から水原は、おみつと息子の所帯に加わった。女給のヒモである。不景気の最中、水原に職は無い。
それでも男子、なんとか職を見つけ、おみつと子を養うと水原は口では言ったが、その実、弱気で意欲に欠け、また貧弱な体格で不採用になる始末。
そんなこんなで結局のところ、子煩悩な水原は息子や近所の子たちに交じり一日、遊んでいる。

息子が車に轢かれる。
しかし幸いにも怪我で済んだが、回復は長引く様子。入院が必要、まとまった金がいる。
反射的におみつは、金の工面に走ろうとした。それは女給で働く店の常連客で船長の男、以前からおみつをものにしたい男。
これを察した水原は、俺が工面しようと言い出した。男の見せ場と踏んだ様子。
だが、実はあてがない。案の定、水原はその夜、金を盗み、警官の拳銃で腕をやられ、傷を負いおみつに金を届けに来た。
悲しい顔したおみつは言った。この子を犯罪者の子にしたね。その金は受け取らない、返して、自首して。
おみつと別れたのち、警察に追われる水原は深夜の堤防から身を投げた。
ストーリーは現代の目からは至極単純、作りは当時としては凝っている様子が窺えるが、これも今となっては‥。しかし、おみつ役の栗島すみ子の存在は色あせない。
ちなみに、映画冒頭、おみつは旅から帰って来た、というところから始まる。その日は23日。
おみつは11日間、店を休み家を空け、息子を家主に預けていた。(おみつの部屋の日めくりが12日で止まっていた)
何しに旅に出たのか映画は言わないが、おみつは手ぶらで、着の身着のままだ。
また、息子が期待して待っていたお土産も無し。(警察に留置されていたのか?)
渡しの船に乗るため、ふ頭を歩いていたおみつは船員たちに声を掛けられ、蓮っ葉な笑顔をみせる。
そして渡しの船内では、乗客から冷たい視線を浴びている。派手な和服からなのか、あるいは乗客はおみつを知っているのか。
この渡しが佃島への渡しなら、乗客がおみつを知っていておかしくない。

英語タイトル:Nightly Dreams
監督・原作:成瀬巳喜男|1933年|64 分|
脚色:池田忠雄|撮影:猪飼助太郎|監督補助に渋谷実の名がある。

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