映画「残像」  監督:アンジェイ・ワイダ

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 第二次大戦直後の戦後のポーランドを描く映画です。
 この映画の一番のメッセージは、全体主義国家がいかに簡単に、個人の尊厳を握りつぶせるかであります。
 2016年にこの映画が公開されたことは、また再び世界が徐々に全体主義への傾向がみられ始めたことへの警告です。 

 そして次に、スターリン体制のソ連下のポーランドで、表現の自由がいかに打ち砕かれたかを映画は言っています。
 映画の主人公は、ウッチ州立美術学校の教授で著名な前衛画家のヴワディスワフ・ストゥシェミンスキです。芸術の理論家でもあります。


00-0.jpg 一方、国は芸術家に対し、徹底して労働者の英雄像と共産主義国家の国威高揚を作品に求めます。(社会主義リアリズム)
 つまり芸術表現が政治の道具(プロパガンダ)の域内でのみしか認めらないのです。

 かつ国は芸術家に踏み絵を踏ませます、踏めば社会主義リアリズム作品を制作し生活の安定が得られますが、踏まぬとなると職をはく奪され生活はたちまち困窮します。ストゥシェミンスキ(1893–1952)は後者を選択し1950年、教授職を解任されました。

 ストゥシェミンスキの死後、彼を慕った学生たちの手で、彼の理論「視覚の論理」をテキストにまとめ上げ出版しました。(映画でもストゥシェミンスキに寄り添う学生が彼の理論を口述筆記(タイプ打ち)しているシーンがあります)
 また、この理論は学術界および芸術界に及ぼした影響は大きく、のちに彼をクビにした学校は1988年に学校名を、ウッチ・ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキ美術アカデミーとして彼の名を入れ敬意を表しています。(ポーランドは1989年に非共産党政権が成立し現在のポーランド共和国となった)

 ストゥシェミンスキの作品が次から見ることができます。
 彼の妻は、オブジェ・彫刻作家のカタジナ・コブロ(1898-1951)で、この夫婦の作品がここに収められています。(夫婦の写真も掲載されています)
 https://issuu.com/museoreinasofia/docs/kobro_ing
( リンク先の>印で次ページが展開されますので、作品写真が掲載されているページまでページをめくってご覧ください)
 多くの作品写真のなかに映画で出てくる作品や展示室も掲載されています。

 ちなみにアンジェイ・ワイダ監督(1926-2016)は、ストゥシェミンスキが教授をしていたウッチ州立美術学校があるウッチという都市に設立されている、ウッチ映画大学を1953年に卒業したようです。

 下記は本作「残像」の予告編です。


オリジナルタイトル:POWIDOKI (残像)|Afterimage |
監督:アンジェイ・ワイダ|ポーランド|2016年|99分|
脚本:アンジェイ・ワイダ 、 アンジェイ・ムラルチク|撮影:パヴェウ・エデルマン|
出演:ヴワディスワフ・ストゥシェミンスキ(ボグスワフ・リンダ)|ハンナ(ゾフィア・ヴィフラチュ)|ニカ・ストゥシェミンスカ(ブロニスワヴァ・ザマホフスカ)|ストゥシェミンスキの親友で詩人のユリアン・プシボシ(クシシュトフ・ピェチンスキ)|文化大臣ヴウォジミェシュ・ソコルスキ(シモン・ボブロフスキ)|造形大学学長ライネル(アレクサンデル・ファビシャク)|学生ロマン(トマシュ・ヴウォソク)|店主 (アレクサンドラ・ユスタ)|ルジャ・サツルマン(マリア・セモチュク)|美術館館員(マグダレナ・ヴァジェハ)||小学校長(エヴァ・ヴァンツェル)|

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