映画「風たちの午後」(1980) 監督:矢崎仁司

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 ふたりの女の物語。
 そしてこれは、1970年代の風に吹かれた人たちへの、悲しげな苦いファンタジーでもある。

 夏子と美津は姉妹のように一緒に住んでいる。
 夏子は保母さんで、美津は美容室で働いている。美津は夏子より年上で、世慣れしている。

 実は夏子は美津が好きだが、今もって好きと言えないでいる。
 美津には男がいて、美津はその男を部屋に引き入れる。そんな時、美津はハンカチを窓辺に干す。これが今部屋に来ちゃダメという、夏子への合図になっている。
 こんな時、夏子はとても悲しい。

 夏子は美津からあの男を引き離したい。
 男に、保育園の同僚の子を紹介した。やがて、この子は男の彼女になったが、相変わらず男は美津から離れない。
 ついに夏子は捨て身の手段をとって、自ら男を誘った。

 ふたつの事情を知った美津は、もう一緒に住めないと言って夏子から離れて行った。
 美津はマンションに住み替え、キャバレーで働き始めた。
 密かに、そんな美津の姿を追う夏子は、張り出したおなかを気にしながらも、物陰から美津を見つめ続ける日々。
 
 夏子も引っ越しした。保育園を辞め、日の当たらない小さなその部屋で手内職をしている。
 そしてある日、夏子は美津の留守に、マンションの管理人から姉の部屋だと言ってカギを借り、彼女の部屋へ入った。美津の臭いがする。
 やがて、近くの花屋に頼んでおいた、たくさんの花が部屋に届く。
 夏子はこの花を、部屋の床いっぱいに敷き詰めて、その上に身を横たえた‥‥。


 詩的な映画です。
 セリフはもともと多くない、かつセリフは聞えるか聞こえないか位に音量を抑えている。
 よって自ずと観客は、モノクロの映像が描きだす夏子と美津の一挙一動にまなざしが向かう。
 それと1970年代、あの10年を抜けて来てた、若い感性と、脱力後の優しさとでも言うか、そういうのが見て取れる。
 しかし、話にもう少し、リアルと深みが欲しい。それは男性監督より女性監督の得意とする領域なのかもしれない。 

 予告編です、ご覧ください。

下


オフィシャルサイト:http://kazetachinogogo.com/
監督:矢崎仁司|1980年|105分|
脚本:長崎俊一、矢崎仁司|撮影:石井勲、小松原淳|
出演:綾せつこ(夏子)|伊藤奈穂美(美津)|阿竹真理(夏子の職場・保育園の同僚)|杉田陽志(美津の男友達)|

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