特集:「刑務所は出たけれど」の物語
2019年08月29日 公開
「刑務所は出たけれど」という切り口で、これまでの映画を集めたら、32本もあった。(下記)
なぜ罪を犯したのか、服役中の事、出所してからの事と、このテーマは、ま、人生ストーリー創作の泉みたいであります。
日本映画は8本、そのうち5本が一夜一話にはマレな、やくざ映画。でも典型的なやくざ映画じゃありません。一味違います。
以下、お楽しみください。(並びは50音順)
「アンビリーバブル・トゥルース」監督:ハル・ハートリー

ジョシュの罪は、彼の恋人の父親殺害で、その頃、ジョシュはまだティーンエイジだった。彼の出所を恐れたのは、当時の記憶がある中年以上。若い連中は言い伝えを知るくらいで‥

「いぬ」監督:ジャン=ピエール・メルヴィル

前回の案件は話がうますぎた。結果モーリスは刑務所へ。
罪滅ぼしのつもりだったろう、彼が出所のその日、相方のジルベールが迎えに来た。そしてまた、ジルベールがまたうまい話を持って来た。

「FM89.3MHz」監督:仰木豊

大川組の工藤準次は、15年の服役を終えて新宿に帰って来た。組長の息子の敵討だった。工藤は、とにかく一本気な男。しかし、15年は永かった。新宿はあまりにも変わってしまっていた。

「オアシス」監督:イ・チャンドン

そろそろ、すなおに青年とは言いにくい歳になる男が刑務所から出所して来た日から話は始まる。
この男を演じるソル・ギョングと、脳性麻痺による肢体不自由の障害を抱える女性を演じるムン・ソリの熱演に拍手!
イ・チャンドン監督による、なかなかの映画です。

「鬼火」監督:望月六郎

しかし彼が属した組は、すでに無い。宿敵であった明神組が天下を取っている。
歳はすでに50を越え天涯孤独の国広は、この先、堅気の生活を送るつもりであった。

「カッコーの巣の上で」監督:ミロス・フォアマン

戦闘的、許可なく発言、労働一般を嫌い怠惰、暴力を振う。それがこの男についての刑務所側の評価。
男の逮捕歴5回、未成年者強姦1回。
話は精神病院内の、第三者の目が届かない閉鎖された場において、権力は暴走するという怖い話。

「北の橋」監督:ジャック・リヴェット

銀行強盗共犯の罪で刑務所にいたマリーは30歳代、閉鎖的空間で強いストレスを感じるパニック障害患者。一方、バチストは空手とカッパライが得意な、まだまだ若い路上生活者。

「雲の上」監督:富田克也(空族)

この映画、8ミリで撮影された。そのワイルド感と録音ノイズ、その場一発撮り的な、生なライブ感が織りなす映像は観客をとりこにする。
そしてチケンの相方シラス役の鷹野毅(写真左)が何とも言えず、素晴らしい!!のです。

「喧嘩犬」監督:村山三男

その鴨井と、刑務所内で知り合った小吉(海野かつを)、天地組の親分・小森(遠藤太津朗)のそれぞれが出所して、話は展開します。
コメディタッチのアクション映画。「犬シリーズ」中、一番いい出来だと思う。カメラもいい絵で撮っている。

「呼吸」監督:カール・マルコヴィックス

孤児院で育ち、親を知らない。14歳の時、孤児院内でケンカをし、相手は病院で死亡。それ以来、少年院。
今現在は仮釈放の身となっていて、保護観察官付きで外出はできる。この条件下で彼は市の遺体安置所に職を得た。

「この森で、天使はバスを降りた」監督:リー・デイヴィッド・ズロートフ

出所直前、大自然の景観が心を癒やすことを知ったパーシーは、自分が再生する場所に、カナダにほど近い、森に囲まれた、その小さな町を選んだ。そしてその夜、彼女はひとり、この町の停留所に降り立った。

「ゴールキーパーの不安」監督:ヴィム・ヴェンダース


「シェヘラザード」監督:ジャン=ベルナール・マルラン

この映画は、このマルセイユ郊外を舞台にした清らかなラブストーリーです。
貧しさと家庭問題に苦しむ、17歳の移民の男の子ザックと、同い年くらいの、売春で生きるシェエラザードのふたりが、主人公。

「シュトロツェクの不思議な旅」監督:ヴェルナー・ヘルツォーク

シュトロツェク役のブルーノ・Sという男優の存在感が、この映画を制しています。
私たちは、映画の中のシュトロツェクをみているのか、それともブルーノ・Sという男の生きざまをみているのか。混同してしまいます。

つまり、映画というお芝居を観ているつもりが、いつの間にかブルーノ・Sという憐れな男についてのドキュメンタリーを観ているように感じてしまうのです。この映画は、そんな映画です。
「自由はパラダイス」監督:セルゲイ・ボドロフ

そして、長距離バスに乗り おばさんの家を訪ねたが、父親の行方は知らないと言う。
翌朝、警察が来てサーシカは署へ連行された。そこで取り調べがあり、その時サーシカは父親の居場所を知る。父親はロシア北西にあるアルハンゲリスクの刑務所に入っているらしい。そこは、遙かな地なのだ。

「ショーシャンクの空に」監督:フランク・ダラボン

名はアンディ。地方銀行の副頭取らしいが、まだ若い。妻とその浮気相手を銃殺した罪である。だが彼は冤罪(えんざい)被害者であった。
そして、ある日アンディは脱獄に成功しメキシコの海辺に至る。それからは‥。

「仁義」監督:ジャン=ピエール・メルヴィル

コーレイ(アラン・ドロン)は、出所の前日に看守から、うまい話を聞いた。この看守の義兄が勤める高級宝石店が狙えるという話。 店は最新の警報装置を設置したが、その解除の方法をコーレイは知ることになる。出所したその足で元ボスの家を訪れ札束と拳銃を奪い、アメ車を買いひとりパリへ向かった。

「スケアクロウ」監督:ジェリー・シャッツバーグ

マックス(ジーン・ハックマン)は、6年の刑を終えたばかり。ライオン(アル・パチーノ)はこの5年間、船に乗っていた。

「素敵な歌と舟はゆく」監督:オタール・イオセリアーニ

ヤクザの端役をやる。それは銀行強盗のお手伝いのはずが、刑務所入り。
満期終了で出てきたら家ではご苦労さんパーティ。実はこの家、母親(実業家)がヤバイぞ。裏社会のビジネス。

「ダウン・バイ・ロー」監督:ジム・ジャームッシュ

話の舞台は、米国ルイジアナ州はニューオリンズの田舎街。人影ほとんど無いゴーストタウンだから、無法者が集まる街、ここから始まる映画です。

「ただいま」監督:チャン・ユアン

この再婚夫婦は四六時中、とにかく夫婦げんかが絶えない。それぞれの連れ子、タウ・ランとシャオチンが一致する意見は、いち早く、この家を出たいこと。

「立ち去った女」監督:ラヴ・ディアス

殺人の罪で30年間服役していた、元教師ホラシアの物語。
しかし30年経ったある日、これが冤罪事件と判明し、ホラシアは無罪放免 釈放された。映画はここから静かにゆったりと展開し始める。
さてホラシアに濡れ衣を着せたのは誰だったのか、そして釈放後、彼女は‥。

「タンジェリン」監督:ショーン・ベイカー

アップテンポの展開に、つい乗せられ、ラストまで、あっという間のエンターテインメント! 活き活きとしたライブ感、巧い演出、いい映画。

「時計じかけのオレンジ」監督:スタンリー・キューブリック

敵対するグループとの縄張り争い、婦女暴行、ホームレス殺し、窃盗、仲間割れ。そして、アレックスは金持ちのおばさんを殺し、刑務所行き。そこはナチス的な雰囲気の刑務所で‥

「都市の夏」監督:ヴィム・ヴェンダース

現金の隠し場所を知っているのはハンスだけ。だから仲間は彼の出所を待ちに待っていたのだ。ハンスは車を途中で止めてタバコを買うフリをして店から裏通りに抜けて逃亡した。

「ナイン・ソウルズ」監督:豊田利晃

9人は、みな10数年の刑期がまだある人たちだ。一番の年長者・虎吉(原田芳雄)の指揮のもとに、集団で脱出、奪ったキャンピング・カーで逃走する。
しかし、この団体行動は徐々に崩れていく。9人それぞれが抱えている思いや願いを叶えるべく、ひとりまたひとりとキャンピング・カーを降りて行く。脱走のニュースは刻々と報道される。東京に着いた時には、メンバーは3人になってしまった。

「にっぽん泥棒物語」監督:山本薩夫

時は1948年(昭和23年)の冬。連合国の占領下に入って3年が経った頃。国土は、まだ疲弊していた。
映画で杉山事件としている事件は、御承知の通り、松川事件です。
占領下の冤罪事件という重いテーマを、うまくひねって喜劇風味の映画に仕立てています。いい映画です。

「ハイウェイの彼方に」監督:ローガン・マーシャル=グリーン

彼は、置き去りにされた乳児との「突然の出会い」が、その人生を大きく変えることになるのです。

「バッファロー'66」監督:ヴィンセント・ギャロ

自分を探すという難問を解決する糸口は、自分を知ってくれる相手を見つけることから、かもしれない。いい映画。

「バンディッツ」監督:カーチャ・フォン・ガルニエル

映画冒頭で刑務所の尼さんが絡むあたりとライブ・シーンはコメディ音楽映画 「ブルース・ブラザーズ」(1980) に似ているし、また脱獄後の楽しげな逃走はドイツ映画 「ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア」(1997) やアメリカ映画 「テルマ&ルイーズ」(1991) に、似てなくはない。

「ヴィクとフロ、熊に会う」監督:ドゥニ・コテ

彼女は仮釈放になったその日、森の外れの一軒家を訪れた。そこは父親がひとり住む家だった。
カナダでは、終身刑の人が仮釈放可能になるまで最短で25年かかるのだそうだ。だからヴィクトリアは、36歳より以前に服役したんだろう。

そこへまもなく、フロレンスという40歳過ぎの女がこの家に来た。ヴィクトリアとフロレンスは刑務所で知り合った仲。フロレンスは先に出所していたのだ。久しぶりに愛し合った一夜だった‥
「ファミリー 兄弟の歩む道」監督:セダット・キルタン、クビレイ・ザリカヤ

長男ダニアル、ダウン症の次男ムハメッド、三男ミコの3兄弟が主人公です。
一見、チンピラや暴力団の映画にみえるかも知れませんが、試練に耐えようとする兄弟愛と、貧困のトルコ人コミュニティの荒廃、そして信頼で繋がる仲間の助け合いを描いて、メリハリのある、見応えあるものにしています。

「ブルース・ブラザース」監督:ジョン・ランディス

ブルース兄弟の兄ジェイクの出所を報告するため、兄弟はまずは、孤児院の院長シスターに会いに行きます。
そこで知った事。それは、教会が資金難で孤児院の税金が払えないでいること。そして数日以内に5000ドルを納税しないと、孤児院は閉院せざるを得ないという緊急事態。

さて、5000ドルをバンドのライブで稼ぐべくブルース兄弟は奔走。バンド仲間や、警察、ネオナチ団体、そして謎の女、果ては軍隊をも巻き込んで展開する、スピーディーな波乱万丈を描きます。
「約束」監督: 斎藤耕一

シーンもセリフも、このふたりのためだけにある。人物背景を省略する日本画のように、ふたりの人生背景を映画は説明しない。
女(岸恵子)は3泊4日の仮出所の身。刑期は、まだ2年残っている。女は、明日の夜9時までに刑務所に戻らなければならない。
戻った刑務所前で、2年後の「再会」を約束する。ふたりが出会ったあの公園で。
一方、男(萩原健一)は女との出会いの前に人を刺していた。(女は知らない)

男は、刑務所の門で女と別れた直後に、逮捕された。(女は知るよしもない)
それから2年後、何も知らない女は公園で男を待つ‥。
「無宿」監督: 斉藤耕一

玄造(勝新太郎)は、朴訥なヤクザ錠吉(高倉健)と刑務所で知り合った。
やんちゃで人懐っこく ひょうきんな玄造は、錠吉のその凛とした様子に魅かれ、またなぜか自分と相通ずるものを感じた。
晴れて刑務所を出た玄造は、愛人(藤間紫)と会う。

一方、同じ日に出所した錠吉には、成すべきことが三つあった。それは、親分の墓参り、残された親分の女房の世話、そして親分の仇討であった。
「預言者」監督:ジャック・オーディアール

マリクが入所して3年が経った。刑期の半分を過ぎると、模範受刑者は審査の上、時間限定で外出ができるようになる。
その間マリクは、服役中のコルシカ・マフィアのボス、セザールに仕え、セザールの子分の地位を利用し刑務官達を手なずけセザールのシャバでのビジネスに関与していく。そしてある日、マリクは出所する。

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