映画「誰のために愛するか」主演:酒井和歌子 監督:出目昌伸

上
寝ていた朋子の部屋に侵入して来た謎の男・明男と、風邪と聞いて立ち寄った婚約者・高木が鉢合わせ。朋子はとっさに明男をかばう。高木は「やっぱりお前は居酒屋の娘」と蔑んだ一言を残して立ち去った。
*          *
 酒井和歌子の魅力を味わう映画。
 この酒井と助演の加山雄三の組み合わせは、おのずと1960年代風の娯楽映画を思い浮かべるが、本作の第2の見どころは、映画が、既成に抗う様を描く1970年代っぽいスタイルを目指しているところ。
 
 原作は、曽野綾子著の、女性を対象にした愛についてのエッセイ集。これから、あれこれテーマを拾い出して脚本を起こしている。よって、主役の宮井朋子(酒井和歌子)の話は、いささか散らかり気味。これをなんとか起承転結にこぎつけてはいるが、結が無理やり。
 でも、酒井和歌子の魅力を味わう映画として楽しめるかもしれません。

 28歳宮井朋子は恋愛や結婚に懐疑的な女。両親はながらく別居していて、宮井は母、君代(森光子)とともに甲府に住んでいたが、いまは東京で銀行員として働き一人住まい。父親は愛人を作り家を出たがその後、愛人は世を去っている。母は今も父を慕っていると朋子は感づいている。

中 お話は、朋子と3人の男との恋と愛。
 ひとりは朋子が務める銀行の取引先の男、高木隆一郎(佐々木勝彦)。支店長から紹介された。優秀でまじめでまさに世間的にいい結婚相手。高木家、宮井家双方の親と会うまでになるが、朋子の心は、キスも結婚も踏み切れないでいる。

 そんななかに登場する、もうひとりは朋子の田舎の幼なじみ元木敬介(加山雄三)。地元の医者の息子で本人も医者。既婚、子もいる。浮気している現場もみた。この元木が朋子に手を出すが朋子もまんざらじゃない。雨の中、炎のごとく燃えた一夜を過ごす。

 3人目はパトカーの後部座席から路上の朋子と目が合った、通りすがりの男、明男。その後朋子を付け回す男。危険な尖がり感のある、かつ年下の男の魅力を演じる役、そして高木との関係の終結に狂言回しとして登場し、また元木との愛が終わったことを象徴するかたちでラスト近くで雪降りしきるなか登場する。

 そうして迎えるラストシーン。朋子はそれまでの思いを振り払い、明日に向かって生きようとしている‥。
 あと言い忘れたが、朋子の母親君代役で甲府の小さな居酒屋の女将、森光子の演技にも注目を。


監督:出目昌伸|1971年|96分|
原作:曽野綾子「誰のために愛するか」1970年青春出版社刊下記|脚本:鎌田敏夫|脚色:井手俊郎|撮影:原一民|
出演:宮井朋子(酒井和歌子)|その母・宮井君代(森光子)|父・宮井章造(細川俊夫)|朋子の同僚で不倫中の坂口祥子(赤座美代子)|高木隆一郎(佐々木勝彦)|その父・高木隆吉(今福正雄)|元木敬介(加山雄三)|その妻・元木紀子(結城美栄子)|明男(真樹渉)|ほか
本作タイトル「誰のために愛するか」がいまいち意味不明なのは、原作のエッセイ集書名をそのまま持って来たから。ベストセラーだったらしい。
そして、この映画は何を言いたいの?と思う向きは原作にあたるのがいいと思う(未読ですが)。
目次|第1章 愛は何を欲求するか|第2章 この人と結婚すべきだろうか|第3章 一人の男を愛するとき|第4章 自分が落ち込みかけている穴|第5章 女は何に迷い苦しむか|第6章 私が決心した日|
下
高木と水族館でデート。
下2


【酒井和歌子の映画】
今までに掲載した映画から。
写真
「めぐりあい」
監督:恩地日出夫 1968年
写真
「兄貴の恋人」
監督 :森谷司郎 1968年
写真
「誰のために愛するか」
監督:出目昌伸 1971年


1970年代の日本映画を、こちらでまとめています。
20191118151744433_2020021821130526c_2020121220014137b.jpg


出目昌伸 監督の映画
写真
誰のために愛するか
写真
天国の駅


【 一夜一話の歩き方 】
下記、クリックしてお読みください。

写真
写真
写真
写真
写真
関連記事
やまなか
Posted byやまなか