カンボジア映画「昨夜、あなたが微笑んでいた」, ポルトガル映画「ヴィタリナ(仮題)」監督:ペドロ・コスタ ~第20回東京フィルメックス2019

このページでは、2本の映画を併記しています。

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昨夜、あなたが微笑んでいた Last Night I Saw You Smiling (東京フィルメックス・コンペティション作品)

 カンボジアの、プノンペンの街中にある市営アパートが取り壊されるにあたって、多くの住民たちが立ち退きせざるを得なくなった様子を描くドキュメンタリー映画です。監督はここで育ち、ご両親が住んでいます。(画像は父親)
 そのアパート「ホワイト・ビルディング」は、かつては官僚や芸術家たちが住んだ、外国人が設計した歴史的建造物として知られていたらしいが、今ではスラム街と言われています。
 全編、監督自身の撮影で、そのパースペクティブなアングルや左右対称さや、陽の光や影の具合が、私にはとてもしっくりと心に響きました。
 また、映し出される住民たちは監督と顔見知りのせいか、自然な態度で写っていますし、監督が映画の中で住民にインタビューしないのも大変好感が持てます。いい映画です。

 監督がお気に入りの映画監督は、アジアの監督だそうで、とりわけタイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督が一番好きで、これに続いて台湾のホウ・シャオシェン監督、小津監督、イランのアッバス・キアロスタミ監督でした。この好みの角度もいい。映画はまったくの独学だそうです。

カンボジア、フランス / 2019 / 77分
監督:ニアン・カヴィッチ(NEANG Kavich)



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ヴィタリナ(仮題) Vitalina Varela (東京フィルメックス特別招待作品)

 抽象絵画をみると同じように本作は、観客がこの映画をどう観るか、の受け入れ許容範囲が広い映画です。(とは言えどう観てもいいということではないだろうが) 
 とにかく、今までに観た監督作品の中で一番抽象的だと感じました。
 ストーリーは、以前からの作品でおなじみの大西洋に浮かぶアフリカの島国カーボベルデ共和国から、一人の女ヴィタリナが、夫が死亡したという知らせを受け、遥々ポルトガルのスラムにやって来たところから話は始まる。
 映画は、夫が出稼ぎでポルトガルに来たこと以外、その後の長い歳月の、夫婦間のあれこれをあまり語らないが、うまく行っていなかったことは、はっきりしている。
 しかし、妻ヴィタリナはここに来た。が、葬儀に三日遅れてしまった。
 夫が住んだ天井の低い狭い部屋でヴィタリナは悲しみに沈む。この様子を映画は、時間をかけて、闇を背景にわずかな光を頼りに彼女を映す。まるで西洋絵画のように。
 この長回しの鬱屈したシーンと対比して、屋外シーンがある。
 映画冒頭の、夜、暗闇の中を埋葬の帰りの男たちがそれぞれのあばら家へ帰り行くシーン。
 夫と同じく、アフリカから出稼ぎに来たが生活が苦しい境遇の、多くの人々を表している。彼らは似た者同士、スラムは互いに支え合う「男社会」でもあったろう。
 次に、一人沈み込むヴィタリナが、夜、雨と強風の中、家の屋根に上がるシーン。
 夫は家を作る職人であった。屋根は直すつもりでいたことを近所から聞いた彼女は、夫がやり残した仕事をするかのように、風に吹かれ はためくビニールの仮補修を直そうとする。彼女は喪に服すためにやって来た、ここに住み始めるわけではないのに‥。たぶん、亡き夫の心に寄り添いたかった。
 ラストシーン。
 カーボベルデの山岳地帯で、一組の夫婦が力合わせ、自らの家を作っている。空は青い。たぶん、新婚早々のヴィタリナと夫なのだろう。ヴィタリナの明日への糧は、過去の良き日々であった。
 ペドロ・コスタ監督の他作品について、過去記事がここにあります。  
 
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ポルトガル / 2019 / 124分
監督:ペドロ・コスタ(Pedro COSTA)|主演:ヴィタリナ・ヴァレラ

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やまなか
Posted byやまなか