映画「煙突の見える場所」 監督:五所平之助

上 (2)

 隆吉と妻の弘子の、他人の赤ちゃん(上の画像中央)を巡っての、ひと騒動。
 時は終戦から、まだ8年しか経ってない昭和28年。

中1 夫の隆吉(上原謙)は商店に勤める弱気な男。
 特にこの頃、覇気がない、その上、被害妄想の気(け)が出てきた。
 例えば、妻の弘子(田中絹代)が、内職よりましな、ちょっとしたアルバイトを始めた事。これを隆吉に言わなかったために、安月給のじくじたる思いの、歪んだ主人気取りの隆吉は、口を尖らせる。
 次いで言えば、弘子の前夫について弘子が何も話さない事に、変に妙にすねたりで、弘子を困らせる。
 だけど、この二人、睦まじい。(夫婦の仲は他人には分らない)

 そんなある日、夫婦が留守の間に、家の中に赤ん坊が置き去りにされていた。捨て子だ!
 即、警察に届けようとしたが、赤ん坊に添えられていた手紙と戸籍謄本を見て、隆吉が驚いた。謄本には、弘子が、前夫 塚原の妻のままの記載。籍を抜いていない。一方、隆吉は当然、結婚時に弘子を籍に入れている。こりゃ重婚!
 さらに隆吉は弘子に問いただす。「この赤ん坊は弘子おまえが産んだ子かっ!」(これはあり得ない)

 かたや、弘子も驚いた。手紙は前夫 塚原からの手紙であった。あの人、生きている!
 弘子は、塚原は空襲で死んだと、ずっと思っていた。空襲後、死体をかき分け ずいぶん探したのだ‥。(戦中戦後の混乱でこういう事はあったらしい)

 一方、こんな、家庭内混乱をよそに、赤ん坊は大声で泣く。泣き止まぬ。そして、どうやら重病だ!!
 育児に不慣れな弘子は、夫から攻められ、赤ちゃんから求められ、一気に追いつめられ精神が衰弱していくし、夫も精神が不安定に。
 だが、この間に、隆吉夫婦は徐々に赤ちゃんに愛情を抱き始めているのである。

中2 しかし、こんな様子に、一番迷惑なのは、二階にそれぞれ一間を間借りしている独身ふたり、東仙子(高峰秀子)と久保健三(芥川比呂志)。
 なにしろ安普請の家なので、赤ちゃんの泣き声に加え、階下の隆吉夫婦の会話が、筒抜け。

 それで東仙子と久保健三が知った、捨て子事件の真相とは、塚原が戦後、誰かと一緒になり、赤ちゃんが生まれたが、夫婦仲が破綻し持て余し、思い立った塚原が、人のいい前妻の弘子に赤ちゃんを託した、と、こういうことらしい。

 追いつめられた弘子が自殺しようとした。これを救ったのが久保健三。それを見守ったのは、怖気づいた隆吉と、久保健三の勇姿に惚れた東仙子。
 ここから、正義の味方 久保健三が塚原を探し始める。足を棒にして、訪ね訪ねて、ついに塚原とその女房 勝子を発見。
 そしてその後日、勝子が赤ちゃんを引き取りに来た。(上の画像シーン)

 翌日。
 結果、これで隆吉夫婦は、昨日までのことは水へ流したように仲睦まじくなったし、東仙子と久保健三の仲も、より一層進展するのでした。<終>
  
上2上の画像のコメント
(1) 2階に間借りする東仙子(高峰秀子)
(2) 家の主人の隆吉(上原謙) ただし、家は持ち家じゃなく貸家だ。
(3) 塚原の女房 勝子、つまり赤ちゃんの実母(花井蘭子)
(4) 隆吉の妻 弘子(田中絹代)
(5) 赤ちゃん
(6) 2階に間借りする久保健三(芥川比呂志) 東仙子に恋してるが彼女は態度保留中
(7) 東仙子の同僚 雪子(関千恵子)
 
下1
隆吉の妻 弘子(田中絹代)  夫を愛する尽くす妻
下2
2階に間借りする東仙子(高峰秀子)
商店街の街頭宣伝放送をするアナウンサーが仕事
「本日は〇〇商店の大安売り‥」
下3
東仙子と久保健三は結婚を決めた。


監督:五所平之助|1953年|108分|
原作:椎名麟三|脚色:小国英雄|撮影:三浦光雄|
出演:緒方隆吉(上原謙)|弘子(田中絹代)|久保健三(芥川比呂志)|東仙子(高峰秀子)|池田雪子(関千恵子)|塚原忠二郎(田中春男)|石橋勝子(花井蘭子)|ほか

こちらで、高峰秀子が出演の映画をまとめています。
決め


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Posted byやまなか