映画「マーゴット・ウェディング」 出演:ニコール・キッドマン, ジェニファー・ジェイソン・リー 監督:ノア・バームバック
2020年05月25日 公開

疎遠な姉妹の、久しぶりの再会。
マンハッタンに住む小説家のマーゴット(左)と、マンハッタンのずっと東、ロングアイランドにあるこの家に住む、妹のポーリン(右)。
そのポーリン(ジェニファー・ジェイソン・リー)が再婚することになった。
それで、自身のthe Wedding(実態は結婚披露パーティー)を、極々身内で、姉妹が育ったこの実家で開きたい旨を、姉のマーゴット(ニコール・キッドマン)に知らせた。
それでマーゴットは息子を連れ、マンハッタンから列車に乗ってはるばるやって来た。(ここから話は始まる)
実家は、大西洋の海原がすぐ傍に見える素晴らしいところにある。
こんな家では、日ごろの憂さも晴れようなものを、到着後マーゴットは、妹と、さっそく激しく言い合う喧嘩。
それでも、ふたりは姉妹。いったん喧嘩が収まれば、気持ちもしばらくは収まるし、ポーリンの再婚相手マルコム(ジャック・ブラック)の手前もある。
ポーリンとマルコム

ディックとマーゴット
実は、姉妹の間に以前から確執がある。
マーゴットが執筆し出版された小説に、ポーリンとその前夫のこと(らしい)が書かれていた。このことがポーリン夫婦を離婚に追いやった(らしい)。それ以来、姉妹は疎遠。
ところで、姉を呼んだポーリンがいぶかることがある。マーゴットが何故、すなおに来たのか。
マーゴットは、同じく小説家の優しい夫 ジム(ジョン・タトゥーロ)と一方的に離婚したい。そして評論家の彼氏ディック(キアラン・ハインズ)に、「ここロングアイランドで一緒になりたい」と打ち明けようと思ってやって来た。この地にある本屋で、ディックの司会による小説家マーゴットを囲む会が予定されているのだ。
★
さあ、こんな設定の中、マーゴットは、妹ポーリンはじめ、彼女の婚約者のマルコムに、そしてあとから駆け付けた夫ジムに対して、何かにつけ、言っちゃいけない悪態をつく。いったん始まると自制がきかない。自分自身と周りの人間関係を壊していきそう。
こんな風だから観客の多くは、ほんと、マーゴットを嫌な女に思うだろうし、映画自体も重苦しく感じるかもしれない。
が、しかし、そんなマーゴットだが。
思うに、もしかすると彼女は精神障害を抱えているのかもしれない。彼女の周辺の人は、そうは認知していないように見えるが。
そうです、映画は、障害があるようにまで、敢えてマーゴットを過激にみせる。
その狙いは、マーゴットの心中や、激しく言い返すが実は優しいポーリンの人物像、くわえてこの姉妹の友愛や、他の登場人物の人柄をも、浮かび上がらせようとしている、と思える。
注意するのは、感情移入し過ぎて、マーゴットを、観る側の人間関係の中に置いて本作を観てしまうと、嫌な映画になってしまうこと。
ただし、ラストはハッピーエンド方向へ向かいます。
予告編です
https://trailers.moviecampaign.com/detail/4167
11歳の息子クロードに対しては優しい母親。過保護すぎるかもしれない。互いに子離れ母親離れが難しそう。

↓ポーリンの再婚相手マルコムとマーゴット

(右)マーゴットの息子クロードとポーリン。庭の高木に登ったが降りられないマーゴットを見上げている。木の上からは、大西洋が見渡せる。
ちなみに、この映画の根底にあるのは、読み取りにくいですが、喜劇なんです。
また、ポーリンの再婚相手マルコム役のジャック・ブラックの演技演出だが、登場人物中、彼だけコミカルにしてみせるのは、当たり前だが彼がコメディアンであり、監督のキャスティングだからで、その狙いは、マーゴットと対極に位置する人。我を通さない控え目な性格、ユーモアが滲み出る振る舞いと、無意識だが包容力がある、そして人生にチョット失敗している人物を登場させたかったんだろう。ポーリンはそんな彼が好き。
もうひとつ、ちなみに、タイトル。
原題は「Margot at the Wedding」で、邦題「マーゴット・ウェディング」は意味不明。
最後に。ラストに流れる音楽は、カレン・ダルトン歌う「Something on Your Mind」。
これには ビックリ! なにしろ1971年のアルバムですから。でも大好きなカレン・ダルトン。
かつて「一夜一話の “今日はロックだよ” カレン・ダルトン」で紹介記事を書きました。よろしければ、こちらから、どうぞ。
オリジナルタイトル:Margot at the Wedding
監督・脚本:ノア・バームバック|アメリカ|2007年|93分|
撮影:ハリス・サヴィデス

ノア・バームバック監督の映画
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