映画「ドリアン ドリアン」 監督:フルーツ・チャン

上2

小学生のファンと、デリバリーヘルス嬢のイェン、それぞれのストーリー。
ここは香港。
ふたりがいた路地裏に、警官たちが不法入国者の摘発巡回パトロールに来た。反射的に身を隠すふたりであった。

最初に、小学生のファンの話から。
中国人のファンの父さんは、片足を失った障害を持ちながらも、生活拠点の中国(深圳市)と、隣接する香港とを行き来し、小商いをしていた。
しかし商売に陰りが見え始め、一家4人、香港の旺角、路地裏の日も差さない部屋に越して来た。不法入国、不法滞在。
(これまで父さんは、香港でタバコなどを仕入れ深圳でさばいてきたが、徐々に香港深圳の市場経済の差が縮まり、深圳市中でも商品が出回るようになって、父さんの商売に陰りが出てきたのだろうか。この映画が描く2000年は鄧 小平没後3年経った世)

中1
  ファンの家族。卓上にドリアンがある。父さんが買って来たが‥。父さんは美味いぞと言うが、臭い!

深圳から越して来たばかりのファンは、家族以外に知り合いはいない。(不法移民であるから、めったな外出はできない)

中2ファンの家の前の狭い路地。

イェンは仕事で、旺角にあるこの路地をよく通った。(上海街あたりか)
そんな中で、イェンとファンのふたりはこの路地で出会い、少しばかり、心が通じ合った。

イェンは、この路地を抜け、この界隈の小さなホテルへ出向き、デリバリーヘルス嬢として働く。
中4 (2)彼女の一日は、ホテルへの行き来と、同僚のデリヘリ嬢たちとだべりながら、指名待ちのアイドリング時間だけ。(あとは疲れて爆睡、結果、何処へも行けない)
イェンは、中国東北部の、ウラジオストックに近い牡丹江を離郷し、いったん深圳に留まったのち、香港へ出稼ぎに来たのだった。(就労ビザ)
中1ホテルへは、デリヘリの用心棒の男が付き添った。(もちろん香港も売春禁止だが、このビジネスはある。だから、客とのトラブルや、デリヘリ嬢の就労ビザ期限切れやら、警察沙汰の面倒は避けたいがため、男は付き添う)
ところが、この後ろにいる男、いきなり何者かに、後頭部をドリアンで殴打され負傷した。(恨みを買ったようだ)

中3
イェンは、その日、38人の客をとって心底 疲弊して、就労ピザ期限切れの日を迎えた。
ピンハネされての稼ぎの総額は、香港では大した金額じゃないが、香港から遥か離れた故郷の牡丹江では、一角の出稼ぎ成功者。
もちろん、親には言えぬ商売ではあったし、香港で稼いだとも言えないが。
上
故郷の牡丹江は寒い。
イェンの帰郷祝いは一族郎党集めての大宴会、酒もワンランク上のにした。しかしイェンにとっては、その費用は大したものではなかった。
イェンはレディースファッションの店を持ちたいと思っている。(市場の中の狭い洋服屋の体だが、牡丹江では立地条件のいい場所らしい)
だが、店を持つことはイェンにとって、とりあえずの、でしかない。そして、とりあえず離婚手続きをした。
浮遊するイェンの心。
これからをどうするのか、それはイェンには、わからないままだ。

88190efaea2a841b490bf7a93b9bb728--tv-series-fruit (3)そんな折、実家にいるイェンのもとに、ドリアンが届いた。
それはファンからの贈り物であった。手紙も添えてあった。
★      ★
果物の王様と言われるドリアンは、ご存じの通り、硬い棘に覆われている。強い甘味を持ち、栄養豊富だが、甘い香りとともに、玉ねぎの腐敗臭ような強烈な匂いを放つ。
思うに、この映画においてドリアンは、当時の中国人一般が自由経済に対して感じた感情を表しているのだろう。それは、恐る恐るの「うさん臭さ」と、「こりゃ美味そうだ」と思う気持ち。
予告編です
予告編 決め
https://trailers.moviecampaign.com/detail/12192



オリジナルタイトル:Durian Durian|榴槤飄飄
監督・脚本:フルーツ・チャン|香港|2000年|117分|
原案:フルーツ・チャン、シン・ジーミン、チャン・ワイクーン|撮影:ラム・ワーチュン
出演:ファン(マク・ワイファン)|ファンの父(ウォン・ミン)|ファンの母(ヤン・メイカム)|ファンの弟ウェンウェン(マク・シュエウェン)|イェン(チン・ハイルー)|イェンの父(チェン・リェングイ)|イェンの母(ジャン・リーイェン)|ほか

フルーツ・チャン監督の映画を、こちらのコーナーで、まとめています。
これ (2)


【 一夜一話の歩き方 】
下記、クリックしてお読みください。

写真
写真
写真
写真
写真
関連記事
やまなか
Posted byやまなか