映画「稲妻」(1952) 出演:高峰秀子, 三浦光子 監督:成瀬巳喜男

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時は昭和27年ごろ、戦争終わって7年。
母と、娘3人息子1人の家族の物語。

この子たち4人は、母親おせい(浦辺粂子)が産んだ異父姉弟(兄妹)。全員、父親が違う。
はとバスの、都内観光バスガイドをしている三女の清子(高峰秀子)
その兄、嘉助(丸山修)はフラフラしている。戦地で何発もの銃弾を受けたと言ってるが、今はパチンコを打っている。

さて、この映画、高峰秀子がもちろん主役、次女光子役の三浦光子が準主役といったところだが、母親のおせい演じる浦辺粂子がいい味を出していて、本作の見どころ、カナメと言っていい。苦労してきたが、そう世間ずれしていない女、事が起きるも、程よく受け流し世間を渡る術(すべ)を持ち、子たちに頼る一方、自立心を持っている。
さあ、残るは長女の縫子、いつも騒ぎの中心にいる。
中1

で、まあ、一家のトラブルメーカーが、この縫子(村田知栄子)なわけです。
006-18 (2)勝気な縫子は、夫の龍三を尻に敷く一方で、外では両国のパン屋の綱吉(小沢栄太郎)と何か企んでいる。

夫の龍三は商売に失敗して低調気味。
それに引き換えパン屋の綱吉は商売上手、金もある、そこで異業種進出、渋谷(と言っても神泉駅辺り)で温泉旅館を買い取ってこの商売で儲けようとしている。
縫子の狙いは、この綱吉を利用して上昇気流に乗りたい。そこで、35歳独身の綱吉と清子(高峰秀子)を一緒にさせて、綱吉を身内にしたい計画。これを知った綱吉はウキウキ。
もちろん、清子はきっぱり断ったが、姉の縫子がしつこい。綱吉はもっとしつこい、厚かましい。

かたや、次女の光子(三浦光子)の夫が急死した。(この夫も縫子の紹介だった)
その死を知った女(中北千枝子)が赤ん坊を背負って、光子の前に現れ、養育費だとして金をせびる。つまりは内縁の妻。
悲しみに暮れる光子だったが、これも夫の供養だと言って、その女に何某かの金を工面するも、清子はそのことに反対した。

ところで、夫には保険がかかっていた。
そもそも、その女は、そのことを夫から聞いて知っていて、だから現れたのだが、加えて、母親も嘉助も、縫子から聞いたこの保険金を期待している。
清子は、そんなこんなの家族に嫌気が差していた。

さらには‥、縫子の夫の龍三がパン屋の綱吉に金を借りようとし、縫子は綱吉に夢中になり押し掛け女房面、それを知った龍三は自暴自棄、綱吉は綱吉で嫌われる清子を諦めたか、今度は光子にうつつを抜かし、神田で喫茶店を始める光子のパトロン役を買って出た。縫子と光子と綱吉の三角関係が出現。

そんなことで、清子は家を出て、閑静な住宅街の、とある家の二階を間借りして新たな生活を始める。
中2家主の奥さん、お隣の兄妹たち、といった穏やかな人々に囲まれて、清子は心の平安を得るのでありました。(終)
★    ★
ラストの終わり方が頼りない、拍子抜けの感あり。
総じて言えることは、清子、おせい以外の人物描写が表層的。特に、縫子、パン屋の綱吉、光子のその振る舞いがいささか誇張過ぎて(分かりやすさを狙ったか)、その結果、人物が製作者側の都合で繰られている感が強く感じられ、ギコチナイ印象を受ける。
そもそも、原作は昭和11年の作。この話を戦後に持ってくるわけだから、無理もあり、新たに各所に手を加えたんだろう。


監督:成瀬巳喜男|1952年|87分|
原作:林芙美子(刊行年1936年‥昭和11年)
脚本:田中澄江|撮影:峰重義|
出演:清子(高峰秀子)|光子(三浦光子)|縫子(村田知栄子)|嘉助(丸山修)|おせい(浦辺粂子)|縫子の夫の龍三(植村謙二郎)|パン屋の綱吉(小沢栄太郎)|光子の夫の内縁の妻・田上りつ(中北千枝子)|お隣の住人・兄の国宗周三(根上淳)|その妹つぼみ(香川京子)|桂(杉丘毬子)|杉山とめ(瀧花久子)ほか
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Posted byやまなか