映画「グレート・ハック SNS史上最悪のスキャンダル」(2019) ドキュメンタリー映画  2016年のアメリカ大統領選, イギリスのEU離脱か否かを問うた国民投票にかかわった悪質な投票誘導

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冷静に観る映画だと思います。
既に持つ思い込みや、インターネット利用の好き嫌いを、ひとまず横に置けば、この映画が言いたい事の幾つかが、見えて来るんじゃないでしょうか。

2016年11月のアメリカ大統領選、そして同年6月実施の、イギリスのEU離脱か否かを問うた国民投票。
キャプチャ11 (2) 200この映画は、トランプ陣営およびEU離脱派陣営その双方から、選挙コンサルティングを受注した、ケンブリッジ・アナリティカ社*1の事業実態を暴くドキュメンタリー映画です。

その戦術内容は、どちらに投票するか決めかねている浮動票層をターゲットにして、Facebookを軸に、インターネットを駆使した最新のマーケティング手法と心理作戦で、ビッグデータの処理技術を使い、特定した有権者の一人一人に、それぞれの人に見合った度合いの、フェイクな情報(広告)を、手を替え品を替え 多量に幾度も配信し、人の心を個別に繰る巧妙で悪質な投票誘導でありました。
そして、その何百種類ものフェイク情報(広告)、それは出所不明で追跡不能でありました。

200_20200921194447f26.pngそのフェイクな広告に対し、(例えば「悪党ヒラリーを倒せ」といったキャッチフレーズで事実を歪めた内容で煽る動画広告)に対し、もし「いいねボタン」を押せば、その情報がケンブリッジ・アナリティカにフィードバックされて、その人の説得可能性や、洗脳の進捗具合が分かり、それを踏まえて次なるフェイク情報が配信される。
(ネット広告では、このように個人情報を分析して得たデータ、つまり嗜好や行動パターンを把握し効果的な戦略を立てる広告手法をマイクロ・ターゲティングと言うらしい)
ちなみに、トランプ陣営は590万の広告を配信したのに対し ヒラリー陣営はは6万6000のみ、だったらしい。
加えて、トランプ陣営はフェイスブックに100万ドル/日を費やしていたらしい。

映画は、自由で公平な選挙を阻害するこのような事態解明に精力的な米英3名の協力のもとに、ケンブリッジ・アナリティカの内部告発をした元社員2名*2の証言協力を得て語られ、かつ同社幹部やFacebook会長マーク・ザッカーバーグなどの言説も集めています。

Facebookのデータ不正利用(同意なしに個人情報(行動履歴情報)を第三者に提供)
さらに大変、問題になったことは、この選挙コンサルティング事業開始前に、戦術ベースとなった膨大な個人情報がケンブリッジ・アナリティカの手元にあったことでした。
the-great-hack-doc-on-netflix (2) 200まず、Facebookはケンブリッジ・アナリティカに5000万人の個人情報を売っていた。(Facebook会長が議会に呼ばれての公聴会シーンがあります、「売って欲しくなかった」と言ってますが‥)
次に、イギリスの大学教授から得た3000万人の個人情報は、Facebook上にある無料の「ワンクリック性格判断アプリ」を利用した人の、診断結果情報*3。これをもとに、個々人の心理傾向が分かり、ケンブリッジ・アナリティカは「人の性格を標的」にして、その人の行動を変えていくことができました*1の太字部分
また、インターネット上で人々が、どんな関係のネットワークを持っているかを示す、膨大なデータも入手していたようです。これを利用して、当初得た個人情報をより増やしていくことが出来たのでしょう。このほかにも入手の個人情報がありました。


あまりにも過度なフェイク情報なのに、これに踊らされてしまう人々。人の心を繰ることは可能なのだろうか。
ケンブリッジ・アナリティカの兄弟会社SCLディフェンス*4は軍事請負会社です。
敵の行動に影響を与えるためのリサーチや手法を受注していたそうで、例えば、14から30歳のムスリム男性がアルカイダに入らないための、インターネットを使った説得方法(広告)。これは最新情報兵器だ。
ケンブリッジ・アナリティカは、この手法を選挙に使い始めた、全く同じ手法だから重複する点が多いらしい。
トリニダード・トバゴ共和国、マレーシア、リトアニア、ケニア、ガーナ、ナイジェリアなど開発途上国から受注し、行った選挙運動コンサルティングそのすべてが、この最新テクノロジーや策略の練習だったらしい。
人の説得方法、投票率の抑制や増加方法も、次第にコツがわかって来て自信を深め、そしてついに、イギリス、アメリカで使った。
さらにはイギリスの国民投票ブレグジットはトランプのための実験だったと言ってます。ケンブリッジ・アナリティカの言。


フェイスブックは世界中の個人データ(行動履歴)を利用している
私たちはフェイスブックなどSNSの利用条件やプライバシー規約なんて読まずに使ってますよね。
無料利用の対価として私たちは自分のデータをSNS運営側に提供し、この膨大なデータ群は世界中の企業や政治団体がそれぞれの目的で利用している。これがSNS運営会社の商売*5
しかし、気づかぬうちに不利に使われもしている。
一番の解決法は、人が自分のデータを自分で所有することですと、映画は言っています。(現状、それはできない)
データ権は人権だ。しかし悪化の一途だとも言っています。
アメリカ大統領選や国民投票において問題は、右派左派、離脱残留、トランプ支持か否か、じゃなく これは自由で公平な選挙を行えるかどうかの問題なのです。
でも、一番難しいのは 人の心をマヒさせる分裂は 人ひとりを繰ることから始まると言って映画は終わります。

予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=nHnm1vYka7Y



*1 ケンブリッジ・アナリティカ社とは
トランプのブレーンで、選挙運動陣営の最高責任者を務めたのち、ホワイトハウスの元首席戦略官の、スティーブン・バノンは、ケンブリッジ・アナリティカの副社長であった。社名命名者でもあった。
ケンブリッジ・アナリティカ社は、「我々は行動心理学、ビッグデータを最大限に活用し、人の行動を変える機関」、また「情報伝達の究極の目標は、行動を変えること」と映画で言っている。
各国の首相や大統領の選挙活動を年間10件引き受けていた。(すでに倒産)
wikipediaの解説はこちら : https://ja.wikipedia.org/wiki/ケンブリッジ・アナリティカ

中1*2 ケンブリッジ・アナリティカの内部告発者
その一人は、元社員ブリタニー・カイザーという女性。映画に頻繁に登場する。
彼女の著作「告発 フェイスブックを揺るがした巨大スキャンダル」 出版社:ハーパーコリンズ・ ジャパン (2019)

*3Facebook診断アプリに注意‥‥情報流出の被害、友達にも 対策は
ITmedia NEWS記事(2018年04月04日 公開)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1804/04/news043.html

*4 SCLディフェンスとは
軍事請負会社。
英国陸軍海軍、米国陸軍、特殊部隊、NATO CIA 国務省 国防相も訓練、さらには東欧諸国も顧客。(映画に会社紹介がある)
さらに映画はFacebook傘下のワッツアップ社も含め紹介する。
ブラジル現大統領の大統領選でフェイクニュースの散布に明らかに関与していた。ミャンマーでもそうらしい、人種増悪を煽り大量虐殺に至らせたらしい。ミャンマー国軍によるイスラム教徒の虐殺、民族浄化つまりロヒンギャ問題のことらしい。
ロシア政府もアメリカでFacebookを使用、ロシアの影響がFacebookで1億2600万人対象に、偽の黒人運動ミーム(?)を作った証拠があるらしい。ついで、警察の対抗集団にも広告配信 恐怖や増悪を駆り立て国を分裂させたと映画は言う。
人をつなぐはずのSNSプラットフォームが兵器と化した。

*5 Facebookの商売
Facebook初期の出資者、ロジャー・マクナミーのインタビューから以下。
「Facebookは注目を独占するデザインだ、プロパガンダの仕組みとスロットのようなカジノを融合している」
「Facebookは基本的に直感を刺激する。必ず効果があるのが恐怖と怒りだ。それでツールを作り、広告会社がユーザーの感情につけこめるようにした。個人単位のターゲティングで、だ。21億人にはそれぞれ現実がある、全員が違う現実を持てば簡単に繰ることができる」‥‥字幕がたどたどしく、英語が分かればもっと理解できるだろう。


【 コメント 】
このドキュメンタリーは、その内容が多岐にわたっていて、かつ深いので、一定の集中力を要します。
また、話があちこちに飛ぶので、しっかりついて行かないといけない。
そして、字幕の翻訳文がつたないため、分かりづらい箇所がある。
そんな中で、一点、注意は、頻繁に登場するケンブリッジ・アナリティカの内部告発をした元社員ブリタニー・カイザーの生き様や表情・言動に注目が行きがちですが、ここに気を取られすぎると、映画の言いたいことが見えにくくなるかもしれません。
ですが、観ておく映画だと思います。


原題:The Great Hack
監督:カリム・アーメル、ジェヘイン・ヌージャイム|アメリカ|2019年|114分|139分
脚本:ペドロ・コス、エリン・バーネット、カリム・アーメル|撮影:ベイジル・チルダーズ、イアン・ムバイヤド|
出演:キャロル・キャッドウォラダー|デビッド・キャロル|ブリタニー・カイザー(内部告発者)|ジュリアン・ウィートランド|クリス・ワイリー(内部告発者)|ほか
無題ケンブリッジ・アナリティカ社の社長


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Posted byやまなか