映画「キング・オブ・ペキン ~父と子の物語」 野外上映とDVD密造と父子でアフレコ。 2017年アメリカ映画  監督:サム・ブータス

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父親が、映画の商売に「本気の遊び心」を注ぎ込むさまに、息子が共感し、父子が一緒になっていく様子を描く物語です。
ただし、リアルな物語だとして観るとツマラナイ。
いろんな意味で、この話は空想です。

さて物語は‥
1990年代のころでしょうか。中国でのお話。
中1

この父子は、小さなオート三輪トラックに乗って旅しながら、田舎の村々を巡り、野外での映画上映を稼業にしています。(個人事業らしい)
中2商売道具は、白い大きな布(スクリーンです)、そして相当古いソ連製の映写機。映画の音声はラジカセで鳴らします。映像と音声は自動で連動しないので、上映開始時、1、2の3で、ラジカセのカセットテープのスタートボタンを押すのが息子。互いに離れているのでトランシーバーは必需品。映写機はサイレント映画用、音声はカセットテープに入っている。

息子は、上映宣伝も担当します。嬉々として村中を駆け巡り、今夜の上映作品の題名と、ハリウッド映画だよ!といった売り文句を大声で叫んでまわります。また、上映会場となる広場では鑑賞料金の回収もします。なかなか聡い子だ。

一方、母親(元妻)は長距離列車の車内販売が仕事。
よって車内での寝泊りが多く、列車に住み込みの様相。
そんな元妻が時間を割いて、父子の上映現場を訪ねますが、夫に対し言うことは、息子を働かせないで!と毎度の説教、しかし夫は受け流すだけ。

そんなある日、映写機が火を噴き壊れてしまいます。
落ち込んだ父親は、あちこちの映画館に連絡を取り、映写技師の仕事を探しましたが、無い。
あったのは、映画館の清掃。実に、渋々ではありましたがこれを引き受けます。

ここからが映画の第二幕であり、話のメインです。
父子はオート三輪トラックに乗って旅しながらでしたので、家が無い。
よって、この清掃の仕事は、父子ともども、映画館に住み込んでの働き口なんです。(これがこの映画のミソ)
映画館の地下には倉庫があって、旧式の映写機やらが置かれています。父子は、ここに住むことになるのです。
しかしココは、誰にも見られない場所。父子にとっては魅惑の秘密基地となりました。

まず、父親はDVDレコーダーとビデオカメラを買い込みます。
かつ、なにしろ父親は映写技師ですから、映写機や映画フィルムを扱うのは朝飯前。
さあ、ここで父子がやり始めることとは‥。予告編をご覧ください。

予告編 決め
https://www.youtube.com/watch?v=mcaYbx7U8Pw

中3
地下室にて。白い布を張ったスクリーンに、倉庫にある旧式映写機で映画を映写し、それを鳥かごに入れたビデオカメラで撮っている最中。

中4
父子で吹き替え(アフレコ)をラジカセに録音中。声優気取りを通り越して、映画の登場人物になりきっている、これは父子芝居!

★          ★

なにしろ父親は映画が好きだ。また独自のアイデアで工夫して儲けることも好き。
その父親の夢中さが息子を引き(惹き)付ける。子供にとっては、役目を与えられてやることに達成感も感じる。

ただし元妻は、一貫して息子を働かせていることに反対だ。(のちに元妻は息子を引き取るが‥)
さらには、阿保な夫の夢見がちな行為を見つめる彼女の、その醒めた目線は、まさに 世間の現実そのもの。
だからか、「学校に行かなきゃ」と母親に諭された息子は、父母の間を揺れるが、そうか、そうだよねと父親から離れ始め、母のもとに行くわけですが‥‥だが‥。(やっぱり、この父にして、この子あり、かな?)

一方、父子は、やっちゃイケナイことをしてしまうので、観る者は、父子の「本気の遊び心」を一緒に楽しむ ひと時と、法を思う倫理観との間を行き来することになります。

蛇足ながら最後に、やっちゃイケナイこと、とは‥。
映画館に行くと必ず観る、映画盗撮防止キャンペーンのあのCM。あれです。かつ、それをコピーしてのDVD販売。
このような、中国人のコピー、真似の心理、かつ、買う側の問題は国際的に嫌がられてますが、敢えてこれを映画にしたのは、アメリカ製作だから出来たのでしょう。
ただし、このことを思いすぎると、この映画は楽しめません。
思うに、例えば、平気で殺人する映画は、たくさんあるじゃないですか。


原題:King of Peking
監督・脚本:サム・ブータス|アメリカ、中国、オーストラリア|2017年|88分|
撮影監督:セッペヴァングリーケン|
出演:チャオ・チュン|ワン・ナイシュン|ハン・チン|スー・チャオ|ゴン・ボーエン|

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やまなか
Posted byやまなか